〜回想 レックス〜
回想です。
父上は国王として尊敬している。
しかし、一つだけ不満がある。
母様の事だ。
氷の国は一夫多妻制度であり、夫が望めば、妻は何人いても問題ない。
しかし、隣国の太陽の国は、夫と妻は一人ずつである。
母様はそんな常識の中、氷の国へ第二王妃として嫁いだ。氷の国のバランスを保つ為の、政略結婚である。
レックスは氷の国だと珍しい、赤髪だ。
母様も赤い髪の毛だった。
学校へ通い出すと、皆と違うことがよく分かった。いじめられる事はなかったが、裏で悪口を言われる事はあった。
赤髪のこと、母様が太陽の国の出身のこと。レックスは、そんな事で悪口を言う奴らを無視していたし、気にもならなかった。自分には母も父も、義兄、義妹もいる。
しかし、母は耐えられなかった。
母はこの国の長くて寒い冬、親しい者が近くにいない事に苦しんでいた。レックスだけじゃ足りなかった。
日に日に塞ぎ込む母様を、レックスも父上も見ていられなかった。
しばらくして、母様は太陽の国へ帰ることになった。レックスは第一王妃の養子になった。
母様はレックスに「ごめんね」と言って去った。その時からだろうか? レックスは何事も他人事のように、一歩下がって物事を見るようになった。
父や義兄妹達とも距離を取った。義兄は自分からぐいぐい近付いてきたが。
それから十年。
魔法学園に通い始めたレックス。
そこで出会ったのがオーレリアだった。
他国から留学してきた彼女は、従者も連れず、一人で立っていた。臆する事もなく、自然体のまま。
すごい能力を持っているのに、見せびらかす事もせず、噂話をされても気にしている様子はない。
かっこいい。
そう思った。
何かと気になって、気付くと目で追っていた。親しくなるにつれ、レックスはよく笑うようになった。
そして、彼女に隣にいてほしいと強く思うようになった。
目が覚める。
桜の花が見える。
そうだ! オーレリアの膝枕で寝てたんだ!
「ごめん、重かったよね」
隣にオーレリアがいた。彼女も寝ている。
そんな無防備な姿に、自分を信頼してくれているようで少し嬉しくなる。
ずっと一緒にいたい……
そう思うと同時に、自分のもとから去った母を思い出してしまい、不安が顔を覗かせる。
彼女の寝顔を愛おしく見つめるレックス。そっと頬にキスする。
オーレリアは、変わらず気持ちよさそうに寝ている。
「オーレリア、そろそろ起きて?」
肩を叩いて起こす。
こんな毎日が続くようにと、心から願うレックスだった。
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