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カレーは醤油 ~インドの記憶~   作者: そらら
醤油はカレー

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1885/1899

2023年6月11日(日) 日本は感謝の国

6月11日(日)


 今日の日本は昨日と打って変わって朝から雨が降っている。


 そして6月にしては肌寒く、気温は14℃しかない。


 荷物とお土産、それにたくさんの思い出がでパンパンになったスーツケースをコロコロ転がしながら柴又駅まで行くは大変でしょと、さち江さんのアドバイス(いや、指示?)で、寅吉さんが駅までスーツケースを運んでくれた。


「本当にみなさんにはお世話になりました」


「なに言ってんだよ。はやし家はプリヤンカの実家なんだし、うちらはプリヤンカの家族だよ。いつでもここに戻っておいで」


 そんな言葉を聞くと、思わずグッときてしまう。


「プリヤンカ。寂しくなる気持ちも分かるけど、インドはそんな甘っちょろくないんでしょ? ほら、泣かずに前を見て!」


 ちょうどそのタイミングで成田空港へと向かう電車が到着してしまった。


 私は涙を手で拭い、口をくっと結びながら、寅吉さんに頭を下げた。


 日本で過ごしたのはたった10日間弱でしかないのに、あっという間の濃密な時間を過ごすことができた。


 そして、日本は感謝の国であると、あらためて痛感した。


 さち江さん、寅吉さん、それに綾子さんや俊介、麗子だって、なにかある毎に「ありがとう」とみんな口にしていた。


 ヒンディ語にもधन्यवाद(ダンニャワード)というありがとうを意味する単語は当然ながら存在するが、本当にここぞという時には使わないとの注釈がある。


「お互いが感謝することが、実は相手を一番受け入れるってことなんだと思う」


 車窓に広がる雨の景色とは裏腹に、私の心はとても晴々していた。


 成田空港は思ったより空いており、あっという間にフライトの搭乗口まで辿り着いてしまった。


 すると、ここ数日、一切見かけることのないインド人がたくさんいて、そして激しく騒いでいた。


 他人の気持ちなんか完全無視し、自分のペースで生きるインド人。


 相手の気持ちを一番に尊重し、相手のペースで生きる日本人。


 こんなにまで対照的な感覚を持った人種はこの地球上いないと思うし、身体はインド人だけど国籍や考え方が日本人の私は、一体何者になるのだろう。


 定刻通りにフライトはデリーに向かって出発した。


 機内で最近世界中で流行っているというボリウッド映画「RRR」を鑑賞し、放映時間が長いインド映画には途中で休憩時間があることを初めて知った。


 そして、改めて今回の日本滞在を通じ、自分の謎に関して得たヒントを以下の通り纏めてみた。


・柴又帝釈天に鎮座する帝釈天とは雷の使いインドラ神


・インドラの世界をボートで漂流した記憶のない女性とは、私のこと


・私はなにかを撫でるのが世界一上手らしく、この技術に魅了されたインドラ神が、私を北センチネル島から柴又まで呼び寄せた


・インドラ神はインドラネットを使い、人々の記憶を書き換えることができるが、その事実を本人に伝えると効果がなくなる


・インドラの世界とは、宇宙と現実と輪廻の狭間


・自分の声に登場する男性の名前が祐介に決まった。


 でも、今だ、私が一体何者であるかは分からないし、そもそも狂気の男やルピーの指輪がなんなのか分かっていない。


 そして、自分の声の中に登場する祐介と呼ばれることになったあの男は、綾子さんのご主人の祐介さんなのか。


 だとすれば、祐介さんの現在、未来はどうなるのか。


 はたまた、私がなんでボートに乗っていたかも。


 これらに関するヒントは自分の声の中潜んでいる確率が高いと思と、早く聞きたくて仕方ない。


 それに、狂気の男にも、私が得たヒントを元にもっと色々聞き出したい。


 しかし、そんな私の不安や期待なんか1㎜も感じることなく、到着したインドはカオスという濁流の中で多くの人々を困惑させ、そしてインド自身もその濁流に飲み込まれているようだった。

 

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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