第十九話
ある日ダンジョンができた。
ダンジョンの謎に再び挑むため、俺たちは豊洲ダンジョンのいつもの場所に屯していた。
今回は最初からブルーシートを敷いているが、どちらかといえば花見のように地べたへ座るためだ。車座になり、今日の検証を開始する。
俺はまずカードを切って配り始めた。
最初は軽く数字抜きだ。ジョーカーは入れていない。
これこそ運ゲームの醍醐味である。
淡々とゲームを進める。
最初は俺が負けた。
その後も……満遍なく勝ったり負けたりを繰り返し、勝負は続く。
そして、また新しいゲームを始める。
「あのー」
「なんだ。次は大富豪だぞ」
「そうじゃなくて、これ、何のスキル用なんでしたっけ。よく考えたら、目的を意識しないとダメですよね?」
「そこからか。アッキー、このでかいのに教えてやって」
「き、きっと回り回って、トランプスキルなんじゃないかな」
「カードを投げたりね」
「ハハ、案外運が上がったりして」
「下がるかもな」
「!!」
「こわっ! なんてことさせてるんすか!」
「なんとなくだが、プラスにだけ働く気がするんだ。だから、運をたくさん使う方法がいい」
「ビタミンみたいに言わないでよ」
「そ、それなら『戦争』っていうゲームがいいかも。二人でやるんだけど、単純に運任せなんだ。
カードを二人に分けて、切ったあと裏向きに積むの。
せーので一番上のカードをめくって、エースが一番強くて、次にキング。二が最弱なんだけど、強い方が場のカードを取る。
それだけなんだけど、ひたすら運の勝負を繰り返すゲームなんだ」
「さすがアッキー。それは効率的だ」
「効率的、時短イコール苦痛、という法則にも適合している」
「ふふ、嫌な法則ね」
俺たちはまず俺とアッキーで戦争を始めた。
のどかとユッキーはサイコロで似たようなことを始める。単純に交互で振り、出目の大きい方が勝ちのようだ。
こっちも十分苦痛そうである。
なんとなく気が遠くなっていく。
運試しが完全な作業へ移行してから、一時間ほど経っていた。
「き、きたかも」
俺と戦っていたアッキーが、最初に兆候を見せた。
アッキーがカードを切り、俺と分けていく。
せーので出すカードが、十枚連続でアッキーの勝ちだった。
「よし。俺はコインに移行する。アッキーはこの黒い杖で、優しく、弱ーく魔法を使う練習をしてみてくれ」
俺はコイントスを始める。
表か裏かを宣言し、ひたすら投げ続ける。
「や、やばそう。なんかこれ、ちょっと力の込め方を変えるだけで、とんでもない魔法になりそう。
ちょーっと込めまーす」
アッキーの杖から極太のファイアーボールが飛び出した。
「あ、ヤバ」
俺はダブルマホガニーテーブルを取り出し、ユッキーへ渡す。
「いや、全然持ててますよね」
「もう一個あるんだ」
テーブルを並べて壁を作る。
着弾と同時に轟音が響き渡った。
のどかはカードやグッズを慌てて守っている。
「アッキー、やりすぎだよ」
「だ、ダメだった。これ、のんちゃんも使ってみて。またまたダンジョン革命かも・・・」
「ハハ、おそろしい」
「ていうか、あんた最近、その色々出てくるスキルを隠そうとしてないよね。もはや」
「どーこーでーもーつーくーえー」
「いやいや、そっちじゃないですし。あれ、じゃなくもないのかな」
「前にも言ったとおり、危険な要素がはっきり解消できていない。
これに関しては公開を自主規制している。
皆にはあえて言うが、非常にリスキーだ。
俺でないとコントロールできない可能性があるし、どう代替できるかイメージできるまではな。
えーっと、常にドヤ顔とセットになってしまう。
すまん」
「アッキー、それ貸して。そのドヤ顔ぶっ飛ばす」
「だ、だめだよ。そのテンションだとみんな吹っ飛ばされるから」
「ハハ、そっちの問題なのね」
少し脱線したので軌道修正を図る。
「とりあえず、皆で運を上げよう。議論はそれからだ」
「なんか無理やりまとめに入りやがった」
「まあ、とっとと終わらせましょう」
「い、いいのかな」
どうやら軌道修正は成功したようだ。
のどかはユッキーと再びトランプの戦争を始めた。
俺もコイントスへ戻る。
アッキーは杖を見つめながらブツブツと言っている。
やがてのどかも来たようで、ユッキーがカードを持って俺のところへやって来た。
二人で戦争を始める。
のどかは魔石のナイフを手に取り、じっと眺めていた。
「梶、刃物って作っても法律に引っかからないの?」
「よく見てみろ。刃がないだろ」
「ほんとだ。細いだけだ」
先ほど熱を防いだテーブルへ近付き、角をナイフで削ろうとしている。
そのまま切ろうとしてもへこむだけだったが、のどかが首を傾げながらもう一度試すと、急にスパンと切れた。
「ちょっと! 梶、これもまたヤバいよ。このナイフ、魔法みたいな感覚で『切れる』って考えながら使うと、めちゃくちゃ切れるんだけど」
「おー、いいね。あとは耐久度かもしれん」
「魔石のなんちゃらシリーズは、大変なことになるかもしれないね」
「梶さんフィギュアでさえ、モンスター貫通しますしね」
何故か最後まで残った俺は、カードを恣意的に数字の大小で分ける。
「ユッキー、こっちを持って」
「え、イカサマでもいけるんでしょうか」
「たまたまいいカードを掴んだってことだ」
「えー」
そうこうしているうちに、なんとなく来た気がした。
どうやら俺も運のスキルが上がったらしい。
「ハハ、これでいいのか」
「いいんだよ」
魔石の杖とナイフで、のどかとアッキーは交互に試している。
「あ、あの、ナイフでも魔法は増幅しますし、杖でも切れ味が上がります。
杖の場合は刃がないので、突いてみたら板に刺さったんです」
「なるほど。それ以上は普段使いしてみないと検証が難しそうだな。
ナイフはユッキーが使うか?
杖はどっちが使う?」
「俺、大剣使いのはずが・・・。でも使ってみます」
「杖はアッキーが使ってみて」
「え、いいの? のんちゃんも使えるでしょ?」
「あたしはカードを貰っていい?」
「ん? いいよ。
ていうか貸すだけな、貸すだけ。
贈与税がかかるだろうが」
「あら、カードが一番高いの?」
「ああ。カードが二百万だからな」
「単純な大きさではないのね」
「ああ。カードが一番手間かかってるしな。
投げてキャッツ○イごっこをしてもいいけど、無くなったらトランプとして遊べなくなるから、ちゃんと回収しろよ」
「はあい」
俺たちは荷物をまとめ、帰路につく。
「ハハ、今日のことを公開したら、ダンジョン攻略が様変わりしてしまいそうです。
どう進めますか?」
「とりあえず、あのおそろしい研究所を完全に取り込み、流出を制限する。
特許取得後、プレミアムを付けて販売だ。
ただ、機構側や警察、軍隊への配備が先だろうな。
そうじゃないと犯罪や戦争の道具になりかねん。
うーん、政府案件か?」
「そうですね。この辺りの武器は保留で。異議ないです」
「仲間内で遊びましょ」
「のんちゃん、カードだけじゃないでしょ」
「いやいや」
のどかはカードを一枚指に挟んで構えると、雷撃を飛ばした。
極太である。
「これ、形が違うだけで全部同じものだわ」
「ハハ、欠陥品なのかな?
いや、ある意味完成品と言えるのかな」
⸻
今回のリザルト
「強運?」
魔石グッズは、形状以外すべて同じ性能。
その後、俺が研究所へ増資を持ちかけ、主要株主となったのは言うまでもない。
研究所の株主、探索者、本業。
まさに探索者が副業と言える状態であることも、言うまでもない。




