第77話:9時間後の神楽市 ― 決戦の幕開け
◇◇◇
#1 転移完了・帰還
現代、神楽市。
蒼真の部屋。
机の引き出しが――ガラッ。
ズルッ……!!
制服の蒼真、永瑠、ノアの三人が、強引に押し出されるように転落した。
蒼真:
「……ふっ、ぅ、着いたか!って!
毎回、転移の着地がシュールすぎんだよっ!」
永瑠:
「……違う。この空気。
戻る前とは“瘴気の濃さ”が桁違いよ」
ノアは観測デバイスを確認し、表情を失った。
ノア:
「……やっぱりです。
この街……“異界の特異点”になってます……」
蒼真:
「くそっ、ルシェルを止めないと……」
唇を噛む蒼真。
だが、三人はすぐ部屋を飛び出した。
◇◇◇
#2 ニュース映像と崩壊した街
廃墟と化した路地。
コンビニの看板は折れ、街灯は傾き、空は血のような赤黒い雲に覆われていた。
電器店のテレビが、半壊しながらもニュースを垂れ流す。
(TV中継)
『……神楽市全域で異常事態は継続中です……』
『未確認生物の出現は止まらず、警察・自衛隊ともに制圧不能――』
画面には、ビルを這う巨大な影、火災で炎上する道路、逃げ惑う人々。
蒼真:
「……俺たちの“日常”が……」
永瑠は一歩前に出て、蒼真の胸ぐらを軽く掴む。
永瑠:
「感傷はあと。
今は――ルシェルを止める。それだけよ」
永瑠は血統神器
《ブラッドソード・ルージュ》を顕現させ、夜空へ突きつけた。
永瑠:
「彼の位置、わかる」
「ルシェルの力の中心……そこへ行く」
ノア:
「観測しました!
最大の瘴気集中点は――神楽タワーです!」
◇◇◇
#3 決戦の地へ
神楽市で最も高い超高層ビル、神楽タワー。
頂上から黒い霧が上空へ流れ、月光と混ざり“特異点”となって渦を巻いている。
蒼真:
「あそこか……」
蒼真は指輪を握る。
一瞬で――
神器鎧《時纏い装束アステルギア》が展開され、時流の光が蒼真の身体を包んだ。
ノア:
「わぁっ!!
蒼真さん、変身ヒーローみたいでカッコイイです!
次はちゃんと『変身!』って言ってくださいね!」
蒼真:
「やめろ、ノア!これ以上ジャンル増やすなっ!」
蒼真はアステルギア越しに拳を握る。
蒼真:
「行くぞ、永瑠。
――俺が死んでも、お前を生かす」
永瑠は横顔のまま、静かに頷く。
永瑠:
「ええ。
私も……ここで終わりにする。
今度こそ――全部」
三人はビル群を縫うように駆け出し、神楽タワーへ向かう。
空には、不気味なほど完全な満月。
その光は街を照らすのではなく――“世界の死”を告げる灯火だった。
◇◇◇
#4 神楽タワー頂上
満月の光が降り注ぐ頂上。
ルシェルは静かに街を見下ろしていた。
濃紫のコートが風に揺れ、その背中は揺るぎなく“支配者”のそれだった。
ルシェル:
「来たか……ウィンター」
「そして――永瑠-」
その声は静かでありながら、
まるで世界の法則そのものが語りかけてくるような“絶対の響き”。
永瑠の眉が震えた。
永瑠:
「……ルシェル……」
満月は完全に満ち、
神楽タワー全体がゆっくりと、異界の色へ染まり始めた。
最終決戦が――幕を開ける。




