2023年6月16日(金) スニール・ララン ~前編~
6月16日(金)
昨日も飲みすぎてしまい、家に戻った頃には日付が変わっていた。
そして、未だに日本との時差に悩まされ、昼過ぎまで寝てしまった。
しかし、いつまでもダラダラしてはいられない。
だって、今月ほとんどユーチューブ配信できてないんですから。
この業界における視聴者の心移りは光よりも早く、継続的な投稿による視聴習慣を止切れさせると、あっという間にお気に入りを解除され、再開時の再生数が激しく落ちてしまう。
そして、それはこの業界から私という存在が消え去ることを意味する。
「消え去るのは私の過去の記憶だけで充分。さぁ、ちょっと気合入れて生配信でもやりますか」
バサッ
かけ布団を足で蹴飛ばし、今日の一日をキックオフする。
「とはいえ、今日の素材、どうしよっかな」
すると、その瞬間、私のスマホがワッツイットのメッセージ着信音を奏でたのです。
- 今晩、ホームパーティーするから、もしよかったら来ない -
送り主は、先日ひょんなことから知り合ったチェンナイの富豪スニール・ラランだった。
彼はインドで有名な冒険家でもあり、ユーチューブネタとしてぴったりじゃないの!
- ありがとうございます。喜んで参加させて頂きたいんですが、ユーチューブ撮影しても構いませんか? -
- もちろんだよ。プリヤンカの大好きなお酒と料理をたっぷり用意しておくからね -
☆
「み・な・さ・ん。こんにちは。輪廻転生もほどほどに~でお馴染み、異国のユーチューバーこと、プリヤンカです。今日はチェンナイの富豪でいらっしゃるスニール・ラランさんのホームパーティーにお招き頂いたので、その様子を生配信してゆきたいと思います!」
チェンナイの中心地ナンガンバッカムにある大通りから1本入ると、まるで姫路城!? と思ってしまうような白い大邸宅が突如として現れる。
それこそがスニールの自宅。
その玄関前からスマホの録画ボタンをオンにし、中へ入るところから撮影してゆく。
「ちょっと見てください。この建物。これ、マンションじゃなくて一軒家なんですよ。それでは早速中へ入って行きましょう」
すると、ウィンという音を立てながら、高さ3mはあるガラスの扉が左右に開いたのです。
「じ、自動ドアがある自宅って、私、始めて来たかも……」
玄関を抜けた先には50畳以上はあるリビングルームがあり、そこにあるソファーで、主人であるスニールとその知人ヴィンセントがウィスキーグラスを傾けながら既に談笑していた。
そのふたりとの絡む前に、まずはリビングルームを堪能させてもらう。
「みなさん、中に入ってきました~っていうか、見てください、この広々としたリビングルーム! こんなもの、普通は自宅にないですよね~」
と言いながら、200インチ以上はある巨大テレビ、ビリヤード台、エアホッケー台を画面に収めてゆく。
「それだけじゃなく、ここを開けると……」
リビングルームのこちらも大きなガラス扉を開けると、そこにはジャグジーが組み込まれたプールが綺麗に照明されていた。
「ここまでくると、プリヤンカ、言葉が出てきません……」
金持ちと平民の違いを思いっきり見せつけられていたら、スニールから救いの声が届いたのです。
「いやいや、お恥ずかしい。さぁ、プリヤンカもどうぞこちらへ来て、一緒に乾杯しましょう」
「ありがとうございます」
ここでスマホを三脚にセットし、ソファーでの対談撮影へ入る。
この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。




