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カレーは醤油 ~インドの記憶~   作者: そらら
醤油はカレー

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1888/1899

2023年6月14日(水) こんな流れで良いんでしょ? ~前編~

6月14日(水)


 ようやく戻って来たチェンナイの我が家。


 思えば、私がチェンナイに住む義理なんてどこにもないはずなのに、それでも気持ちがホッとするのは、この世に存在する生命のDNAには帰巣本能が刻まれているからなのだろう。


 日本で知り得た私の謎に関するヒントをインドでも得るべく、視聴者にとって関心の高いユーチューブを配信し、寄せられたコメント欄へ今まで以上に注意を払ってゆこう。


 しかし、時差ボケと生理はとっても似ており、2日目がとっても辛い。


 なので、結局チェンナイの自宅に戻ってからもずっとベッドで横になってしまい、気が付けば夜の18時。


 このまま続けて寝てしまおうとも思ったが、その瞬間、私が買ってきたお土産のことを思い出した。


「ここに戻ったからには、やっぱりこの人たちに会わないとね」


 そこでガンガーを呼び、取り敢えずバー、世界の果てに向かうことに。


 すると、彼らは常連だから当たり前なのかもしれないが、酔っぱらったシゲと友美がカウンターでバーテンダーのシンシアリーに半ば絡みながら陽気に酒を飲んでいたのです。


「வணக்கம் (こんばんは)」


「「プリヤンカ!!」」


 驚くふたりの様子がとても嬉しかったけど、逆に私が驚かされることがあったんです。


 だって、チェンナイ空港で別れたはずの杏奈が、トイレからすっと戻って来て、シゲの右隣に座ったんですから。


「あらー、プリヤンカじゃん。あんた、この店知ってるんだ。っていうか、シゲと友美のことも知ってるの?」


「杏奈! それ、あたしのセリフよ。シゲと友美とはここで何度も一緒に飲んでるし、一緒に旅行する仲なんだよ」


「そうだったの。じゃあ、仲間がひとり増えたってことで」


 と言いながら、私たちは4人でカチンとグラスを合わせた。


「シゲとはもう何年になるか分からないけど、ずっとチェンナイでバンド組んでるのよ。シゲはギターで私はベース。元々学生時代からずっとベースやってて、チェンナイに来てから暇潰しでまたやりたいなって思ってたけど、私ってサウスポーだから、サウスポー用のベースが見つけられず楽器店をずっとウロチョロしてたら、ギターがすっごい上手い日本人と遭遇してね。それがシゲだったの。そしたらシゲが知り合いのインド人に折衝して、私に特製ベースを作ってくれたの。も~感動もの。しかも、お互い酒が好きだし、お互いヘビメタ好きということもあり、それなら一緒にバンドやろうってなったの」


 すると、酔いが回った友美が私の首に腕を絡ませながら、耳元で文句を始めたのです。


「ちょっと、プリヤンカ! ひょっとしてあたしがいるのに、杏奈に浮気しようとしてんじゃないの! あんたがインドにいなかった間、あたしがどんだけ寂しい思いをしたのか、分からないの? ヒック。もう、友美、悲しいったらありゃしない」


 これ以上友美が暴走すればエロな展開が避けられないので、私はそっと友美の腕を解き、日本から持参したお土産を渡すことにした。


「はいはい、友美ちゃん。さみしかったんでちゅか。でも、もうだいじょうぶちゅよ~。はい。これお土産。東京葛飾は柴又の名物、草団子よ」


「キャー嬉しい」


 またまた抱き着かれてしまったので、再び腕を解き、椅子に座らせて落ち着かせる。


「それと、シゲにはこれ。湯飲みだけど、絶対にこれで酒を飲むでしょ?」


 と言いながら、寅さんのキャラクターが施された湯飲みを渡す。


「プリヤンカのセンスは抜群だな~。まじでこれ、焼酎とか日本酒とかにぴったりだわ」


「ふふふ。そう喜ぶと思った。でね、杏奈にはインドで出会ったばかりだからなにも用意してなくて申し訳ないんだけど、実はシンシアリーにもお土産あるの」


 カチャカチャ音を立てる紙袋ごとシンシアリーに渡すと、彼は興味深そうに手を入れ、まず最初のお土産を掴んだ。


「これ、商売繁盛のお守りじゃないですか? しかも、柴又帝釈天の!」


 すると、怪しげなオーラを放ち、私にしか聞こえない声でささやいたのです。


 - インドラは、元気にしておったか? -


「え?」


「いや~本当にありがとうございます」


 シンシアリー。


 絶対に今、なにかの特殊能力を使ったに違いない。


 彼も細かく調べ上げないとダメな人物ね。 


「シンシアリー。もっと他のが袋の中に入ってるから、それも見てみてよ」


 私の言う通りに彼が再び袋の中に手を入れると、おぉと感歎の声を上げながら複数の醤油ボトルをカウンターに並べた。


 これは、さち江さんからお土産にもらったカレーにベストマッチするカレー専用醤油の詰め合わせ。


 カレーに合うくらいなら、カクテルに使っても美味しいんじゃないかと思ったの。


 私の好きなカクテルにすれば、抵抗感なく醤油を頂けるんじゃないかって。


 シンシアリーはじっくりとボトルを1つずつ手に取り、そしてラベルから原材料に至るまでじっくりと観察した。


「プリヤンカ様。これらは本当に素晴らしい醤油の数々ですね。ところで、みなさんもご承知だと思いますが、バー最果ての地とは、仲間を求める者が出会い、そして別れる場所。本日、シゲ様、友美様、プリヤンカ様のパーティーに杏奈様が加わり、これで1パーティの上限である4名となりました。今後、新たな仲間をパーティーに加えたい場合、ここを訪れ、4人の中から誰かとここで別れる必要があります。ただ、別れたたとしても原則このお店に来れば再び仲間にできますので、そんなに神経質になる必要はないと思います。それじゃ、今日はみなさんの出会いを祝うべく、頂いたこの醤油を使ってオリジナルカクテルをみなさんに振舞いたいと思います」


 - こんな流れで良いんでしょ? -


 そう語っているようなシンシアリーの視線が、なんだかちょっと不気味だった。


この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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