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カレーは醤油 ~インドの記憶~   作者: そらら
醤油はカレー

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1882/1899

2023年6月8日(木) インド人を日本料理で お・も・て・な・し

6月8日(木)


「み・な・さ・ん。こんにちは。輪廻転生もほどほどに~でお馴染み、異国のユーチューバーこと、プリヤンカです」


 先週の土曜日に日本へ戻ってから迎える6日目の朝。


 私の謎に関するヒントがこれまで衝撃的なほど見つかっており、ある程度は日本に戻って来た目的を達成したといえる。


 でも、忘れてはいけない。


 そう。


 私はユーチューバー。


 配信をし続けなければ私はあっという間に世の中から忘れ去られるし、それによって、私に関する重要な情報を握っているであろう狂気の男が、へそを曲げ、口を一切閉ざしてしまう可能だってある。


 だから、今日は日本から生配信をすることにしたんです。


「ちょっとご無沙汰しちゃってますが、実は、今、プリヤンカは日本に戻ってるんです! といっても、ずっといるわけではなく、あと数日だけなんですけど」


 ここで視線をサブカメラへと移す。


 今日話すネタは、食文化に関するもの。


 これは以前調べた通り、日本人がインドについてユーチューブで関心を寄せるテーマの1つでもある。


 最近、私の新規登録者数も伸び悩んでいることもあり、視聴者にちょっとは迎合しようと画策したのです。


「そんな日本からお届けする今日のテーマは『インド人を日本料理で お・も・て・な・し』です。インドで生活をして5ヶ月ほど経ちますが、なにが大変って、それは間違いなく食事。とにかく面倒くさいっ! べジだ、ノンべジだ、はたまたジェインフードだと、性格的にテキトーなインド人が、なぜか食事に関しては世界トップレベルのややこしさを発揮します。中でも牛肉を食べない、いや食べられないってことは、本当に信じられない習慣。で、プリヤンカ、思ったんです。四の五の言わずに、なんでも喰えよ! って。そこで、世界でもトップクラスを誇る多様性溢れる日本の食文化でインド人を『お・も・て・な・し』したら、はたしてどれだけ喜んでくれるのか、今日はみなさんと一緒に検証してみようと思います!」


 ここで一旦カメラを止め、料理を並べたテーブルへと移動する。


 もちろんそれらの料理は、今朝さち江さん(正確に言えば、さち江さんから指示を受けた寅吉さん)に無理をお願いして作ってもらったもの。


 しかも、せっかくだからね~ってことで、味付けは全てカレー味にしてくれたんです。


 ふふふ。


「はい。まずですが、意外と思うかもしれないけど、ラーメンはあんまり喜ばれません。これはカレーラーメンなんですけど、味わい云々ではなく、そもそもラーメンのだしがなんだか分からない、というのが最大の理由なんです。そうだな~私はやったことないけど、闇鍋的な感覚なんでしょうね。あー、こんなに美味しいのに。ズルズル」


 繁盛店の味わいを彷彿させるカレーラーメンを啜ると、なぜカレーに合わせる麺はうどん、そば、ラーメンの順位になるのか不思議でならなかった。


「続いてはこちらのお刺身ですが、おそらくインド人は箸を持つことはないでしょう。インド人は食材になにも手を加えずに口にすることは野蛮なことと考えるので、切っただけの魚介を口にするなんて、非人間の行為と考えます。しかも、魚介に限らず、馬や鯨、それに新鮮であれば鶏や牛も刺身で食べちゃいます。これはもはや野蛮なんかじゃなく、化け物の域になるのです。信じられませんよね~」


 と言いながら刺身盛り合わせをズームし、その中から寅吉さん自慢の朝獲れ鱸の切り身を頂く。


 もちろん合わせるのはカレー。


 すると、鱸の生臭さが逆にスパイスによってベストの方向へ化学反応を示すのだから面白い。


「さて、それでは最後にラスボスとして、インド人が恐怖に身を震わせるものを紹介したいと思います。それは、満票一致ですき焼きです! すき焼きなんか日本人にはご馳走の塊でしかないし、晴れの日に食べたり、大切な方をもてなす際に欠かせないものですが、インド人にとっては神である牛を食べること自体が許されないのに、それをヘビしか食べない生の卵に浸して食べるのです。禁忌と禁忌が重なる究極のすき焼きは、ある意味いかなるインド人をも寄せ付けない魔除け的な存在のなのかもしれません。もしインド人が将来日本に大挙して迷惑行為をするようなことがあれば、インド料理店ではお通しにすき焼きを提供しなくてはならないというルールを作ることで、簡単に事態解決を図れると思いますよ。でも、そんなことしたら逆上したインド人が、日本料理店のある醤油を全てカレーに変えちゃうかもしれませんね。プリヤンカはそんな世界も好きですけど」


 ここで視線をメインカメラに戻す。


「今日は食文化に関してお伝えしましたが、みなさん喜んでいただけたでしょうか? もし、いいなって思ったら、ちゃんと良いねボタンを押してね~。それじゃ、輪廻転生もほどほどに~」


この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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