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あなたの心の中に、他の女性がいることは知っていました。  作者: Kouei


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第10話 代償 2(side:ディオン)


『妊娠証明書』


 その文字を目にした瞬間、僕は絶望の淵に追いやられた。


「9週目ですって。時期を考えれば誰の子供かわかるでしょ?」


「……そ…た、確かなんですか…これは…っ だ、だってあの夜だけ…っ」


「そう、あの夜だけ。だけど、一晩中愛し合ったじゃない。何度も、何度も!」


「……っ」


 僕はもう一度書類を見た。

 妊娠週数、出産予定日、医者の署名などが記載されている。

 けれど、偽造できるのではないか?


 そんな僕の気持ちを見透かすように、彼女が否定した。


「…偽造じゃないわよ。きちんと町医者で診てしてもらった診断結果よ。疑うのなら、この医師に確認してもらっても構わないわ」


「ロ、ロアンヌ…」

   

「私、産みますから。だってあなたの子ですもの」


 語りかけるようにお腹に触れる。


「だから、奥様と別れて私と結婚して」


「え!」


「あなたと奥様、まだお子様いらっしゃらないんでしょ? 私が産んだ子を奥様に育てさせるわけにもいかないじゃない。まさか愛人として私を囲うつもりなの!?」


「ま、待ってくれっ 突然そんな事を言われても…っ」


「じゃあ、あなたの子供を堕ろせというの? そんな事をして、あなたはこれからも奥様と笑って過ごせるの?」


「そ、それは…っ」


 ロアンヌからの要求に、僕は狼狽(うろた)える事しかできなかった。

 そして、僕は彼女に頼んだ。


「…お、お願いだ…少し時間をくれないか? 妻には僕から…きちんと話したい…」


「……長くは待てないから!」


 そう言うと、ロアンヌは去って行った。


 僕は震える手を押さえるように握り締めながら、これからの事を考えた。


 確かに、このままキュリアに隠し通せるはずがない。

 そして、裏切った僕を許してくれるはずもない。

 他の女との子供まで出来て…!


 

 離縁



 この言葉しか思い浮かばなかった。

 キュリアを失う?

 

 ヒュッ


 自分の犯した罪の代償に気づかされ、呼吸が浅くなる。


 …どうして…どうして僕は過去の想いに囚(とら)われていたのだろう…


 僕はキュリアを心から大切に思っていたのに。

 幸せに暮らしていたのに…っ!


 だが、子供の事をこのまま放置する事はできない。

 二人の女性を傷つけ…せめて子供に対しては責任を取らなければならない。

 けれど…


 答えが出ているにも関わらず、僕はキュリアに話し出せずにいた。

 ただ、いたずらに時間だけが過ぎていく…



 そんな僕の迷いを感じてか、ロアンヌが突然屋敷を訪れて来た。



「ロ、ロアンヌ!」


「あれから一週間経つのに何の連絡もくれないなんてっ もう待てないわ!」


「こ、こんな突然…っ ま、待ってくれ! きちんと…」


「旦那様…?」


 エントランスでの騒ぎを聞きつけ、キュリアがやって来た。


「キュ、キュリア…」


 ああ…こんな形で彼女に告げる事になるなんて…

 いや…僕がいつまでも決断できなかった事が悪い。

 全て僕の過(あやま)ちだ!


 ロアンヌは僕の隣に寄り添った。

 そして僕は、キュリアに告げる。



「……実は…彼女……妊娠しているんだ…


 …僕の子だ」



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