表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
27/47

第二十七話

 ある日ダンジョンができた。


 そしてダンジョンが二つなくなった。


 ついにアメリカのネリスダンジョンの踏破が報告され、日本に次いで、三例目のダンジョンの消滅が確認された。


 踏破者は当然チームアメリカだ。


 おそらく次々に、各国のメンツとして、何とかダンジョン攻略を示そうとしていた。


 俺はもうご馳走様だが、今後の予定として、自衛官の育成と、研究局のお手伝いがある。


 それぞれ担当から連絡をもらえるので、一旦本業に専念しようと思っている。


 俺はノーコードで開発できる著名なツールを使い、簡易な営業管理ツールを作っていた。


 コードなしで、箱をパコパコ置いて、ルールをつけて、整理していく。


 あれ、これ別でデータベースを作らないと駄目じゃないか。


 ファイル出力用のアプリもいるのかも。


 あれ、これアクセスでよくないか?


 いや、その考えが平成なのだ。気合いでクラウドに置くんだ。


 あれ、これ入力フォーム、カッコ悪くないか?


 あれ、結局ちょっと開発しないとなのか?


 俺は手を止め、社内ポータルのどうでもいい人事情報など眺めていた。


 お? 結城が営業のマネージャーから課長になっている。


 すごいぞ。俺は役無しなんだけど。


 まあ、俺に役があったら、会社や部下など、いつ未帰還になるのか恐れて、仕事など出せないだろう。


 仕事自体は基本グループウェアで、進捗を共有しながら、作成物も共有フォルダにある。


 メールも基本CCに関係者を入れている。


 そのとき、社内チャットで結城から連絡がある。


『おーい、梶』


『はーい、お茶』


『今度の人事見たか?』


『ああ、お前課長じゃん。今度奢れよ!』


『なんでやねん。

長年人事を引っ張っていた山田女史が人事を外れて、なんか分からない、新設の未来革新部に移ってるぞ』


『なんか強そうな部だな。ペッパ○くんでも作るんか?』


『怖いこと言うなよ。人事からの派生で、社員のリスキルとか、システムのDXとか推進みたいだ』


『ほいで? わし広報ぞ。営業寄りの。

かつパンダぞ。ぽてんと座って日々日向ぼっこしながら笹食ってるぞ』


『いや、お前絶対呼ばれるぞ。リスキルってのが曲者でさ、ダンジョンでスキルアップ、的な感じらしい』


『ダンジョンでは、あんまりビジネススキルは上がらないかなあ? アホっぽくなりはするけど。脳筋化して』


『そうか? マルチタスクとか、スタミナとか、ビジネスに必要な要素つくんじゃないの?』


『お前アホか。行き着く先のサンプルは、日向で笹食ってるぞ。


こないだなんか、ダンジョン機構に呼ばれたとき、ゴジ○扱いで、腫れ物扱い。

スキルアップどころか、そのうち地球防衛軍に追われる羽目になるんだぜ。

馬鹿馬鹿しい』


『パンダにでもなってもらわないと、迷惑な社員もいるってこと』


『身につまされるなー。

まあ、呼ばれたら呼ばれたで、アドバイスはしにくいなー、命に関わるし』


『お前宇宙最強戦士だろ、何とかしろよ』


『あのな、ゴジ○が豆腐を上手に運べると思ってるのか?

俺はただでさえ、卵買ったら、いかに割らないかで細心の注意を払っとるんだぞ』


『それは誰でもだろ。アホ。

まあ、頑張れよ、じゃなー』


『うんこ』


 結城の前振りはさておき、ズンズンとこっちに山田女史が迫ってくるのが分かる。


 ちなみに山田女史は二児の母、ちょっと歳上のお姉さんだ。


 新人の頃はよく飲みやイベントに連れ回してくれたものだ。


 ゴリゴリの営業だったが、育児とのバランスから人事へシフトした。


 子どもも大きくなり、ワークライフバランスを見ながらだが、元々のゴリ度が高まってきている。


 見た目は綺麗なお姉さんだが、中身はゴリラだ。


『きた・・・』


「梶くん、今いい?」


「へえ、どうしやした?」


「聞いてるかもしれないけど、今度私、未来革新部のリソースマネジメント課を見ることになったの」


「へえ、それはそれは」


『予想どおりのこと言い出した』


「へえ、じゃねぇわ。あなたにも手伝って欲しいのよ」


「そうなんすか? ちょっと俺には荷が重いのでは、と」


『ちょっと、断ってみた』


「何チャットしてんのよ、結城とじゃない。


『ちょっと、断ってみた』


じゃないわよ」


「プライバシーの侵害だ」


「会社のチャットじゃないの。サーバーに残ってるわよ。バカね」


 そんなのいちいち見るバカいないだろ、多分。


「ふーん、豆腐ねぇ」


「全部読んどるんかい」


「そのゴジ○さんにお願いがあるの」


「断る! 自衛隊のお願いも断ったのに、一般市民のお願い聞けないっすよ(嘘だけど)」


「いやねぇ、ダンジョン連れてけって言ってないでしょ。

ダンジョンでスキルを身につけて、本業にどう活かすかを考えるのを手伝ってってこと」


「ああ、そういうことっすか」


『もう一度断ってみよう』


「見てるわよ!」


「マジ仕方ねえわ。山田さんのお願いときたら、断るなんて考えられないっすわ。

会社員万歳っすわ」


「バカねぇ。あなたのことは、会社みんな腫れ物のように扱ってるから、私が待遇改善してあげようとしてるんだから。感謝しなさいよね」


「へえ」


「それやめなさい」


「わかりやんした」


『断れなかった』


『そらそうだろ、お前バカか。

あのゴリねえに勝てるやつ見たことないわ』


「あ」


「誰がゴリねえだって?」


「結城くんです。あいつバカなんで、すいません。

ほんとにもう。先生に言っときます」


 静かに山田女史は、検索欄に「ゴリ」と打つ。


「あんたも書いてるでしょうが」


 検索結果に俺からのチャットが引っかかる。


 人に見えないところで、女史の鋭角なヒールが靴に食い込んだ。


 靴が壊れる!


「サーセン」


「もう!」


 かくして、俺は山田女史のしもべになることが決定した。


 ⸻


 今回のリザルト


 壊れた靴


 山田女史は、あの梶を顎で使っていると、評価を高めたのは言うまでもない。


 チャットは災いのもと。


 もちろん結城も、直接的大目玉を食らったのは言うまでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ