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Out Of Orbit ~すべてはこの手の中に~  作者: 銀猫
序章 墜ちたもの——希望と呼ばれた星
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第2話 予感 ――屋敷の外へ『おかえりなさい』の悲劇  崩壊の始まり


いちが、部屋を飛び出した後――


空っぽになった兄の部屋に一足遅く、

黎沙れいさが駆け込んできた。


何か、感じるものがあったのだろうか。

開いている扉の隙間から、声をかける。



「いっちゃん?……あれ?いないの?

 もう、どこ行ったのよ、トイレ?」



弌の姿が無いことを確認すると、

黎沙は、「もうっ」と肩を落としながら、

腰に手を当てて、扉を開け放つ。



そして、何気なく兄の部屋を一通り眺めた。

部屋はいつも通り綺麗に片付いている。



問題などない。



いつも通りの――はずだ。



窓から差し込む月明かりは、一筋の線となって窓辺に落ちる。

その先端に、見慣れたノートが落ちているのに気が付いた。



「もう!こんなところに、落としたままじゃない」



何気なく、開きっぱなしのノートを拾い上げる。

研究オタクの兄ならやりかねない。


呆れながらも、自分だけが知っている兄の癖を、

微笑ましく思いながら拾い上げる。


しかし、あたたかい気持ちもそこまでだった。


理由は簡単だ。



床に落ちていたのは――



弌は何よりも大切にしているはずの、

床に落としたままになどするはずのない

祖父から譲り受けた「日記」だったこと。



そして、開かれたページが――『脅威の日』の記述だったこと。



その二つが直感的に、黎沙の背筋をゾッとさせた。



偶然だ。そうに決まっている。

だが、部屋に響く秒針を刻む音が――



まるで、何かのカウントダウンのように聞こえた。

不安を振り払うように、首を横に振る。




「いっちゃんったら、トイレ遅い!」




兄と話せば、この不安は払拭される。

兄と会わなければ。



黎沙の心はそう――警鐘を鳴らし続ける。



何かが動いた気がして、黎沙は不意に窓の外に視線を向けた。



外を覗くと、そこには――

何かに引き寄せられるように、必死に丘を目指して走る兄の姿があった。




「は!?いっちゃん!?

 なんで、あんなところに……何してるの?

 それに……上を見てる?……空……?」




必死に走り続ける弌の姿に、勘のいい黎沙は、兄の視線の先を追う。

そこには漆黒の空。そして明滅する光。



背筋に冷たいものが走った。さっきよりも明確に。

警鐘は、より速く、鮮明に鳴り続ける。




『駄目よ 止めなくては』




あの光と兄を接触させてはいけない。

なぜか直感でそう思った。



黎沙の勘は昔からよく当たる。

いよいよ、冷や汗は脂汗に変わってきた。




「いっちゃん!待ってて!今、行くから!」




踵を返して、部屋を飛び出す。

そこで誰かと体がぶつかる。




「黎沙ちゃん!どうしたの!?弌くんは?」



沙羅さらさん!

 父さんと母さんを起こして!いっちゃんが、大変なの!」



「大変?どういうこと?――それに、あなた真っ青よ?」



「分からない……

 でも、空から何かが来てる!

 おじいちゃんの言っていた……脅威かもしれない!

 そんな気がする!」



「え!?……介山かいざんさん…どういうこと!?

 連絡は入っていないわよ」



「とにかく、丘の上よ!いっちゃんが今、向かってる!

 一人にしちゃ駄目なの!

 丘の上に行かなきゃ!

 いっちゃんが、いっちゃんが、危ない!」



「分かった!行きましょう!」






ち   ち   ち    ち    ち     ち






部屋の時計、その針が謳う



『正常な状態から外れる』



『秩序を失う』



『予想外の行動をする』



OutOfOrbit(カウントダウン)は、すでに始まっている。





そうして――



『死んだ星の光』がやってくる




……もうすぐ……




()()の  頭上に 



生きるために



軌道を外れて



やっと 会える  





『た だ い ま』





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