#2新天地
仙台駅のホームから出てみると遠征で行った東京ほどではないがビルが立ち並び栄えているように思えた。
タクシーを拾い、
「三鷹フィールドまでお願いします」
「あんたもしかして松下選手かい?」
自分のことを知ってくれている地元の方がいることに驚く。
「フィッシャーズに来るんだってね。レックスの時から応援してたから嬉しいよ」
嬉しそうに微笑みながら言葉を続ける。
「フィッシャーズでももちろん応援に行くから頑張ってくれよ」
そんな応援の言葉に俺の心が燃え、
「はい、もちろんですもう一度這い上がって見せます」
運転手も笑いながらレックス時代の話や地元の美味しいお店などの話をしていると目的地についた。
運転手と握手とサインをあげるととても喜んでくれた。
そしてタクシーが過ぎ去るのを見て球団事務所に向かう。
「松下君、ようこそ東北フィッシャーズへ」
そう出迎えてくれたのは監督の村田匠であった。
「君の力でチームを引っ張ってくれ」そう話すと共に握手をする。球団職員や記者が写真を撮っている。
眩しくて目を開けておくことに苦労した。
「君たちちょっと彼と二人きりで話したいから出てもらって良いかい?」
「・・・わ、わかりました」
職員達が慌てて出ていく。そして最後の一人が出て扉が閉まると。
「こう堅苦しいのはやっぱり苦手だな。君もだろう?松下君」
そう心の重荷が取れたかのように伸びを始める。
「村田さんそんなに選手と絡んでいいんですか」
「過度でなければいいだろう。毎年正月にも会ってるんだから距離が遠いのも君もなれないだろ」
「まあそうですね」
そう村田さんは高校時代の相棒の村田翔の父である。
そして打者として五年連続三冠王と言う脅威的な打力と10年連続ゴールデングラブ賞を受賞する流れるような守備で球界に名を残した選手でもある。
「ちなみになんですけどなんで俺なんかをとったんですか。投手なら他にもいい選手いたと思うんですけど」
そう疑問を口にすると
「ちなみなんだが君は自分がもうピークを過ぎたと思っているのかい?」
「まあ怪我して以降自分ではいい球だと思ったのも打たれてきたのでそうなのかなとは思っていたんですけど」
「松下君、それは違う。君が怪我前に戻れない理由は怪我後との投げ方の違いだ」
そう言われた時脳内が一瞬混乱した。
「どう言うことですか?」
そう戸惑った声で聞くと近くにあるモニターを映し出す。
「左が怪我前の映像で右が怪我後の映像だ。これをみると体のひらきが怪我前より大きいんだ。それで球速が落ちると共に球威も落ちたんだろう」
その言葉を聞いた直後震えた声で
「じゃあまた怪我前のような球は投げられるんですか?」
「ああ、もちろんだ。キャンプ中に体を仕上げるぞ。
そして先に言っておくが開幕投手は君で行こうと思う」
「開幕までに取り戻して見せます」
そんな覚悟のこもった言葉を聞きとても監督は微笑んでいた。




