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第五話

 ある日、ダンジョンができた。


 そして俺たちは、練馬ダンジョンギルドでダラダラしていた。


「はぁ、あすかくんに会いたい・・・。


見て、待ち受けあすかくんなの。かわいいでしょ?」


「クソかわいいよ。なんだったら俺も会いてぇわ」


 あすかロスは凄まじいものだった。


 アフターケアなんてカッコいいことを言わず、パーティーを組んで毎日ベタベタした方が良かった。


「あのスキル外スキル。いや、俺の中ではユニークスキルだな。凄すぎる。


あいつ日常生活大丈夫なのか?」


 グダグダしていると、事務所の奥の扉が開いた。


「あのー、関係者以外立ち入り禁止なんだけど、ここ」


「かおりちゃん。あたしたちはもう関係者なんだけど。


むしろ親戚にしてほしいんだけど」


「俺があすかの親戚になるには、かおりちゃんと結婚するしかないんだけど。いいかな?」


「いいわけないでしょ」


「あすかがいないなら俺はダンジョンをやめる。

毎日ここでじっとしてる」


「バカなこと言ってないで、ちょっと稼いできなさいよ」


 俺は黙ってテーブル横のスポーツバッグを指差した。


 もうノルマは終えているのだ。


「もうノルマは終えているのだ」


「なんでドヤ顔なのよ・・・」


 ため息をつきながら、かおりはバッグを抱えて奥へ向かっていった。


「そもそも、どこまで行ったらアガリなんだろうか」


「あたしは、半分もうアガってるんじゃないかって怖くなることがある。

 あ、思い出した。例の夢のスキル、ちょっと検証してよ」


 俺は何のことかわからなかった。


 なんだ?


「例の夢のスキル?あすかが夢に出るのか?」


「そんなスキルあるなら教えて。


って、そうじゃなくて、夢のなんとかボックスよ」


「あー、あれかー。

地道な作業が必要そうなのと、思ってたのと違いそうなんで、もうちょっと待ってくれ」


「えー、早く結果出しなさいよ」


「お前こそ、そろそろ何か兆候ないのか?その格好」


「なんとなくいい感じなんだけど、こっちももうちょっとなんだー」


「保留だなー」


 奥からかおりが戻ってきた。


「手続き終わったから。帰ってくれる?」


 俺はなんとなく、待つべきだと思った。


 もう少し粘るべきだ。


「ああ、そういえば相談したいことがあったんだ」


「なに?」


 かおりも俺たちに遠慮がなくなってきた。


 いい兆候だ。


 あすか攻略に向けてかもだが。


「ダンジョンは、どこまで行ったらゴールなんだ?

魔石集めるだけだと、単なる炭鉱夫だろ?


誰か攻略して、ダンジョンが消滅したりしてないのか?」


 のどかの疑問を、そのままぶつけているようなものだった。


 だが俺自身にも迷いがあった。


 ただひたすら魔石を狩る。


 今の俺たちにとっては、もう単純作業だ。


 イノベーションがない。


 つまり、副業くらいがちょうどいい。


 若くしてFIREした奴らが、結局会社勤めに戻るのはよくある話だ。


「・・・梶さん、何か知ってるの?」


「なんでだ?何にも知らんぞ」


 かおりは戸惑っているようだった。


 どうやら何か秘密があるらしい。


 そうすると、アメリカとか中国あたりだろうか。


 銃を乱射していれば変なスキルも生えそうだし、探索はかなり進んでいるはずだ。


「ダンジョンは、そのダンジョンごとに深さが違うらしいの。

浅くて狭いダンジョンもあるみたい」


「それで?」


「倒したモンスターが多ければ多いほど、ダンジョンは深く、広くなる。

今わかってきているのはそこまでなの」


「つまり、深く進めば進むほどゴールは遠のく仕様なのか。ゴールはないという」


「うーん。クソ仕様じゃない?


宇宙の広がりみたいな。

観測できる端の向こうは何もない、みたいな」


 俺は少し考え込んだ。


 そして閃く。


 提案できることがあるかもしれない。


「まだ浅いと思われるダンジョンがあるなら、俺は底まで行ける気がする」


 二人は息を呑んだ。


 底に何かあるのか。


 それを見つけるのはロマンがある。


 誰もまだ見ていないならなおさらだ。


 ダンジョンの仕様がイマイチなのは、最初からわかっていた。


 だからこそ、俺たちに何を求めているのかわからない。


 たくさんモンスターを倒してほしいのか。


 魔石を持ち出させたいのか。


 それで何になるのか。


 確かに魔石は半導体にもなるし、燃料にもなる。


 世界の足りないものを補っている。


「世界中の誰も、まだゴールしてないのか?」


「機構が把握している範囲ではね。もちろんSNSの情報も含めて」


 これはいい。


 最近、作業に少しうんざりしていた。


 本業を頑張る方がやりがいがあったくらいだ。


「どこが過疎ってる?発見されたばかり、とか」


 かおりはためらっているようだった。


 どうやら心当たりはあるらしい。


「年度末が近付いてて、有給をまとめて取らないといけないんだ。多少遠くても構わない。難易度の高いミッションに挑戦したい」


「本部に確認させて。本当は、逆にどうお願いするべきか迷ってたの」


「あー、裏目か」


「何が?」


「アホか。あすかを人質にするチャンスだったってこと」


「バカ。生け贄でしょ」


「どっちもないわよ。あの子、何を思ったのか、むしろ真面目に学校行ってるの。


男らしさはダンジョンにはないって気付いたのかも」


「嘘だろ!

男らしさはここにあるぞ!ここでしか磨けない!

そう言っとけ!」


 俺は憤慨しつつも、そりゃそうだとも思った。


 コミュニケーション能力。


 ビジネススキル。


 知識。


 頭の使い方。


 そういうものはダンジョンには転がっていない。


「いずれにせよ、確認が取れたら連絡するわ」


「あすかを通じて連絡させろ」


 かおりは無言で手を振った。


 追い払うような仕草だ。


「しっしっ」


 しかも口でも言った。



今回のリザルト


「かおりからの好感度ダウン」


「イベント発生」


 ちょっと楽しくなってきたのは言うまでもない。

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