誰かを追い求めて
過去なら何となく変えられる気がしていた。現実の世界がこんなだなんて。
後悔が美しく見えてしまうなんて、他人事でしか見えないからだ。もう過ぎてしまったからだ。その当時だったら絶対に思えない。
田舎のタンスを匂わせる天井を眺めている。唇を舐めながら物思いにふける。
多分、いつかのお客さんみたいになるだろうな。
不安になるだろうな。目をつむるよりも生きづらいだろうな。
でも確かにまだ覚えているのだ。その屈託のない微笑み顔。いろんな顔。
これは幻か?
忘れられないんじゃなくて、離れない君の顔。
瞼を閉じた暗闇だってちゃんと見えるのだ。
もう迷わない。見逃さない。何度も何度も繰り返されていても、次こそは忘れない。
夢になるとき、そうやっていつも思えていたらいいな。
名前も知らない君に恋をした
僥倖を願う望む。
欲の皮が突っ張ってきた。
人言えぬ、有無を言わせぬ肯定力。
何かを信じていたい。感じ取りたい。その内側にしかない感情を。
「お内裏様、お雛様どうか……」
願えば叶うのだ。こういうときの人間に必要なのは、たったそれっぽっちのことだった。




