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幕間✤2
幼い手が、ページをパラリと捲る。
『赤い月が魔法使いサディアスを見ています。サディアスは月に祈りました。どうか、この世界を救う力をくださいと』
『ねえ兄様、サディアスが悪い〈影〉に負けたらどうなっちゃうの? だって〈影〉はとっても強くて、騎士でも敵わなかったんでしょう?』
古びた絵本の挿絵には、傷だらけになった魔法使いの姿が描かれている。
その絵に視線を落としている私に、兄様の誇らしげな声が言う。
『サディアスは最強の魔法使いだから負けないよ。ほら――赤い月はサディアスの願いを叶えます。世界を支配する〈影〉に立ち向かう力を与えたのです。〈影〉はサディアスの放つ光によって消え、この世界は守られました。けれど、それと引き換えに月は力を失ってしまったのです』
赤い月から魔力がなくなってしまったのは、世界平和と引き換えだった。
すべての魔力は必要なことに使われた。
――なんて、兄様が読んでくれた絵本の話をどこまで信じているのだ。
あれは絵本。
そう、作り事なのだから。




