第15話 共闘 お前は闘えるのか――見せてみろ
緑の苔がじわじわと腕を覆い、節々から小枝のような棘が突き出す。
首筋には薄い葉脈のような模様が浮かび上がり、脈打つたびに血液の代わりに何か濁った樹液が流れているかのように光った。
その体はもはや人の筋肉の動きではない――
足のバネがしなり、次の瞬間、天井近くまで異常な跳躍を見せる。
「こいつら、あの時より
人間の動きに適応してやがる。学習してるってことか……」
エルの低い声が、戦場の空気を裂く。
ノット化したスーツの男が床に着地する音は、
木の幹が割れるような鈍い衝撃音だった。
着地と同時に、別の一体が奇声を上げながらエルへ突進する――
その爪は、鉄骨すら容易く裂き、錆と血の匂いを巻き散らす。
襲い掛かるノットを、乙は反射的に投げ飛ばした。
投げられたノットの身体が宙を舞う――
瞬間、エルの腕から緑色の閃光が放たれ、空中でノットの胸を撃ち抜く。
種子のような塊が光の中で破裂し、男は地面に崩れ落ちた。
乙は息を荒げながら、次の一体に向き合い、構え直す。
相手の動きを見極める。
震える拳を握りしめ、恐怖を打ち払う。
大丈夫。
俺ならできる。
そう自分に暗示をかける。
――決して、心は止めない。
「俺は……ヒーローだから!」
あの言葉が背中を押す。
エルは横目で乙を一瞥し、その動きを計るように目を細めた。
――こいつは本当に戦えるのか。
いや、弌が言った通りなら……。
乙はエルの脇腹をすり抜け、右側から襲い来るもう一体を、低い体勢から足払いで崩す。
その瞬間を逃さず、間髪入れずにエルは引き金を引き、正確にノット化した男に緑色の閃光を打ち込む。
工場の空気が、急激に変わった。
鉄と血の匂いに、焼けた樹皮のような青臭さが混じり、
さっきまで冷え切っていた床から、じわりと生温い熱が立ち上ってくる。
それを繰り返しながら、13人もいた集団をすべて無力化してしまった。
その動きは、まるで長年のバディのように噛み合っていた。
「……なるほどな」
普段、口数の少ないエルが思わずそう呟いていた。
身をもって、そう感じた結果なのだろう。
当の乙は、
そんな評価など知る由もなく、
地べたにしりもちをついて、天を仰ぎ叫んだ。
「がぁぁぁ!見たかぁ!ヒーローの底力!」
本人は誇らしげに……かもしれないが、傍から見たら
情けなく肩で息をしているように見えるかもしれない。
エルはそんな乙に黙って手を差し伸べる。
彼を起こしながら、エルは覆面の下で小さく呟いた。
「……ちっ……弌の目はやっぱり本質を見抜いてやがる」
「!……い…ち?
いちって人が、俺のこと……あんたに言ったのか?」
乙はすかさず問い返す。
こんなことに巻き込まれて命懸けで戦ったのだから、
質問の一つくらいいいだろう。
そして、そのきっかけをつくった『いち』という人物は一体……?
しかし……
エルは何も答えない。
「おい!答えろよ!」
エルの表情は、ほとんど覆面の下に隠されていて読み取ることは叶わない。
それでも、乙は見逃さなかった。
わずかに露出している彼の瞳――
その奥に宿った微かな光が、ただならぬ熱を帯びていることだけは――。




