第78話:王と執行者 - 臨界点の攻防
◇◇◇
#1 絶対静止領域
神楽タワーの前。
ルシェルが神楽タワーからゆっくりと降りてくる……。
永瑠:
「……ルシェル!」
ノア:
「来ました!!」
蒼真と永瑠が同時にルシェルへ踏み出した瞬間――
ルシェルが静かに両手を広げた。
ルシェル:
「無駄な足掻きだ。お前たちの時間は、ここで固定される」
ズン……!!
世界全体が、濁った粘土の中に沈むように重くなる。
風音、衣擦れ、心臓の鼓動――あらゆる音が引き延ばされ、やがて静止。
永瑠の黒髪の毛先すら止まる。
蒼真は、体が金属の塊に変わったかのような重圧に耐える。
蒼真:
「くそっ……!体が……動かねぇ……!」
ノア:
『蒼真さん!これはルシェルの“時間固定”のようです!
通常の存在は、ここで思考すら止まります!
《アステルギア》で、あなたの時間軸だけを強制的に動かしてください!』
蒼真は左手の指輪に意識を集中させる。
バチッ!
《時纏い装束アステルギア》が蒼白い時流を噴き出し、
蒼真の周囲の時間軸だけが加速する。
蒼真:
「うおおおおおお!!」
静止した世界の中で、蒼真だけが走り抜けた。
永瑠を背に、ルシェルへ迫る。
◇◇◇
#2 蒼真の斬撃と事象の否定
蒼真は妖刀〈焔生〉を構え、
渾身の 界徹 を叩き込む。
蒼真:
「終わりだ、ルシェル!!」
しかし直前――
ルシェルは、ただ蒼真の“未来”を見ていた。
ルシェル:
「……不愉快だ。
お前という原因を、結果に繋がらせるわけにはいかない」
蒼真の剣がルシェルの胸へ触れた瞬間、
ルシェルの姿が水面の幻影のように揺らぎ、消えた。
蒼真:
「なっ……!?」
次の刹那。
ルシェルは10メートル後方に、何事もなかったかのように立っていた。
ノア:
『攻撃が触れる直前の“原因”を巻き戻して、結果そのものを否定しました!』
蒼真:
「巻き戻しやがったのか……!?」
ルシェル:
「その程度では、私の固定化も揺らがぬ。
お前の行動は、すべて予知済みだ」
◇◇◇
#3 永瑠の血統剣
次の瞬間。
静止していた永瑠の体が、赤い時流を纏って動き出す。
永瑠:
「蒼真!私の血統剣は、ルシェルの時間法則の外にある!」
血統神器 ブラッドソード・ルージュ が赤い閃光を放ち、永瑠は音速の一撃を叩き込む。
ガキィィン!
ルシェルの左肩から紫色の血が散る。
永瑠:
「やった……!」
だが、その傷は0.1秒で完全再生。
ルシェル:
「なるほど……その剣は私の法則外か。
だが、永続バグには永続再生で応じるまで」
◇◇◇
#4 過去の再来
ルシェルは永瑠を見据え、指を向ける。
ルシェル:
「残念だ、永瑠。
お前がその位置で攻撃を終えることは、既に予知されている」
永瑠の背後、0.5秒前の時空。
そこに“ルシェルの影”が具現化。
次の瞬間。
永瑠の背中へ、不可避の衝撃が叩き込まれる。
ドゴォッ!!
永瑠:
「ぐあっ……!!」
血を噴き、鉄骨へ激突。
ズドーーーーーーン!!
蒼真:
「永瑠!!」
咄嗟に、蒼真の《アーカ・メモリア》が発動し、蒼真を最適な道へと導く。
蒼真の強化されたスピードは高速を超えた。
もはや思考ではなく、本能の領域。
瞬間、蒼真はルシェルへ跳躍。
蒼真:
「ルシェル!!」
ルシェル:
「なに!」
蒼真の攻撃は予知の外側。
ルシェルは反応する前に吹き飛ばされる。
界徹
-ズバッ!!
ズガガガガガガガガ……!!
床が抉れ、鉄骨が千切れ飛ぶ。




