第20話 再び兄弟へ――情報を求めて
翌朝。
事務所の窓から差し込む光が、ソファで眠る乙を照らす。
朝日に起こされた乙は、肩幅の広い身体をゆっくりと起こし、
眠たげな目で兄の姿を探した。
兄の――螢は既にコーヒーを淹れ、ジャケットを羽織っている。
「ん?兄貴……どこか、行くのか?」
「ちょっと……知り合いに会ってくる」
「え?まさか、SWATとか?」
乙の問いに、螢はニヤリと笑ってみせる。
「さあな。だが――“街を守る”ってのは、案外、地味な足仕事からな」
その声に、乙の目はぱっちりと開いた。ヴァンをひと撫でしてから立ち上がる。
まだ眠気は残ってはいるものの、不思議と瞳は輝いていた。
「じゃあ俺も行く」
「ダメだ。今日は留守番な。情報が集まるまでは、お前は、お仕事だ」
「えーーーー」
「ヒーローなんだろ?街のためのお仕事は、なんでも文句言ったらいかんな~」
「ちぇっ」
頭を掻きながら
「はいはい、ちゃんとやっておくよ。猫ちゃんも引き渡してくるから。
兄貴も気を付けろよ」
「それと、ヴァンを親父のところに連れて行ってくれ。帰って来たらしいからな」
「それ、お仕事じゃないじゃん!」
「頼んだぞ、ヒーロー」
「うっ!分かったよ!」
短いやり取りのあと、螢はドアを開けた。
初夏とはいえ、朝はまだ冷える。
新鮮な朝の空気が流れ込み、兄弟の間に一瞬だけ張り詰めた沈黙が生まれる。
(……必ず突き止める。あの光の正体も、母さんが追っていたものも――
そして
『いち』という男のことも……)
螢は足を踏み出し、雑踏へと消えていった。




