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第三十話

 ある日ダンジョンができた。


 ダンジョンは人を強化するが、いったいそれは何のためなのか。

 ダンジョンの次に待つものは何なのか。


「真面目な顔したって、許さないからね」


「何が?」


「何がじゃないよ! ボクたち故・橘兄妹になるところだったんだからね!」


「身から出たサビじゃねぇか。

戦場では俺の前には立つなよ」


「怖いよ、えーん」


 さゆりに抱きついている。


「まあまあ、梶さん、そんなに怒るとシワが増えるよ?」


「お前知ってたろ」


「日本で知らなかったの梶さんだけだよ」


「ガビーン」


 かくして俺たちは、ちょっとしたスペースに来ていた。


 めんどくさくなった俺は、こいつらも巻き込むことに決めたのだ。


「今から行うことは、秘中の秘だ。

まずは安全保障として、全員の耐性を上限に近付ける」


「あぁ〜、助走なしですか?」


「とっとと終わらせることにした」


 とりあえず俺はブルーシートを敷き詰める。


「梶さん、これは何かな?」


 橘兄妹のせいで毒気を抜かれ、壁の花となっていた水野統括が聞いてくる。


「これから始めるメソッドのキモです」


 さゆりが遠い目をしている。


 まず見本を見せよう。


「みそら、お前、近接武器はあるか?」


「うん、このメイス」


 腰に下げていたメイスを見せる。


「シンプルなメイスだな。いいな、お前。見込みがある」


「本当? わーい」


「そんなお前にはこれを貸してやる」


 プラスチックのバットを渡す。


「これ?」


「そうだ。それでのどかはホームラン王になった」


「またアホなこと言い出した。もう終わりだ・・・」


 橘兄妹を壁沿いに立たせる。


「俺は今からとあるものを投げていく。

みそらはバットで、かいとはその剣でできるだけ斬りつけるんだ。わかったな。本気でやれよ」


「「はい!」」


 さゆりは目を逸らす。


 俺は構わず、まずはピン球を二人に投げていく。


「ボクサーのやつだ! えい!」


 コーンと、みそらはホームランを打つ。

 かいとは切れず、弾いてしまう。


 俺はどんどん投げていく。


 ぱちーん、とピン球がみそらのおでこに当たる。


「痛!」


 二人はそれでも飛んでくるピン球を打ち返したり、切ろうとしたりする。


 そして、いつもの禁断のBB弾を掴むと、俺は二人にぶつける。


「「痛! ちょっと、ちょっと!!」」


「お、双子ネタか?」


「「違う!!」」


 俺は構わずBB弾をぶつけていく。


 二人は仕方なく打ち返したり、切ったりしている。


 体にも次々とBB弾が当たる。


 俺は速度を上げていく。


 やがて、まずはみそらが変な顔をし始める。

 プラスチックのバットが、爆発するような音を立ててくる。


 体に当たっていたBB弾を避けられ始めている。


 そのうち、かいとがBB弾を切断した。


「うわあ、切れた!」


 俺はBB弾を投げるのをやめない。


 二人の動きが変わり切ったので、投げるのをやめる。


「た、多分だけど、ボク、打撃とか、物理耐性とか、見切りっぽいの身についちゃったかも」


「オレはそれと剣術かも。もしくは切断、みたいな」


「どういうこと?」


「答えは外に出てからだ。


 さて、特戦隊の皆さん。

 武器の用意はよろしいか?」


「梶さん、私にもバットを貸してもらえるかな?」


「もちろん。他のお二人は?」


 御厨が二本の短刀、東条は鉄剣を構える。


 三人に並んでもらう。


「まずはピン球から行きます。

人数が多いので、さゆり、お前も手伝えよ」


「はい。これ、前に他の人にやっても、あまり効果出なかったんですよ。コツは?」


「殺す気でやれ」


「えー! 殺されそうだったの、ボク! 怖いよ!」


「なるほど、本気ってことか」


「それがメソッドだ」


「ドヤ顔やめて」


 ちょっと揉めたが、二人がかりでピン球をぶつけていく。


 さすがの特戦隊、よく打ち返してくる。


「よし、ではBB弾だ」


 さゆりにも袋ごと渡す。


「死ね! 死ね! くらえ! きゃっはっはっ!」


 さゆりのBB弾投げがエスカレートしていく。


「こら。手を抜け。死ぬぞ」


「ふふーん」


 やがて三人の動きが洗練されてくる。


 俺たちは投げるのをやめた。


「こんな馬鹿な」


「信じられない」


「今までの努力はいったい」


 だいたいこんな感じになる。俺のメソッドは。


「最後はみんなでぶつけ合いましょう」


 橘兄妹も参戦して、全員でBB弾をぶつけ出した。


 おっさんも交え、キャッキャし始めている。


 もうヤケクソになっているようだ。


 俺もこっそり塩を皆にぶつけている。


 やがて皆の手が止まった。


「これが、まあメソッドですよ。

どこで発表してもスルーされてきました。

常識はずれってやつです。


この効果は無限ではないし、いつか変わるでしょう。


でも、超人になって、どうするんですか?


まあ、特戦隊の皆さんは仕事だからいいでしょう。


橘兄妹も本業だから、良いとします。


もう後戻りできない。


弱くはなれないんですよ。


俺が思うに、ダンジョンの先は世界の危機でしょう。


一緒に最前線で地獄を見ましょうね」


 俺は微笑んだ。


 何故か皆、一様に引き攣ったような笑顔で返した。


 ⸻


 今回のリザルト


 可哀想な人たち共通


「物理耐性」「打撃強化」「見切り」「投擲」


 御厨、東条、橘かいと


「剣術」


 水野、橘みそら


「棒術(杖術)」


 皆、一様に会話もなく静かに帰路についたのは言うまでもない。


 橘兄妹を今後も巻き込むことを決めたのも、言うまでもない。

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