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第39話:曇天トライアングル

◇◇◇



#1 朝と、ズレた世界


蒼真

「……で、つまり?」


蒼真は、目の前でプリンを食べるノアを見ながら、さっき宇宙でウィンターと対話した余韻がまだ抜けない。


世界滅亡まで あと24時間。


だというのに、

ノアは机の下から顔だけ出して、幸せそうにプリンを頬張っている。


永瑠は永瑠で――


腕を組み、窓際に立ちながら、外の空をじっと睨んでいる。


教室は始業前の喧騒に包まれていたが、

蒼真の心臓だけが、まだ昨夜の“黒龍の影”のリズムで動いていた。


蒼真(心の声)

「……なんで俺の部屋にいたんだよノアお前」


ノアは蒼真の視線に気づくと、

黒板にチョークで「24h」と書き、にっこり笑った。


ノア

「大丈夫です、蒼真さん。

 あなたの心拍は……はい、今は安定してます」


蒼真

「いや観測スルーすんな!」


永瑠は呆れ声を漏らした。


永瑠

「……アンタ、昨日の夜ほとんど眠れてないわね。顔が、死にかけの人間みたいよ」


蒼真

「お、お前のせいでもあるからな!?」


ノアが手を挙げる。


ノア

「私もいます!」


蒼真

「お前のせいが一番デカいんだよ!!」


クラスメイト数名がこちらを見たが、

もう慣れたのか誰も特にツッコまない。


ただ一人、藤堂ケンだけが言った。


藤堂ケン

「……お前ら三角関係か?」


全員

「違う!!」


蒼真(心の声)

「……いや待て。誤解じゃない可能性出てきてないか?」


蒼真の頭は混乱した。


しかし混乱の正体は恋愛のそれではなく――


“ウィンターの最後の言葉”が、胸の奥で引っかかって仕方がない。


『大切な誰かの“未来”を。

 君が失いたくないと思った人の“選択”を。』


“誰か”。


その正体には触れられなかったが、

蒼真の胸の奥は、永瑠の顔を見るたびにざわついた。


蒼真(心の声)

「……なんで、こいつを見ると、心が痛むんだ?」


永瑠は蒼真の視線に気づくと、

ふいに顔を逸らし、窓の外へ視線を戻した。


その耳が、わずかに赤かった。



◇◇◇



#2 昼休みの暗雲


昼休み。

いつもは生徒たちの笑い声で満ちる中庭が、

今日は妙に寒かった。


永瑠は蒼真とノアを連れて、自販機横の人気ひとけのない場所へ。


永瑠

「……見なさい」


永瑠が指さしたのは、学校の向こうの空。


ほんのわずかだが、

雲の裏側に黒い“筋”のような揺らぎが見える。


蒼真の背筋が凍った。


蒼真

「……これ、は……?」


永瑠はこくりと頷く。


永瑠

「まだ遠い。でも……近づいている。

 この街の“因果”が、何かの気配を引き寄せてる」


蒼真

「因果って……なんだよ」


ノアが答える。


ノア

「“世界のほころび”です。

 わたしたち三人――その魂の関係性が、因果を刺激してる」


永瑠が眉をひそめる。


永瑠

「私たち三人が原因……?」


ノアは首を振った。


ノア

「正確には――

 “わたしたちを選んだ”。

 修正のために、滅びの方向へ押し流そうとしてます」


蒼真は言葉を失う。


神楽市の上空に、

ほんのわずかに“黒”が混ざった。


――世界が、息を吸い込んだ。


ノアが震える声で言った。


ノア

「……何かが呼吸圏に……入りました……」


永瑠の表情が深く険しくなる。


永瑠

「まさか……この速さで……」


蒼真の胸の奥で、

焔生が“金属の心音”を鳴らした。


蒼真(心の声)

「……来る……」


神楽市消滅まで あと24時間。


二つの大きな“運命”が、

ゆっくりと、しかし確実に近づき始めていた。




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