表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
69/87

第69話:竜の巣一日目 ― まだ諦めない

◇◇◇



#1 Lv5 vs 12639 ― 最初の挑戦


地底の巨大空洞。


天井は暗く、足元には淡く青白い光を放つ湖。回復の泉は、この地獄における唯一の安全地帯だ。


その向こう、広間の中心には、世界の理を無視した存在が静かに立っていた。


【エンシェントドラゴン:Lv. 12639】


エンシェントドラゴンは動かない。

ただ、金色の瞳だけが、蒼真をじっと見下ろしている。その視線には、敵意よりも、純粋な「無関心」が宿っていた。


蒼真(心の声):

「(まだLv5。ステータス的には、ただの雑魚。だが、ここを抜けなきゃ永瑠のところにも、帰れない)」


蒼真は、震える脚を叱咤し、焔生ほむすびを構える。


蒼真:

「――行くぞ」


一歩、大地を踏みしめた瞬間。


ゴオォォォォォォッ!!


風圧。ドラゴンが翼をほんの僅かに動かしただけで、爆風が襲いかかった。


蒼真:

「がっ――!!」


視界が横に流れる。強烈な衝撃に、身体は壁へと激しく叩きつけられる。


ボキッ。


肋骨が嫌な角度で折れる。


蒼真:

「……っ、がああぁぁあああッ!!」


地面を転がりながら、意識が途切れる前に湖の方へ這っていく。

身体は意識より先に、回復の泉を求めていた。


指先が水に触れる。


ジリジリジリ……ッ。


骨が勝手に繋がり、裂けた肉が縮む。

全身を焼くような“生き返る痛み”が駆け抜けた。


蒼真:

「……っはぁ……っ…いてぇ……!」


息を整え、もう一度立ち上がる。ドラゴンは、相変わらず微動だにしない。


その眼だけが、「まだか?」と言っているようだった。


蒼真:

「……分かったよ。付き合ってやるよ、テメェの遊びに」



◇◇◇



#2 繰り返される死線と身体の学習


どれくらい時間が経ったのか、正確にはわからない。


蒼真が意識的に把握できただけでも、この時点で瀕死は10数回を超えていた。


エンシェントドラゴンは、一時間に一回、あるいはそれ以上の頻度で、容赦のない即死攻撃を繰り出してくる。


アーカ・メモリアの未来予測で避けるのが精一杯だった。


蒼真(心の声):

「(回避はできるようになった。10度目の挑戦で、ようやくこの巨体の予備動作を、DEX 38の限界で捉えられるようになった……!)」


立つ。走る。吹っ飛ぶ。這う。回復する。


そのサイクルを繰り返すたび、回復の泉の力で再生する身体は、少しずつ、ドラゴンの速度に「慣れて」いった。


23回目の挑戦。


蒼真は、ドラゴンの爪が振り下ろされる瞬間に合わせて叫んだ。


未来予測アーカ・メモリア


白銀の光が瞳に宿る。視界が引き伸ばされ、世界がゆっくりになる。


爪の軌道、重心移動、筋肉の収縮。全てが鮮明な“線”で見えた。


蒼真(心の声):

「(読める!この速度……捉えた!)」

半歩だけズラし、懐に潜り込む。焔生の刃が、鱗と鱗の隙間を狙って走った。


ギンッ!


金属がぶつかったような音。手が痺れ、刃が弾かれる。


蒼真:

「な……!!」



◇◇◇



#3 アーカ・メモリアの限界と永瑠の笑顔


蒼真の攻撃は、ドラゴンの極小の隙間に届いたが、鱗の硬さを破れない。


直後、ドラゴンの尾が薙ぎ払われた。

ドゴォッ!!


蒼真:

「がはっ――!!」


再び宙を舞い、地面に叩きつけられる。

肺が潰れ、視界が揺れた。


アーカ・メモリアを使った分だけ、頭の中がノイズに満ちてきしむ。


蒼真(心の声):

「(情報量が……多すぎる……!

 DEXとAGIが、この世界のことわりそのものを処理しきれてねぇ……!)」


彼は必死で泉へ向かった。


動かない指を無理やり動かし、爪先で地面を掻きながら。


「死んだ方が楽だ」という考えが、一瞬だけ頭をかすめる。


けれど――


永瑠の顔が浮かんだ。


泣きそうで、それでも強くあろうとする、あの不器用な笑みが。


蒼真(心の声):

「(……ここで終わったら、マジでダサすぎだろ、俺)」


指が水に触れた。


ジリジリジリ……ッ。


回復するたびに、すこしずつ、どこかが慣れていく。

身体の痛みに。恐怖に。何よりも、「死にかけること」に。



◇◇◇



#4 一日目の終わりに


体感で三十回目。時間の感覚が完全におかしくなっている。


蒼真は、回復の泉の縁に座り込んだ。


蒼真:

「……はぁ……はぁ……」


焔生を膝に立て、額を柄に預ける。


足は震え、腕は重く、全身は鉛のようにだるい。


蒼真(心の声):

「(まだ、ドラゴンのHPはビクともしねぇ。

 だが、俺の身体は確実に速くなった。)」


彼はゆっくりと立ち上がる。


蒼真:

「一日で諦めたら、マジで一生後悔する」


焔生を握り直す。青白い炎が、かすかに刃に灯る。


蒼真:

「ふざけた数値しやがって。」


彼は、再びドラゴンの方へ歩き出した。

地底での“最初の一日”が、ようやく終わろうとしていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ