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カレーは醤油 ~インドの記憶~   作者: そらら
醤油はカレー

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1883/1899

2023年6月9日(金) しょーゆー日もたまにはあるでしょう

6月9日(金)


 今回の日本滞在における最大の目標は私の謎に関するヒントを見つけるものであるが、それ以外にもやろうとしていたことが幾つかある。


 でも、私に残された時間はあまりない。

 

 そこで今日はそれらを徹底的にすることにした。


 まず向かったのは柴又駅から京成線で隣の金町駅前にある美容院シエルナ。


 インドでもそれなりに美容院はあるけど、どうしてもカットの方法がインド風になるのよね。


 当たり前といえば当たり前だし、身体はもちろん髪質もインド人の私にはそっちの方が合ってるかもしれないけど、私が好むナチュラル仕上げじゃなく、いっつもボリウッド風のモリモリヘアーになっちゃうから。


 でも、美容院って結構時間がかかるのよね。


 朝一番で予約したのに、カットやトリートメントが終わった頃にはすっかりランチタイムになっていた。


 そこで、私が本日やろうとしていたことの2つ目に取りかかることにする。


 それは「ちゃん系ラーメン」を食べること。


 以前ユーチューブ生配信を見た視聴者の方から「日本で最近流行ってるちゃん系ラーメンって、インドで流行ると思いますか?」という質問を寄せられたんだけど、私にはちゃん系ラーメンがまるでなんのことか分からなかったの。


 ネットで調べてみても、こういうのって百聞は一見に如かずっていうか、百聞は一口に如かずでしょ。


 もちろんインドには存在しないので、日本で絶対に食べてやろうと思ってたのです。


 金町駅前を物色すると、目下大流行中ということもあり、直ぐに福ちゃんラーメンなるお店を発見。


 早速お店の名前にもなっている福ちゃんラーメンをオーダーすると、その美味しさは私の予想を遥かに上回るものだったんです。


 せっかくなので、店主に許可を頂き、食レポの様子だけをスマホで撮影させて頂きました。


「まずはスープからいただきますね。鶏ガラや豚清湯をベースにした醤油スープは、すっきりとした味わいなのに奥行きがあって、まるで昭和の町中華を思い出させるような懐かしさが広がります。続いて麺。中太の平打ち麺は多加水で、口に運ぶとツルツルとした喉ごしともちもちの食感が楽しいんです。スープとの絡みも抜群で、思わず箸が止まらなくなります。具材は豪快なチャーシューに、山盛りのもやし、そして刻みネギ。見た目のボリューム感に思わず笑顔になってしまいますね。お店の雰囲気もポイント。赤い看板に白いゴシック体の文字、どこかレトロで親しみやすい空気感が漂っていて、まさに『町中華リバイバル』といった感じ。そして忘れてはいけないのが食べ方。こちらのラーメンはライスとの相性が最高! スープをご飯にかけて食べれば、もう至福の一杯。満腹感もばっちりで、心もお腹も満たされます」


 最後に私がやろうとしていたことは、柴又帝釈天の参道にある売店でインド向けのお土産を買うこと。


 でも、いざ買おうとすると、意外と迷うものなんです。


 そしてさんざん迷った挙句、シゲには寅さんのキャラクターが施された湯飲み、友美には真空パックされて日持ちする草団子を購入。


 バー最果ての地のバーテンダー、シンシアリーには日本らしくお守りにしようと、柴又帝釈天へ向かった。


「予定通り商売繁盛のお守りを買えたし、ついでに帝釈天へちょっと挨拶してゆこうかな」


 その時だった。


 突然、明らかに私が嫌いな臭いが辺りに充満したのです。


 それは、醤油の臭いで、しかも、とびっきりピュアに仕立てたものと直ぐに分かるものだった。


 あまりに強烈すぎて意識が朦朧とする中、ブランド品のバックを提げ、白い上下のスーツに白のシルクハットを身に纏った女が、フフフと笑いながら私の隣を横切ったのです。


 フフフと口では笑っているのに、私を睨みつけるその目は、嫌悪感に満ちていた……



「亨貞院日敬。こんばんわ。インドに戻る前、ひょっとすると帝釈天に来れるのが最後かと思うので、お参りに来ました」


「あ、あぁ! プリヤンカか……」


 しかし、亨貞院日敬はなぜかとてもビクビクしている様子だった。


「あれ、帝釈天の像は?」


 だって、本殿の中央に鎮座するべき帝釈天の像が見当たらないんです。


「ん? あぁ、あれ、ね。あ、今、ちょっと修復する箇所があって、木彫修復士の所へ預けてあるんだ。ちょっと時間がかかるようなこと、言ってたかな~。あ、今日はこれから檀家の所で説法をしなくてはならんのじゃ。インドでも達者にするんじゃぞ。それじゃな」


 すると私からまるで逃げるように行ってしまった。


「なんなんだろ……まぁ、修理してるんじゃしょうがないか。じゃあ、また今度会った時に、いっぱいなーでなーでしてあげるからね。それまで、じゃあね。僕っち」



 はやし家に戻ると、さち江さんが私にお土産を買ったんだよと嬉しそうに紙袋を差し出してくれた。


 中を覗いてみると、かなり強烈なものが入っていた。


・浜本醤油 カレーに賭ける醤油

・みやもと醤油 カレーにかけルゥ?

・重田醤油 カレーが好きになる醤油

・新丸本家 洋食屋さんがよぅショックを受けるほど美味いカレー醤油

・ヒゲダン醤油 辛ぇカレーを華麗にする醤


 これらは以前、さち江さんからアドバイスされたカレーにベストマッチするカレー専用醤油の詰め合わせである。


「プリヤンカが少しでも醤油好きになればと思ってね」


 今日はとっても醤油塗れの一日となってしまった。


 でも、しょーゆー日もたまにはあるでしょう。


 だって、ここは日本なんですから。


この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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