第13話 謎のバディ――新たな出会い 兄弟と寡黙と軽口
廃工場の奥、暗がりの向こうから二つの影がゆっくりと歩み出てきた。
黒い戦闘服に身を包み、全身を覆う防具と顔を覆うマスク――まるでSWATのような装備をしている。
足音はほとんどしない。
それなのに、近づくにつれ圧迫感だけが膨らんでいく。
先に声を発したのは、背の高い筋肉質の男だった。低音が場を支配する。
「気を抜くな」
その横で、もう一人が肩を落とし、やや、気だるい調子で応じた。
「分かってるって……あ~、面倒なことになっちゃったね~」
二人は足を止め、螢、乙、そして誠治の方へ視線を向ける。
軽口を叩いた方の男が、一歩前に出て呟いた。
「悪いけど――解決じゃないんだよね。最悪の始まりっていうのかな~
ここからが」
「は?」
乙と螢の口から、同時に短い声が漏れる。
だが、その言葉がただの脅しではないことを、次の瞬間に思い知ることになる。
長身の男――エルは、無言で銃を構える。
もう一人、軽口を叩く男――キーアは、その場を見回しながら、何かを探るような眼差しを向ける。
誠治が部下に合図を送ろうとした、その時だった。
取り押さえられていたはずのスーツの男たちが、突如として動きを変えた。
胸元へ手を伸ばし、小さなカプセルを取り出す。
「やめろ!」
誠治が叫ぶ間もなく、それを口に放り込み、ガリッと噛み砕いた。
鈍い音と同時に、空気が変わる。
男たちの目が血走り、全身が痙攣する。口から意味不明の言葉が吐き出される。
「我らの導きのために!」
繰り返し、畳みかけるように叫びながら、彼らは警官の制止も振り払い暴れ出した。
キーアは大きくため息をついた。
「あ〜……ほらね。こういうことになるってこと。
言ったでしょ?まあ、百聞は一見に如かずってことで」
その声には、余裕と苛立ちが半分ずつ混じっていた。
「直接は言ってない」
「あれ?言ってなかったっけ?まあ、結論。――最悪ってこういうこと」
この二人はどうやら、この状況に慣れているようだが、
螢も乙も、そして誠治も、何が起きているのか理解できず、
ただ息を呑むしかなかった。
工場の空気は、次の瞬間には血の匂いで満ちる――
そんな予感だけが、全員の背筋を冷たく撫でていった。




