17
レックスは昨日の事を思い出していた。
焦ったかもしれない。
オーレリアと、今日はまだ顔を合わせていない。あの後、星を見たのか、見てないのか? よく分からないうちに解散した。
オーレリア驚いてた……きっと警戒される。
好きになってほしいのに、嫌われたらどうしよう!
頭を抱えながら、城の外を歩く。何やら声がする。
「ルビー様も乗ってみますか?」
「いいんですか! わぁ、意外と高い!」
「ワン!」
栽培室から黒いものが出てきた。
「魔犬?」
魔犬がレックスを見つけた。そしてこっちに走って来る。
「わわわ! 止まって!」
「はっ早いですー!」
レックスにぶつかって止まった。倒れたレックスの隣で魔犬がじゃれついている。
「ごめんなさい! 私の召喚獣が!」
オーレリアが魔犬から飛び降りる。
「ごっごめんなさい……」
ルビーは俯いたまま、魔犬にまだ乗っている。
「なんだレックスか! よかったぁ」
オーレリアが安心した顔をして笑った。
レックスは、その笑顔に安心した。
「よくないんですけど?」
座ったまま魔犬を撫でるレックス。
「ルビー様、捕まって下さい大丈夫ですか? ごめんなさい。怖かったですよね」
オーレリアが手を差し出している。
「ルビー様?」
レックスが急いで立ち上がる。
「はい。ちょっと乗せてもらってたら、急に走り出して驚きました」
ルビーは笑っている。
「レックス様ごめんなさい。大丈夫ですか?」
ルビーがレックスを見上げる。
「ご心配ありがとうございます。ルビー様はお怪我ございませんか?」
レックスが紳士的に対応している。
「私も大丈夫です」
「レックス、王子っぽい……」
ぼそっとオーレリアが呟いた。
「王子だからね? それと、魔犬に乗るのは危ないぞ?」
「うん、魔犬がもう少し私の言う事聞かないと、乗るのは難しそう。今は興味がある所に突っ走ってっちゃうから」
魔犬を撫でながら、オーレリアが答える。
「まぁそうなんだけど、そうじゃなくて。オーレリアは? 怪我ない?」
レックスはオーレリアの手を取る。
「私は大丈夫だよ?」
「ここ、擦りむいてる」
腕をどこかに擦ったようだ。
「そのくらい大丈夫だよ、痛くないし……」
「駄目だよ。ほら、手当しに行こ?」
「うん……ルビー様、またお話聞かせてください! 魔犬、またね!」
魔犬の召喚を解除する。光に包まれて消える。
「ルビー様、ルイですが、熱も下がったようなので、良かったらお見舞いに行ってあげて下さい」
レックスがルビーへ一礼し、オーレリアの手を握って歩き出す。
「お見舞い……!」
戸惑いつつ、お城へと歩き出すルビーであった。
ーーーー
ルイはベットの上でゴロゴロしている。
従者に氷をもらい、頭に乗せている。
はぁ、情けない
上着をカッコよく、ルビーへ渡したまではよかったのに。やはり、自国の暑さに慣れている分、氷の国の寒さに弱い。
コンコン
ドアをノックする音がする。
「ルイ様、ルビー様がお見舞いに来られました」
対応していた従者がルイへ伝える。
「え! ルビー?」
「ルイ様、体調はいかがですか?」
ドアから恐る恐る入ってきたルビーは、なぜか髪の毛に葉っぱが付いている。
「体調はもう大丈夫だよ。来てくれてありがとう」
ベットの隣の椅子へ座るルビー。
「あの、私に上着を貸してくれたから……ごめんなさい」
「謝らないで? 僕が弱いだけだから」
「ふふふ」
ルビーが笑う。
キョトンとするルイ。
「さっき、オーレリア様も同じ事を言っていたので……すみません」
ルイがルビーを見つめている。
「ルビーの笑った顔、久々に見た気がする……覚えてないだろうけど、小さい時にルビーが笑った顔見て、可愛いって思ったんだよ」
「へ?」
ルビーが固まる。
「あはは、僕まだ熱あるのかも……」
ルビーに、思ってる事を素直に伝えてしまった。普段のルイだとありえない。
「私もルイ様と初めて会ったの覚えてます。私の言う事、素直に聞いてくれて、優しい人だと思いました」
ルビーはうつむき加減で、少し照れながら話す。
「覚えてたの? 情けない奴だって、思われてたらどうしようってずっと考えてたんだ」
「ルイ様は情けなくないです。皆さんに優しい人です」
「えへへ、ありがとう」
ルイはルビーへ手を伸ばす。
思わず目を瞑るルビー。
「葉っぱ付いてたよ?」
「あ……ありがとうございます!」
二人は微笑み合うのだった。
ーーーー
オーレリアとレックスは、擦り傷の手当てをしようと棚を漁っていた。
「誰か薬の場所知ってる人いないの?」
オーレリアはソファに座らされている。
「今日、父さん達が帰ってくるんだ。従者達はみんな、そっちの用意に行っちゃった」
「用意?」
「あ、あった! 今夜は食事会だよ。言わなかったっけ?」
「聞いたかもしれない……自分でやるよ」
消毒を自分でやろうと手を伸ばす。
「俺がやりたいの。ほら腕みせて?」
有無を言わさないレックスか、肘を消毒してガーゼを巻いてくれる。
「大袈裟じゃない?」
大した事ない傷に、過保護すぎないか?
「いや、結構擦りむけてたぞ? それくらい普通だ」
「そっか」
普通に話せている。レックスは一安心した。
避けられなくてよかった。
「レックス私……レックスのこと、ちょっと好きかも」
「……え!」
突然の告白に固まるレックス。
「昨日も、その……嫌じゃなかったし」
自分で言っていて、結構恥ずかしい。絶対に顔が赤くなっている自信がある。
「よっ……よかった! 俺、やり過ぎたかもって結構真剣に考えてたから」
レックスは床にしゃがみこんだ。
「……いつ大好きって言ってくれるの?」
オーレリアを薄目で睨むレックス。
「えっと……そのうちに?」
「ほんとかよ?」
二人は楽しそうに笑い合った。
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