2023年6月1日(木) 本当のガネーシャ ~後編~
6月1日(木)
「み・な・さ・ん。こんにちは。輪廻転生もほどほどに~でお馴染み、異国のユーチューバーこと、プリヤンカです。昨日お約束した通り、今日もチェンナイが誇るガネーシャ像の専門店グッドアンティーク・アンド・アートショップから、店長のサントシュさんと引き続き一緒に生配信をしたいと思います」
プリヤンカ: それにしても大変でしたよね~これだけのガネーシャ像を見つけてくるの。
とコメントしながら、ふたりの目の前に並ぶ50数体のガネーシャ像をスマホで映す。
大きさや形状がまちまちのガネーシャ像を目の当たりにすると、こんなにも色々な種類があるのだと驚かされるし、なんだか見てるだけでご利益がある気がしてくる。
サントシュ: ちゃんと整理して店頭に並べておけばよかったと反省してますよ。でも、私はインド人なんで、そこのところは許してください。では昨日の続きになりますが、ガネーシャが「信仰目的」「大きさ」「素材」「姿勢」「持ち物」「腕の数」によってどのように違うのかを細かく説明してゆきたいと思います。まずは、分かり易い「大きさ」から。
事前に打ち合わせた通り、サントシュのコメントに合わせて、該当するガネーシャを私がスマホで撮影してゆく。
サントシュ: 御覧の通り、観光客向けの小型像、家庭用の中型像、祭壇用の大型像というように、大きく3つのジャンルに分かれます。「素材」も多岐に渡り、大理石、木、金属、水晶などが主に用いられます。これは像の値段に大きく影響し、中でもビャクダンの木を使ったものが最高級とされています。
プリヤンカ: 大理石が一番高級じゃないんですか?
サントシュ: 違うんです。日本だと大理石は高級なイメージがあるかもしれませんが、インドではそこら中で採掘できるので、コンクリートみたいな感じに近いんですよ。
プリヤンカ: へぇー知りませんでした。
サントシュ: どんどんいきますよ。次に、「姿勢」「持ち物」「腕の数」を同時に見てゆきましょう。「姿勢」には座像、立像、踊る姿などがありますし、「持ち物」も斧、縄、蓮、甘い団子モーダカを持つものなど、本当に多岐に渡ります。そして「腕の数」は先ほどの「持ち物」とも連動するのですが、通常は4本なのに、多くのものを持たせようとして腕の数がもっと多いものもあるんです。ほら、これなんか、腕が10本もあるでしょ?
そのガネーシャ像をアップすると、視聴者から「そんなガネーシャ、日本じゃみたことないよ」「これをゲームのキャラで使ったら、最強なんじゃね?」など、一気にコメントが寄せられた。
サントシュ: そして一番重要なのが「信仰目的」です。実は、ガネーシャはその目的に伴って呼称が変化するんです。障害を除く神として新しいことを始める前に祈る場合はヴィナーヤカ、シヴァ神の息子、群衆の主という意味を強調したいときにはガナパティ、折れた牙は犠牲と知恵の象徴であると敬意を表する場合はエーカダンタ。そして日本でもあるように富と繁栄をもたらす神としてはマハーガナパティ、これに似てますが、黄色に彩られ、幸運と繁栄を象徴する神となるとハーラドハラガナパティ、成功を授ける神となるとシッディヴィナーヤカになります。
プリヤンカ: ガネーシャの名前が変わるなんて、初めて知りました!
サントシュ: そうなんですよ。なので、これまで見てきた6つの要素を組み合わせると、その数は数万にも及び、ここにある8,000体なんかそのごく一部でしかないんですよ。
プリヤンカ: まさに圧巻です! ガネーシャもこんなに奥深いとは思いませんでした。でも、なんでこんなに色んな種類が出来ちゃったんですか?
サントシュ: それは、ヒンズー教が寛容で、文献通りのことだけを信じる必要なんてなく、自分が理想とする神を想像し、それを信仰しても良いからです。この結果として、インド人は自由に発想し、己が思うままに行動するようになったんだと思いますよ。でも、その背景に宗教的なものがあるとすれば、ちょっとは許せる気になったんじゃないですか?
プリヤンカ: まさに! でも、もう少し周囲の空気を読んでほしいですけどね。サントシュさん、昨日今日と連日に渡り、本当にありがとうございました。また機会があれば、私のユーチューブに出演してくださいね。
サントシュ: もちろん。
「ここまで見てくれて、みんなありがとう! いいなって思ったら、ちゃんと良いねボタンを押すんだぞ~。तो फिर, पुनर्जन्म भी ज़्यादा नहीं~ あ。これ、トー フィル プナルジャンマ ビー ジャーダー ナヒーン~ って発音するの。意味は、お決まりのフレーズだから、みんな分かるよね! じゃあ」
2日間に渡る生配信は想像以上の反響を受け、結果的に再生回数500万を突破した。
そして、多くの新規登録者ならびにコメントが寄せられた。その中に、私の言葉に関するヒントがあることを祈りつつ、祝杯を挙げるためにバー最果ての地へと向かうのでした。
この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。




