表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/87

第29話:第二波、崩壊の予兆

◇◇◇



#1 静寂が砕ける


城壁の外の荒野には、第一波の魔物たちが残した焦げ跡と、飛び散った血痕が生々しく広がっていた。

しかし、戦闘が終わった後の、その後の静けさが異様に重い。


蒼真は、城壁に背を預けて立ち、地平線の彼方を見つめる。風はぴたりと止まったままだ。


蒼真

「……なんで来ないんだ」


静けさが不気味だった。遠くの空気が、まるで熱に揺らぐようにわずかに歪んでいる。


永瑠も刀の柄に手をかけたまま、顔を曇らせた。


永瑠

「……嫌な静けさね。大物が溜まっている気配がする」


ノアは何も言わず、杖を強く握りしめている。その小さな手が、微かに震えているのが蒼真には見えた。


ギルド長が、乾いた声で呟いた。


レイ

「この沈黙は、嵐の目だぜ。気を緩めるな」



◇◇◇



#2 第二波の襲来


警告の直後、城壁の堅い地面が、まるで内部から破られるかのように激しく震え始めた。

遠くの闇が、まるで生き物のように“盛り上がる”。

それは、ただの群れではなく、一つの黒い塊となって城壁へ向かってきていた。


蒼真

「えっ待っ――」


永瑠

「来る!!」


ノアが、震える声で正確な情報を伝える。


ノア

「第二波……接触まで15秒!」


蒼真は叫んだ。第一波では、襲来までに十分な準備時間があったはずだ。


蒼真

「さっき10分あったのに!?」


ノア

「測定不能です!魔物密度が高すぎて解析が追いつきません!」


ドガァァン!!


城壁の真下、地面が裂ける。

そこから黒煙が吹き出し、巨大な魔獣の群れが、壁を埋め尽くすように押し寄せてきた。


レイ

「全軍ッ!!迎撃開始ぃッ!!」



◇◇◇



#3 質の違い


蒼真は、反射的に第一波での戦い方を思い出し、刀を握り直す。


蒼真

「前と同じだ……なら――!」


彼は妖刀〈焔生〉を振り抜き、炎を纏わせた一閃を魔獣の群れに叩き込んだ。


しかし、


魔獣は燃えない。


蒼真

「――は?」


蒼真は驚愕に目を見開く。


永瑠

「……今のは、焔生が通ってない。刀自体は当たったけど、炎が効いてないわ!」


蒼真

「なんでだよ!!」


ノア

「魔力の層が違います!この第二波は……体表に“耐魔術”の膜が張られています!」


蒼真は絶望に顔を歪ませた。


蒼真

「第二波って……ただ数が多いだけじゃなくて、そういう意味かよ!」



◇◇◇



#4 城壁陥落の危機


城壁上は一気にパニックに陥った。

弓兵たちが矢を放つが、魔獣の体表で火花を散らして弾かれてしまう。


騎士団の叫びが響く。

「矢が……止められない!!」


「跳ね返されたぞ!!?」


レイ

「クソッ……第二波は耐性か!!物理攻撃で叩け!叩き落とせ!」


魔物たちは、騎士たちの攻撃を耐え抜きながら、城壁をよじ登り始める。


永瑠が、事態の深刻さに気づき、すぐに跳躍した。


永瑠

「まずい――このままじゃ……城壁が持たない!」


蒼真

「どうすりゃいいんだよ!俺たちの攻撃が効かないのに!」



◇◇◇



#5 ノアの決断


その時、ノアが迷いなく駆け出した。


騎士が慌てて制止する。

「ノア姫!?危険です!」


ノア

「大丈夫、これくらい……!」


彼女は返事もそこそこに、白銀の杖を城壁の堅い石の地面に突き立てる。


杖から溢れ出した強大な魔力が、瞬く間に巨大な魔方陣を城壁全体に展開させた。

ノア

「――《雪白浄火スノーホワイト》」


呪文の詠唱と共に、ノアの小さな身体から、蒼白の浄化の光が荒野を照らした。

光が触れた第一列の魔獣の群れは、一瞬で凍てつき、その後、微細な結晶となって音もなく砕け散る。


蒼真は目を疑った。


蒼真

「お前……こんな魔法使えたのかよ……!」


ノアは呼吸を整えながら、冷静に答えた。


ノア

「解析完了です。魔獣が持つ耐魔術の膜は、熱と物理に特化している……弱点は“霊属性”です」


永瑠

「なるほどね……熱の属性じゃないなら、私の斬撃も通るわ」



◇◇◇



#6 反撃


永瑠が、蒼真の肩に強い手を置く。


永瑠

「蒼真」


蒼真

「な、なんだよ」


永瑠は、蒼真の紅い瞳をまっすぐ見つめた。


永瑠

「恐怖も緊張も、今は全部“力”に変えなさい。私たちには時間がない」


蒼真は頷いた。ノアが道を開いた。もう、迷う理由はない。


蒼真

「……ああ」


妖刀〈焔生〉が、蒼真の覚悟に呼応して、以前にも増して激しく唸り、燃え上がった。


蒼真

「いくぞォォォ!!!!」


蒼真の放った炎の刃は、凍結した魔獣の群れを長く伸びながら貫く。

凍結を破り、蒼白の結晶を散らしながら、一筋の炎が次々と魔獣を霧散させた。


蒼真

「決まったああああああッ!!!」



◇◇◇



#7 しかし――わずかな違和感


ノアの魔法と、蒼真、永瑠の連携により、第二波の攻勢はなんとか押し返された。


蒼真は息を切らす。これで終わりか、と思った時、永瑠が険しい顔で空を見上げた。


永瑠

「……変ね」


蒼真

「何が?」


ノアは杖を下ろさず、魔力観測を続けていた。


ノア

「魔物の出現位置……変わってます。第二波の魔物は、東門に集中していたはずが……」


レイ

「変わってる?」


ノアは、観測結果を信じられないといった様子で、言葉を絞り出した。


ノア

「まるで――“呼ばれている”みたいに、城壁の一点に向かって移動しています」


全身を震わせながら呟いた。


ノア

「第三波――来ます」


蒼真

「は、はやっ!もう!?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ