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カレーは醤油 ~インドの記憶~   作者: そらら
醤油はカレー

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1894/1899

2023年6月20日(火) いずみ自動車の工場見学

6月20日(火)


「み・な・さ・ん。こんにちは。輪廻転生もほどほどに~でお馴染み、異国のユーチューバーこと、プリヤンカです。今日はチェンナイから車で北へ2時間ほど走らせた場所にあるスリシティ工業団地へ来ております。ここにはたくさんの日系企業が操業する工場がありますが、その中でピックアップバンを製造販売しているいずみ自動車の松田工場長と、先日、日本料理店の大山で偶然にも知り合うことができたんです。『自動車ってどうやって作ってるんですか?』との私の問いに対し、『じゃあ、工場見学したらいいじゃん』となり、本日、それを実行しにやってまいりました!」


 ガンガーが車をいずみ自動車の駐車場に停め、私が下車すると、工場裏の敷地にはこれから出荷予定のピックアップバンが何百台も並んでいた。


 その圧巻な姿を、カメラへ収めてゆく。


「みなさん、見てください、この数! これだけたくさんあると、なんだかミニカーみたいに見えちゃいません?」」


 すると「おーい、こっちこっち」という声が聞こえてきた。


 なんと工場の入り口まで、松田工場長が自らお出迎え頂いていたのです。


「今日はお忙しいところ、こんな機会を下さり、本当にありがとうございます」


「いやいや、プリヤンカさんのような若い女性がピックアップバンの製造過程に関心を持ってくれるだけでも、こちらとしては感謝しかありません。ただ……製造過程は社内規定で外部へ非公開となっているんです。大変申し訳ありませんが、工場見学の内容は、映像抜きで、プリヤンカさんの感想をユーチューブで述べる形でもよろしいでしょうか?」


 こうして私の人生初となる自動車工場見学が始まった。


 そして、1時間ほどで見学を終え、その感想を述べる段となった。


 - 鉄板から始まるピックアップバンの物語は、工場の静かな朝に息を吹き込まれる。巨大な倉庫に積まれた鉄板は、プレス機の轟音に応えて形を変え、ドアやボンネットへと折り曲げられていく。火花が散る溶接の場では、ひとつひとつの部品が結び合わされ、まだ無機質な塊が少しずつ車体へと近づいていく。塗装ラインでは、深い色が吹き付けられ、乾燥の風に包まれながら艶やかな輝きを増す。それはまるで魂を宿す儀式のようだった。組み立て工程では、エンジンが据えられ、タイヤが取り付けられ、シートが収められる。最後にライトが点灯した瞬間、鉄板から生まれた存在は走る者へと変わる。工場の出口に並ぶその姿は、まだ見ぬ道を待ち望む旅人のように、静かに未来を見つめていた -


「どうですか?」


「プリヤンカさん。私たち製造現場の人間て、モノに命を吹き込む仕事だと自負してるんです。それをこんな素敵に表現してくれて、さすがとしか言いようがありませんよ」


「そんなことありません。私こそ無理に工場見学アレンジしてもらい、感謝してるんですから。ところで、私がとてもびっくりしたんですが、女性従業員の比率がとても高いですよね? それってなにか秘訣でもあるんですか?」


「お、いいところに目を付けましたね。そうなんです。当社の女性従業員比率は約7割になっており、ここ数年で倍になりました。工場での作業ではどうしても力仕事が不可欠なので、その部分は男性に頼らざる得ませんが、検査や機械を使う工程などでは、極力女性を登用しています。この女性採用を推進するためにまず私が行ったのは、女性が働けないのではなく、組織が働かせなくしていると自覚することでした。そして、どうしたら働けるのかをみんなで考え、そしてそれを実行しました。例えば妊婦は働けないみたいに決めつけることを止め、車とドライバーを会社が手配すれば通える、みたいに。その地道な努力の結果が今に繋がっています」


 いずみ自動車は単にピックアップを作るだけではなく、仕事を通じてインドにおける女性の地位を高めていたのです。


 インドでは価格競争が激しくて苦戦が続いているようですが、いつの日かきっとこれら女性の思いが伝わり、成功を収める日が来ると信じています。


「ここまで見てくれて、みんなありがとう! いいなって思ったら、ちゃんと良いねボタンを押すんだぞ~。それじゃ、輪廻転生もほどほどに~」


この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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