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赤い月とふたりの舟 ~嫌いなあなたと不思議な国~  作者: 五十鈴 りく


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37/55

35✤ちょっと休んで

 ――こんな場所に若い男女が二人きりでいた場合、どんな憶測が飛び交うだろう。

 ここが現実の世界でなくてよかったと改めて思う。


 慌てて藁の上から立ち上り、ロドリックも私に続いて立ち、服についた藁を払った。彼はどう思われようと構わないというのか、余裕で笑っている。その表情を見ている方が複雑なのだけれど。


 ネズミのサディアスはまた私の肩の上に飛び乗っていた。


「……なんて言って出ていったらいいのかしら」


 ため息交じりにぼやく。やはりロドリックは嬉しそうに笑っていた。


「疲れて、ちょっと休ませてもらったってことでいいんじゃないか?」


 その言い訳を信じてもらえなかったとしても気にするなと。

 恥ずかしいながらにも、どうせその相手には二度と会わないと考えて腹をくくった。


 ――のだが、外へ出て見てぎょっとした。そこにいたのが厳つい粗野な男性ばかりだったのだ。

 五人くらいか、皆が馬に乗って上からこちらを見下ろしている。


「俺たちの留守中にお客さんが来てくれたみてぇだな」


 ニヤニヤと、それはニヤニヤと笑っている。

 背には剣を担いでいるけれど、兵士というふうではない。どう見ても山賊だ。


 愕然とするしかなかったのだが、その人たちは私を値踏みするように上から下までじっくりと見ている。不快感で身震いしていると、ロドリックが私を背に庇った。

 そんな私たちを皆で嘲笑う。


「坊ちゃん、わざわざ美人を運んできてくれてありがとうよ。後は俺たちが可愛がってやるから、お前は帰っていいぞ」


 その途端にロドリックが早々に切れた。


「殺すぞ」


 聞いたこともないような低い声が漏れた。私の立ち位置では表情も見えないけれど、男たちの様子を見るに、かなり怖い顔をして威嚇しているようだ。

 私は慌ててサディアスに問いかけた。


「ねえ、どうしたらいい?」

「えー。任しといたら?」


 また返答が雑だ。


「でも相手の数が多いじゃないっ」

「そうだけど。でもミシェル、立て続けに魔法の使いすぎだよ。また疲れちゃうよ」

「いいから!」


 ただ、私とサディアスがこんなやり取りをしている間にロドリックは二人を馬から叩き落としていた。一応良家の令息なのに喧嘩っ早い。私のためであるとしても。

 落馬して呻いている男たちになんの情もないのか、馬はさっさと走り去っていった。


 馬上から振り下ろされた剣をロドリックは躱し、逆に腕を捻って剣を奪い取っていた。そんな背中に別の男が迫って――。


「ロドリック!」


 私は魔物(ルナティック)に対する時のように、とっさに強い光を放っていた。人間には効果がないとしても、男たちは眩しさに怯んだ。

 

 そこで肩から飛び降りたサディアスの体がぐんぐん大きくなって、気づいたら他の馬と変わりないほどの大きさの白馬になっていた。


「どーん!」


 緊張感のない掛け声を発し、サディアスは他の男たちを蹴散らして走る。後ろ足で蹴飛ばし、まるで遊んでいるようですらあった。

 未だによくわからない子だと改めて苦笑してしまう。


 この時、不意に眩暈がしてへたり込んでしまった。

 色々とあった後なので、まだ本調子とは行かなかったようだ。

 ロドリックが私を呼ぶ声を聞いた気がする――。


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