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カレーは醤油 ~インドの記憶~   作者: そらら
醤油はカレー

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1891/1899

2023年6月17日(土) スニール・ララン ~中編~

6月17日(土)


プリヤンカ: 改めまして、スニールさん、本日は素敵なホームパーティーへお招き頂き、誠にありがとうございます。


スニール: いや、こちらこそ大人気ユーチューバーのプリヤンカさんにお越し頂き、大変光栄です。あ、すみません、お飲み物がまだでしたね。そうそう、美味しそうなウィスキーがあるので、もしよかったらそちらで構いませんか?


プリヤンカ: もちろんです。ありがとうございます。


 スニールがソファーを立つと、リビングルームの一角に作られたバーカウンターへ向かい、そこに駐在するバーテンダーに高級ウィスキー山崎35年を惜しげもなく並々と透明な丸い氷が入ったロックグラスに注がせた。


 そして再びソファーに戻ると、「どうぞ」と言いながら、そのグラスを私に差し出してくれたのです。


スニール: 私、これがとても大好きで、見つけたら絶対に買うようにしてるんです。もしよかったら、その味わいを視聴者の方にもお伝えしたらどうですか?


プリヤンカ: そんな貴重なもの、ありがとうございます。


 私はカランとロックグラスをステアリングした後、口の中に軽く含んだ。


 - グラスを持っているだけで漂う山崎35年の香りは、まるで時の層を重ねた詩のように広がります。口に含めば、熟成樽から滲み出る深い琥珀の息吹、ドライフルーツの甘やかさに黒糖の濃密さが寄り添い、やがて伽羅のようなウッディな余韻が立ち上る。シェリー樽由来のレーズンやプラムの陰影に、ほのかなスパイスと蜜の光が差し込み、最後には静かな煙のヴェールが全体を包み込む -


スニール: 素晴らしい! さすがは世界で活躍するユーチューバーだ。そんなコメント、その辺のレポーターなんかじゃ絶対にできない。山崎以外にもラフロイグとか色々あるから、今日はどんどん飲んでね。


プリヤンカ:ありがとうございます。でも、視聴者の方も含めて疑問に思ってると思うんですが、どうやってスニールさんはこのような財を成し遂げたんですか?


スニール: 私の家系は代々チェンナイで大地主だったんです。といっても、田舎にだだっ広い農地があるだけで、マンゴーやらお米などを小作農たちに栽培させていました。ただ、私の代になるとインドが自由経済政策を導入し、海外から多くの企業が産業投資するようになりました。ただ、その投資に耐えられるような工業団地がない。そこで農地を工業団地へ切り替え、それらの投資を呼び込んだことが成功の秘訣です。


プリヤンカ: まさに先見の明があったということですね。


スニール: でも、工業団地って、土地を区画整備して99年リースしたら、基本的に賃貸収入があるだけなんです。これだと、農地だった時代と本質は変わってません。なので、じっと待つだけではなく、自ら動いてなにかに挑戦したいと願い、冒険家になったんです。今では冒険家として活動するスポンサー収入やテレビネット配信からの放映料の方が、工業団地ビジネスからの収入を上回っています。なので、私は自身の職業をいつも冒険家と述べています。


プリヤンカ: 冒険家でもあるんですね。ちなみに、今まで冒険された中で、どこが一番印象に残ていらっしゃいますか?


スニール: エベレストです。私が一番尊敬する冒険家は日本人登山家の三浦雄一郎さんですが、彼は70歳の時に初めてエベレストに登頂すると、その後、75歳、そして80歳の時にも登頂を成し遂げたんです。年齢と挑戦と限界は気持ち次第なんだと、多くのことを学ばせてもらいました。そして、そんな三浦さんに少しでも近付きたいと、エベレストを目指したのです。いざその山頂に立つと、私の身体から記憶がふっと離脱し、その場に滞留している三浦さんの記憶と一体化したような気分になりました。記憶は輪廻転生するものなんだと、その時私は確信したのです。


 - 記憶は輪廻転生する -


 その瞬間、私の左手でルビーの指輪が一瞬真紅の輝きを放った。


プリヤンカ: そうなんですか。素晴らしいご経験をされていますね。次に目指そうとされている場所はあるんですか?


スニール: マナスルです。マナスルは標高8,163m、世界第8位の山ですが、日本隊が1956年に初登頂に成功したことから、日本の山とも呼ばれています。私の工業団地には多くの日系企業に投資を頂き、今の自分があります。そんな日本と関連のある山を目指すことで、より日本人を知り、そして貢献できるんじゃないかと思うんです。


プリヤンカ: 素晴らしいお考えですね。でもくれぐれも気を付けて冒険なさってくださいよ。


スニール: ありがとうございます。


 すると、ここでスニールの隣で静かに話を聞いていたヴィンセントが口を開いたのです。


この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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