星冠章
クラスで顔合わせの前に客室にて待つ間に、客室に行くまでに何人のもひそひそ声で話された。
「見ろよ、あれ星冠章だぜ」
「ってことは覚醒者か、あの顔、自分が恵まれてるって自覚してるぞ」
そう言われて話してる方を見ると怪訝そうな顔をして、去って行く。これが何回も続いて少し気分が悪い。
これから行くクラスもそうなのだろうか?
星冠章は覚醒者だと言う証だった。
覚醒者は十年に一人生まれるかどうかの確率で力を手にする。
だが覚醒者は見つかれば天議会の管理で天煌騎士か紋術師になるか選ばされる、ただこれは逃げることは許されない、俺は久遠さんに見つけてもらったから選択する余地を与えてくれたが、普通は昔から覚醒者になると学生とか社会人に関わりなく強制的に天煌騎士か紋術師の道を選ばされる、そのため昔からこの皇星学園に覚醒者は入るが、その道を選んでいく子は小さい頃から厳しい修行をするので、その期間がない覚醒者は死亡率がとても高い、そして此処に入学したり仕事で共にする人に覚醒者だと言うと、修行をしないで力を手に入れられた運が良い奴か、これから死ぬ確率が高い可哀想な奴と言うレッテルを張られて無下にされる。俺もこの一年で何度も同じ扱いを受けた。
「霧崎君、行こうか」
客室に柳先生が入って来て声をかけてくれる。
「はい」
立ち上がって柳先生の後に着いて行く。
「霧崎君のことを嫌な顔して話す人も居るだろうけど、今から行くクラスにはそんな子は居ないから安心してね」
「自分はあまり気にしませんので」
「そう、なら良いけど」
そして二階にある教室に向かい、先に柳先生が入り声が聞こえる。
「はい、ホームルームを始めますよ、それに今日はC組に転校生が居ますのでお楽しみに」
そう言うとクラスの中では歓声があがった。
期待に添えないと分かってはいたので、あまり気にしない。
「霧崎君、入って」
そう言われてドアを開ける。そしたら俺の右腕の所に銀色の星冠章が目に入って静かになる。
「始めまして、霧崎黎夜です。よろしくお願いします」
反応は意外なものだった。
一人また一人とぱちぱちと拍手が始まる。
顔つきも俺を悲観する顔する奴も馬鹿にする顔する奴は誰も居なかった。
「じゃあ霧崎君は一番後ろの窓側の席に座ってね」
「はい」
俺は指定された席に向かって歩き椅子に座る。
そうすると前の席に座ってる男の子が振り返った。
「俺は如月雅人、雅人って呼んでくれ。よろしくな、黎夜」
「よろしく、雅人」
「私は横倉雅美、私も雅美って呼んで。よろしくね」
隣の席の女の子にも挨拶をされた。
「ああ、よろしく」
こうしてホームルームが終わり授業が始まる前に俺の席に複数人がきて挨拶をしてくれて、クラスメイトは星冠章の見ても気にせず挨拶をしてくれて優しい人ばかりだった。
一時間目。
世界史。
ただし普通の世界史ではない。
影喰災害史。
数百年前から続く影喰との戦いの歴史を学ぶ授業だった。
教師が黒板へ年表を書く。
「三百年前に発生した東欧影喰災害について説明できる者」
数名が手を挙げる。
黎夜は窓の外を見る。
退屈だった。
その事件は実際に現地へ行ったことがある。
教師の話より詳しく知っている。
「霧崎」
突然指名された。
教室の視線が集まる。
「答えてみろ」
「東欧北部で発生した大規模侵食現象です」
教師が頷く。
黎夜は続けた。
「影爵級が二体出現。監星局支部が壊滅。最終的に騎士団六名と紋術師十一名が戦死して鎮圧されました」
教室が静かになる。
教師が目を丸くした。
「……よく知っているな」
「資料で」
適当に誤魔化した。
実際はその戦場にいた。
もちろん言えない。
◇
二時間目。
霊子理論。
覚醒者と一般生徒が混じる基礎授業だった。
教師は霊子循環について説明している。
だが黎夜は途中で気付く。
(この理論、古いな)
久遠零山から教わった内容の方が遥かに実践的だった。
教師が質問する。
「霊子を安定させる方法は?」
何人かが答える。
どれも教科書通り。
教師が頷いた。
「他にあるか」
黎夜が手を挙げる。
「呼吸です」
「呼吸?」
「霊子循環と呼吸を同期させると効率が上がります」
教師が一瞬止まる。
教室も静かになる。
「……それは上級技術だ」
「そうなんですか」
黎夜は本気で知らなかった。
久遠から最初に叩き込まれた内容だったからだ。
周囲から驚いたような視線が向けられる。
◇
三時間目。
体術理論。
ここでようやく少し面白くなる。
教師は元天煌騎士だった。
身体には無数の傷跡。
一目で分かる実戦経験者。
「戦場で最も大切なのは何だ」
誰も答えない。
教師が笑う。
「才能ではない」
「力でもない」
「生き残ることだ」
その言葉に黎夜は少しだけ目を細めた。
魔界。
影爵。
世界各地の戦場。
何度も死にかけた記憶が蘇る。
教師は続ける。
「生きて帰った者だけが次の戦いへ進める」
その言葉だけは本物だった。
黎夜は初めてその授業に興味を持った。
◇
気付けば午前の授業が終わっていた。
チャイムが鳴る。
昼休み。
途端に教室が騒がしくなる。
「なあ霧崎!」
「転校生!」
「お前どこの出身なんだ?」
「星冠章持ちってことは覚醒者だろ?」
次々と人が集まってくる。
黎夜は少しだけため息をついた。
(……静かに過ごしたかったんだがな)
だが皇星学園での生活は、まだ始まったばかりだった。




