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妖精の国の姫、氷の国へ留学する  作者: 紙絵
第一部

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9/23

9

 エイラとカイルは食堂の入り口にいた。

 食堂は夕飯時の混雑のピークは過ぎ、人はまばらだ。

「やっときましたね!」

 エイラがオーレリアを見つけて微笑む。

「待っててくれたんですか?」

 オーレリアは驚いた。今までそんなことされた事がない。

「えぇ。一緒に食べようと思って……レックス様もご一緒にどうですか?」

「エイラ様とご一緒なんて、お邪魔じゃなければ」

 レックスが王子っぽい話し方をしている。

 エイラとは王子と王女の関係らしい。

「オーレリア様はレックス様と仲が良いんですね!」

 カイルが屈託なく笑う。

「いや、まあ、成り行きというか……」

 仲は良い訳じゃないが、悪い訳でもない。

「鍵閉めなきゃいけないのに、オーレリアが温室から出たがらないから大変だったんだ!」

 レックスがカイルに説明している。この二人は顔見知りらしい。

 オーレリアは静かに観察する。

「オーレリア様を呼び捨てに……」

 エイラが何かぶつぶつ言っている。

「エイラ様、遅くなって申し訳ございません。参りましょう? 私お腹ペコペコで!」

 オーレリアがエイラの手をとって進む。

「お腹ペコペコって!」

 レックスがまた笑いを我慢しながら、後ろからカイルと着いてきた。


 四人でテーブルを囲む。

「レックス様従者は?」

 カイルが辺りを見廻す。

「それが初日に風邪ひいて、ずっと部屋で休んでるんだ」


 それは従者失格では?


「そんな、大丈夫なのですか?」

 エイラが心配している。この心配は従者ではなく、レックスへの心配である。

 それはそうだ。ないと思うが、王族を襲おうとする輩もいないとは言い切れない。

「大丈夫です。従者も念の為ですし。自分の身は自分で守ります」

 とても美しい言葉遣いである。

「そうですか。まあ、学園内は安心でしょう」

 エイラが頷く横で、オーレリアは料理に夢中である。


 やはりここの料理は美味しい。

 今日はハンバーグだ! このジューシーな肉汁、付け合わせのポテトもホクホクである。

 そして焼き立てのパン!


「オーレリア様は美味しそうに食べますね! 見ているだけで幸せになります」

 カイルが斜め前から、こちらを見て微笑んでいる。

「え? そんなことは……!」

 誰かと話しながら食べる事を、ほとんどしてこなかったオーレリアである。見られていたと思うと居心地が悪い。

「カイル、女性の食事をそんなに見つめるものではないわよ」

 エイラが嗜める。

「すみません! ただ、あまりに美味しそうだったもので」

 飼い主に怒られた子犬さながら、またカイルがしゅんとする。

「オーレリアは確かに美味しそうに食べるな。カイルが目を離せなくなるのも分かる」

 レックスまでそんな事を言っている。

 オーレリアはレックスを睨む。

「ふっ。そんな顔をするな」


「……ズルいですわ!」

 エイラが突然、レックスを睨む。

「どっどうしました、エイラ様?」

 カイルが驚いている。

「オーレリア様は私のお友達なのに、呼び捨てにするなんて!」

 レックスはポカンである。

 オーレリアは隣で怒るエイラを見つめる。


「エイラ様も、その、呼び捨てにすればいいのでは?」

 カイルが最もな事を言う。

「え! そんな……いっいいのでしょうか?」

 大きな目がコチラを向いている。

 なんだかとても可愛い生き物である。

「はい! 喜んで!」

 オーレリアはまたプロポーズを受けるような返事をしてしまう。

 目の前でレックスが吹き出していた。


 女子寮の前で、エイラが決心したのか話し出す。

「オ、オーレリア! あなたも私を呼び捨てにするのよ!」

 とても辿々しい。恥ずかしいのかエイラは顔が赤い。

「分かりました」

「タメ口よ!」

「わっ分かった!」

「よろしい。じゃあおやすみ、オーレリア!」

「おやすみ、エイラ」

 二人は手を振って別れた。

 友達ってこんな感じなんだなぁと、心が温かくなるオーレリアだった。

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