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第62話:刀の可能性と数時間の覚悟

◇◇◇



#1 廃墟での夜と永瑠の弱さ


ノアの領域転移によって、三人は神楽市郊外の廃ビル屋上に避難した。


ノアは転移の余力で、戦闘に巻き込まれた自衛隊員たちを安全な地点へ転移させる処理を終え、再び二人のもとへ戻る。


朽ちた鉄骨が冬風に鳴り、死んだような静寂が夜を支配していた。


永瑠は少し離れた場所で膝を抱え、震えていた。


永瑠:

「……蒼真。私、なんで……逃げたのかな」


蒼真は警戒姿勢を崩さず、永瑠に背を向けたまま答える。


蒼真:

「逃げて当然だ。あんなもの……受け止められるわけがない」


永瑠:

「……違うの。逃げちゃいけないって……ずっと思ってた。


父は……私の存在を“許してない”」


ルシェルの冷酷な宣告が永瑠の胸を深く抉っていた。


永瑠:

「“永遠の檻”って言われた時……なんか、全部どうでもよくなった」


永瑠は顔を上げ、蒼真を見つめる。

強い瞳のはずが、折れかけた光だけが揺れていた。


永瑠:

「不死なんて、苦しいだけ。


蒼真にだったら……」


「蒼真の《焔生(ほむすび)》で……お願い。私を終わらせて」


その言葉に、蒼真の顔つきが激変した。


蒼真:

「弱気になってんじゃねぇよ!」


蒼真は永瑠の前へ歩み寄り、真正面から睨みつけた。


蒼真:

「お前は呪いじゃない。


俺の隣にいる“永瑠”なんだ。


誰にも、お前の命を終わらせる権利なんてない」


永瑠は唇を震わせ、言葉を失った。



◇◇◇



#2 ノアの解析とルシェルの真意


魔力が安定したノアが白銀の杖を握り、静かに告げる。


ノア:

「ルシェルの永瑠さんに対する感情は、極めて複雑です。


強い執着と……冷徹な使命感が混ざっています」


蒼真:

「使命感……」


ノア:

「彼は永瑠さんの“不死”を“悪”と定義し、それを断つことこそが正しいと信じている。


あなたのような法則外の存在に……永瑠さんを委ねるつもりは、最初からありません」


永瑠の肩がわずかに震えた。


蒼真:

「……あいつは永瑠を殺す気だ」


ノア:

「はい。それが“解放”だと固く信じています」


蒼真:

「……俺の刀は全く通じなかった。速度も、力も……未来予測すら追いつかない」


あの絶望的な差が脳裏に焼きついていた。



◇◇◇



#3 焔生の可能性と決意


ノアは蒼真の刀――焔生ほむすびを指差した。


ノア:

「いいえ。焔生には、突破口があります」


蒼真:

「……突破口?」


ノア:

「ルシェルの超速度は、時間から存在を切り離す技術です。


ですが、焔生の炎は、物理でも魔力でも説明できない“特異波長”を持っている」


ノアの瞳が、冷たくも確かな光を宿す。


ノア:

「その波長は、


“時間切断系の能力との干渉を無効化できる可能性があります”。


ほんの一瞬……彼の異能を断ち切る隙間を作る」


蒼真は息を呑む。


ノア:

「ただし扱うには、あなた自身が“ルシェルの世界線”に近づく必要がある。

身体能力、認知速度、未来予測……全ての基準を、常軌を逸する領域まで引き上げなければなりません」


蒼真は焔生を握りしめた。


蒼真:

「やるしかない。


全部ひっくり返す。


永瑠の未来は……俺が変える」


永瑠は震える声で問う。


永瑠:

「……本当に……私みたいな、終わらない存在を……救えるって……?」


蒼真は迷いなく答えた。


蒼真:

「お前は一人じゃない。


永遠だろうとなんだろうと、

お前の“隣”は……俺が守る」


永瑠の目から涙がこぼれ、静かに頷いた。



◇◇◇



#4 絶望的な時間と作戦の始まり


蒼真が焔生ほむすびを見つめた瞬間。


ノアは即座に杖を構え、観測を更新した。

白銀の瞳が不吉な光を放つ。


ノア:

「……緊急事態です。観測結果が急変しました」


蒼真:

「どうした?」


ノア:

「ルシェルの位置特定が異常な速度で精度を上げています。


この地点に到達するまで、残された時間は……最大でも、あと数時間」


永瑠は息を呑み、蒼真の表情が凍りついた。


ノア:

「猶予はありません。


ですが――作戦があります」




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