第十三話
ある日ダンジョンができた。
基地に戻った俺たちは、何度も最奥の映像を見た。
やはり何かの胎児のような、幼虫のような映像だった。
何の生物の幼生なのかは、今後の彼らの調査結果次第だろう。
頑張って日米の力を結集し、解明してもらいたい。
なんとなく、俺はやり切ったと思っている。
俺の今回の役目は全うした、というのが正しいかもしれない。
ダンジョンの奥にいたのは、おそらくダンジョンのボス、あるいは主なのだろう。
探索者たちの攻略を通じ、何かしらのエネルギーを得て成長し、あそこから出てくるのだろう。
おそらく練馬やネリスダンジョンには、既に外に出たあいつがいるのだろう。
果たしてダンジョンの目的は何なのか。
俺たちの探索により、彼らは何を得ているのだろう。
体感的には何も与えていない。
スキルや戦う力を貰っている。
あとは魔石か。
魔石は貰っている。
でも、それだけだ。
モンスターからの素材や、ゲームのようなアイテムドロップもない。
もし俺が、いや、もし現代人がダンジョンを用意する側なら、モンスターは徐々に強くなるようにするし、色々なモンスターを用意する。
スキルは何かしらのスキルを覚えるアイテムを用意する。
アイテムは深く潜れば潜るほど、レアリティの高いアイテムをドロップするだろう。
我々の常識にある伝説の剣を用意するかもしれない。
様々な魔法や、何でも治るエリクサーのような薬も手に入るはずだろう。
全然文化を、ファンタジーを踏襲していないかというと、そういうわけではない。
ゾンビやゴブリンのような鬼もいる。
スキルだってそうだ。
ダンジョンからモンスターが溢れることもない。
我々は何かに困っているわけではなく、ともすると楽しむためにダンジョンを訪れているのだ。
「さゆり。俺は今回のミッションは完了じゃないかと思う。
もう一回トライするモチベーションはないし、無理すべきではないと思っている。
完了条件は、ダンジョンの踏破、もしくは破壊だったように思う。
どうだろうか?」
「梶さん、本当にありがとう。感謝しかない。最上の結果だと思う。
ミッション完遂を機構として認めます」
『チームアメリカの皆さん。いや、DERの皆さん。梶はミッション完了を告げています。
JSRDOとしても完全に同意します。
ここからの調査や考証はJSRDOかDERの役割に移行したと判断します』
『DERを代表して、その宣言を受諾する。ミッション完了おめでとう。
チームアメリカとしても、我々の愛すべき娘が飛躍的な成長を遂げることができた。
梶さんの誠実な協力に感謝する。我々からの報酬には期待してくれて構わない』
「なにそれ、重いんだけど」
「まあ、貰えるものは貰っておけばいいんじゃないの?」
「とりあえず俺はお土産を買いに行きたい。
どうせ基地直送なんだろ?
だったらその前にソルトレイクシティくらい行ってもいいだろ?」
『梶はソルトレイクシティを観光して帰ると言っています。
エヴァは来るわよね?』
『お父さん達が許してくれるかしら』
⸻
今回のリザルト
・ミッションの報酬(未開示)
・ソルトレイクシティ土産(バスソルト、他)
日本に帰り着いた俺は、のどかからの八つ当たりや怒りを宥めることに全力を尽くした。
バスソルトやマグカップ、ペナントなど、とりあえず色々上納した。
お土産とは関係なくご機嫌伺いをしながら、ちょっと前までハーレムだったのに、これは何だろうと思わずにはいられなかった。
有給の残りを怠惰に過ごす中で、ふとTVをつけた時に、JSRDOに新星のごとく現れた美人クノイチの特集が流れていて腰が抜けた。
あいつは何をしているのか。
有給明けに出社した日、ペースを取り戻すのに四苦八苦したのは言うまでもない。
今回の生還の鍵となった結城のアドバイスに感謝し、宇宙人のイラスト入りTシャツをプレゼントした。
ちょっと嫌そうな顔をされたのは言うまでもない。




