第12話 別離 2
「「キュリア!?」」
突然戻った私の顔見て、両親は顔面蒼白となった。
頬が赤くなっていたからだろう。
私は二人に話した。
旦那様に別の女性との間に子供が出来きた事。
だから離縁する事になった事を。
父は怒り、母は泣き伏した。
そして私を抱き締めて、謝罪した。
「悪かった…キュリア。おまえをこんな目に遭わせてすまない…っ あんな男に嫁がせなければ良かった…っ!」
「仲良く過ごしているとばかり……キュリア…つらかったでしょう……母としておまえの気持ちを汲み取ってあげられず…本当にごめんなさい…」
「お父様…お母様…」
私は叱責されると思った。
貴族として…一度嫁した娘が出戻るなど恥以外の何者でもないのに。
けれど父と母は、私に詫びた。
「お父様、お母様、誰のせいでもありません。私は旦那様…いえ、ディオン様の心の中には別の女性がいらっしゃることは前から気が付いていたのです。それでもいつか夫婦として寄り添えるようになれればいいと思っていました。けれど…人の心は理屈ではございません。ディオン様と関係を持った女性は…ディオン様が昔から想いを寄せていた方なのです」
「え?! なんだと!?」
父は、ディオン様に以前から想う方がいらっしゃった事に驚いている。
「ディオン様が先日その方と再会し…なるべくしてなった事なのです」
「いいえっ! 昔の想いを美化する必要はありません。ただの不貞です。それにこんな…暴力を振るうなんて…っ」
胸元で握り締めた母の右手が、怒りで震えている。
「あ、違いますっ 暴力を振るったのは私の方です。相手の女性に掴みかかって罵声を浴びせて…それをディオン様が止めようとした拍子に振るわれた手が私の頬に当たってしまっただけの事ですっ」
「え? 掴みかかる? 罵声?? あ、あなたが?!」
驚きながら手で口を押える母。
「そうですっ 私も怒る時は怒りますし、言いたい事を言いました! それに向こうの有責ですから慰謝料を払って頂けますし、私にはもう何の未練もございませんっ」
私は極力明るく振舞った。
でも言葉にした事は本心だ。
ただ…まだ胸が痛むだけ…
「あとはお二人と弁護士におまかせします。必要以上に騒ぎ立てる必要はありませんわ。落ち着いたら次の嫁ぎ先を探して下さい。出戻りですから贅沢は申しません。後妻でも…ただ、少しでも我が家の利益になる家門の方に…」
貴族の婚姻は政略が基本。
初めからその気持ちでいれば良かったのよ…
「何を言っているんだ! おまえにはきちんとした相手を探して見せるっ」
「そうよっ! 自分を卑下する事はないのっ あなたは何も悪くないわっ!」
そういうと二人は私を抱き締めた。
「……っ お父様…お母様…ありがとうございます…」
両親の温かい言葉に涙が出そうになる。
けれど、泣くまい。
これ以上二人に悲しい思いをさせたくないもの。
私は抱きしめられながら、両親の深い愛情を感じていた。
その後、私とディオン様の離縁が成立した。
もう会う事はない人。
これからは本当に愛する方と幸せになって下さい。
そうして私は、自分の心にも別れを告げた—————…




