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第56話:白き夢、母の声

◇◇◇



#1 放課後活動


夕日が神楽高校を赤く染める頃、蒼真たちは町外れで“日課”の魔物退治をしていた。


子供

「うわあああ!」

母親

「いやぁぁああ!!」


悲鳴と同時に――


ドカッ!!!


永瑠

「蒼真!残りそっち行った!」


ヴァンパイアキックが魔物を数十メートル吹き飛ばす。


ズドッ!!


蒼真

「ふぅ……これで最後か。にしても、同じ場所ばかりに湧きすぎだろ……」


永瑠

「……変ね。この辺一帯だけ“感情の臭い”が焦げてる」


その隣でノアは、怯える母子に膝をついた。


ノア

「大丈夫ですか?傷は……?回復しましょうか?」


母親

「た、助かりました……」

子供

「ありがとう、お姉ちゃん!」


ノア

「気を付けて帰ってくださいね〜」


蒼真

「……よし、一区切り。今日は戻るか」


永瑠

「そうね。無理しても仕方ないし」


森の風が静かに吹く。

だがその風だけが――“これから来るもの”を知っているかのように冷たかった。



◇◇◇



#2 深夜、再び夢が始まる


夜。


放課後は魔物退治

帰宅、風呂、ノアのプリン、就寝。


そんな日常に、蒼真の身体は慣れてしまっていた。


だがその夜だけは――違った。


蒼真が眠りに落ちた瞬間、世界は“闇”ではなく、


――雪の降る白の虚空へと変わっていた。


音がない。温度がない。

ただ、永遠の虚空だけが広がる。


そこに、女性がふわりと佇んでいた。


蒼真

「うぇ、ど、どちらさんでしょうか……?」


女性

冬崎ふゆざき那美なみ……永瑠の母です……」


永瑠にそっくりの面影。

ただ、その瞳だけは何千年もの孤独を抱えているようだった。


蒼真

「え!?ちょ……幽霊……!?」


冬崎那美

「……蒼真さん」


蒼真

「は、はい……」


その声は優しく、しかし永瑠と全く同じ“魂の響き”を持っていた。



◇◇◇



#3 告げられるもの


冬崎ふゆざき那美なみは微笑んでいた。

だが、彼女の瞳には涙が溜まり続けている。


冬崎那美

「永瑠は……夜に生まれ、夜に宿り……

永遠に、夜を彷徨う運命です……」


蒼真

「……永遠……?」


冬崎那美は静かに頷いた。


冬崎那美

「終わらない命は……時に、死より残酷です」


雪が静かに降る。

その一粒一粒が、永瑠の積み上げた孤独のようだった。


冬崎那美

「孤独の中で……生まれ変わることもできず、

成長することもできません」


蒼真の心臓が冷たく震える。


冬崎那美

「生き続けるほど、大切な人を置いていく。

愛するたびに、喪失を知る……

それが、永瑠の“永遠”なのです」


蒼真

「…………」


冬崎那美

「私は……娘を守れなかった……」


雪に濡れた瞳が、まっすぐ蒼真を射抜く。


冬崎那美

「どうか……その刀で……」


その声は祈りのようで、懺悔のようで――涙に濡れていた。


冬崎那美

「永瑠を――終わらせてあげてください」



◇◇◇



#4 崩れる夢


蒼真

「え……終わり……って、どういうことだよ……?」


掴めない。

理解したくない。

だが問いただそうとした瞬間――


冬崎那美の姿が白く揺らぎ、霧のように崩れ始める。


冬崎那美

「いつか……全てを知る時が来ます……」


蒼真

「待ってくれ!!まだ……!!」


叫びも、手も、彼女には届かない。


白い世界が、破裂するように消えた。



◇◇◇



#5 夜明け前の現実


蒼真は、強烈な動悸と共に跳ね起きた。


蒼真

「ッ……はぁ……っ……!!」


シャツは汗でぐっしょりだ。

胸の中心が、現実には存在しない痛みで軋む。


目元からは……涙。


蒼真

「……永瑠の母……冬崎……那美……」


震える手で目をこすりながら、夢の言葉が蘇る。


蒼真

「終わりって……どういうことだよ……」


永瑠の永遠。

孤独。

夜だけの世界。


蒼真(心の声)

「(永瑠の……“苦しみの形”……)」


蒼真(心の声)

「(俺はまだ……何も分かってない……)」


蒼真は暗い部屋で、ただ一人、荒い呼吸を押さえた。


胸に残ったのは――

冷たい雪と、母の悲痛な願い--




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