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カレーは醤油 ~インドの記憶~   作者: そらら
醤油はカレー

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1893/1899

2023年6月19日(月) 理性の女 ~奪われた帝釈天像~

6月19日(月)


 理性の女が突如としてはやし家に現れ、カレーの醤油和えのカレーを抜きを綺麗に食べ、その後お茶を啜り、ごちゃごちゃ話してから教法人経栄山題経寺、すなわち柴又帝釈天の解散処分が執行されるまで、1時間は経ってないと思う。


 最高裁判所長官の戸倉次郎が執行令状を見せながら、ただ立ち尽くす柴又帝釈天住職の亨貞院日敬にこう諭した。


「もう時間がありません。これは日本国内閣総理大臣である岸田首相とアメリカ合衆国バイデン大統領が協議を重ねた結果によるものです。亨貞院日敬のお気持ちは察しますが、これに逆らうという選択肢は、残念ながらございません。ただし…ある1つを除いて」


 すると、そのふたりを交互に見つめながら、ふふふと笑っていた理性の女がすっと真面目な顔になり、亨貞院日敬の前に立ったのです。


「戸倉さん。その続きは、私から話させて頂きますわ。そうなのよ、亨貞院日敬さん。1つだけ解散処分にならない方法があるの。それは、私がさっき述べたこと。つまり、帝釈天を私に預けるってこと。そうしないと、この町のシンボル柴又帝釈天がなくなっちゃうんだよ~。わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯を使い、性は車、名は寅子、人呼んでフーセンの寅子と発します。あー、帝釈天がなくなったら、もうこのフレーズ、使えなくなっちゃうよ。で、どうするの?」


「うぬぬぬぬ……」


 亨貞院日敬は拳をグッと握りしめながら怒りを押し殺し、そして無言で首を縦に振った。



 ラン、ランララランランラン♪


 上機嫌に鼻歌を歌う理性の女とは対照的に、まるで葬式へ参列したかのよう俯いて無言を貫く亨貞院日敬。


 後見人として戸倉次郎ならびにそのお付きの者も後に続き、一行は柴又帝釈天へと向かった。


 すると、いつもは優しさと慈悲で満ち溢れているはずの境内が、悲しみと忌々しさで埋め尽くされていたのです。


 コッチへクルナ……


 コッチへクルナ……


「あら、帝釈天、あたしに会うのが、そんなに恥ずかしいの? 別に照れなくてもいいのに♡」


 言葉とは裏腹に理性の女は決して笑ってはいなかった。


 しかし、拝殿に入り、その中央に鎮座するゾウの上で悠々と半胡坐をかいている帝釈天像を前にすると、その目をキラキラと輝かせたのです。


「ふん……これが、帝釈天ね」


 すると、いきなり帝釈天像を片手でガシッと鷲掴み、高々と掲げたのです。


「帝釈天様をそんなぞんざいに扱うな! この泥棒猫め!」


 堪忍袋の緒が切れた亨貞院日敬が理性の女に襲いかかろうとしたが、残念ながら戸倉次郎のお付きの者に取り押さえられてしまった。


「あんた、人聞き悪いこと言わないでよ。さっき渡したでしょ? ウォーレン振出人の3兆円の小切手。これはディールであって、一方的な盗みでもなんでもないのよ!」


 その時だった。


 時が止まり、帝釈天が突如としてゾウの上で立ち上がると、手にした金剛杵を天に掲げたのです。


「あの人みたいになーでなーでしてくれないお前なんて、嫌いだ。これを喰らえ!」


 そして容赦なくドカーンと雷霆を轟かせようとした時、理性の女が手にするバーキンの中に、荒々しく帝釈天像を押し込んだのです。


「うぎゃあ……」


 バーキンの中には帝釈天が一番忌み嫌う醤油が満たされており、帝釈天はその瞬間気を失ってしまったのです。



「それじゃ、私、もうここに用はないから、行くね。あ、そうそう。亨貞院日敬。私、別に帝釈天フェチでもなんでもないから、私の目的を達成したら、こんなの返してあげるから、安心して」


 そう言い残すと、バーキンを肩に提げ、白い上下のスーツに白のシルクハットを身に纏った理性の女が、フフフと笑いながら拝殿を後にした。


 だが、その瞬間、明らかに理性の女が嫌いな臭いが辺りに充満したのです。


 それは、カレーの臭いで、しかも、とびっきりピュアに仕立てたものと直ぐに分かるものだった。


 あまりに強烈すぎて、意識が朦朧としながら境内を見渡すと、お守り売り場の近くに、あの女がいたのです。


 理性の女を睨みつけるその目は、嫌悪感に満ちていた。


 理性の女はあまりに耐え切れず、その女の隣を疾走と横切ることしかできなかった


「なんて忌々しい……でも、次会った時は、必ず黄黒をはっきりつけさせてもらうからね。それまでせいぜい、ユーチューブごっこでもして楽しむがいいわ。プリヤンカ・オベロイ!」


この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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