〜回想 オーレリア〜
回想です。
窓がガタガタ揺れる。森の木々が擦れ合う音が聞こえる。
一五歳のオーレリアが目を覚ます。
いつも聞こえる鳥の声が聞こえない。
カーテンを開けると、風が吹き荒れている。葉っぱが舞っている。
ここは妖精の国にある、城の敷地内である。
敷地内といっても、広大な森の片隅で、第六王女の姫が一人で住んでいる。
姫に似つかわしくないこの家は、元々森の管理をしていた使用人が使っていたらしい。
姫であるオーレリアは、城での生活が窮屈だったし、周りから厄介者扱いされるのも煩わしかった。父にお願いして、一人でこの森に住まわせてもらっている。父も二つ返事で承諾した。
朝の準備を一通り終えて、オーレリアは外に出てみた。風で金色の髪の毛が舞う。風が強くて立っているのもやっとだ。急いで家に戻る。
今日は外に出るのは無理そうだ。
部屋の中で本を読んだり、家の中の植物に水をあげていると、何だか煙の匂いに気付いた。
この匂いなんだろう?
窓から外を伺う。遠くに煙が見える。
煙は灰色で、空高く昇っている。
まさか火事?
風で擦れ合った木々によって火が付いたのだろうか? それよりも、もし火事だったら非常にまずい。強風で森全体に燃え移るだろうし、そのうち、城にも火がまわる可能性がある。もちろんこの家も燃えてしまう。
オーレリアはローブを頭から被り、口をハンカチで塞ぐ。
再び外に出ると、煙の見える方へ歩き出す。
鳥がいない。虫も……
匂いが強くなってきた。
やがて赤い炎が遠くに見える。この距離でも暖かさを感じる。近づくのは危険である。
城の者はまだ、火事に気付いていないようだ。
オーレリアは水を出す魔法を唱えてみる。この前本で読んだのだ。
水が、手の中に球体になって現れる。
この量じゃ消せない。
もっと大きくするには……魔力を沢山込めてみよう。
炎が高く立ち昇る。木から木へ燃え移る。急がないと森全体に火が広がるだろう。
もう一度魔法を唱える。
先程よりも小さな水の球体が現れる。
周辺の水蒸気を集めて水にする魔法だ。
空気が乾燥してるから、魔力を込めても水ができないようだ。
湖は炎の向こう側だ。
そこまで行っている間に、炎は大きく広がってしまうだろう。
ここは力技で止めるしかない。
「よし!」
オーレリアは、シンプルにいくことにした。
魔力を溜める。自分が思う最大値をイメージする。そして、放出……
ドーーーンッ!
物凄い音が響き渡った。
炎は消えていた。木々が所々折れており、草木は大きく揺れている。
炎だけ消すイメージで、魔力を放ってみたのだが、木にダメージを与えてしまったようだ。
もっと調整が出来るようになろう。
火事は消化できたし、良かった!
一安心し、家へ帰るオーレリアであった。
ーーーー
妖精の城では、森が焼けているという報告にパニックである。
「煙が見えるぞ!」「魔法で防御壁を!」「上空から確認できる者は……」
その時、すごい音がした。
「何事だ?」「火が消えてるぞ!」
見張りからの伝言に、皆、理解が追いつかない。
その後の報告には、森の一部が焼けてしまったが、なぜか火は跡形もなく消えて無くなり、少しの木々が薙ぎ倒されていた。とあった。
自然に消えたのか? あの範囲の火を消すなど、人がやったとするならば、ただ者ではない。ぜひ、国の為、力を使ってほしい所だ。
国の官僚達は頭を抱えた。しかし、森の家に住む厄介者の姫が火を消したなど、誰も思わなかったのであった。
よって、オーレリアは今日も穏やかな日々を過ごせていられた。
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