15
朝、グレイスが急に現れた。
「おはようグレイス……どうしたの?」
寝起きのオーレリアが訊ねる。
「おはよう主人。今日の夜、流れ星が見られるぞ」
「流れ星?」
「ああ。流星群というやつだ。星が降るほど、というのは大袈裟だが。今日は晴れだし、新月だから、よく見えるだろう」
「そうなんだ! 見てみる。何時くらい?」
オーレリアはちゃんと目を覚ました。流星群は見た事がない。
「九時辺りからだ。今度こそ婚約者と見るんだぞ!」
そう言うとグレイスが光って消えた。
「へ? レックスのこと?」
突然部屋の奥のドアが開く。
「オーレリア、グレイス様がすぐ来いって……!」
レックスが部屋着のまま、オーレリアの部屋に飛び込んできた。
「!」
オーレリアはまだパジャマ姿で、ベットの上に座っている。
「あれ、鍵空いてる」
レックスが色々戸惑っているが、オーレリアも負けじと思考停止状態だ。
「ちょっ!」
レックスが近づいて来ると、オーレリアの手を取る。
「体調まだ悪いのか? グレイス様のイタズラ?」
じっと見つめられて、居心地が悪い。
昨日の体調不良はすっかり治っている。
昨日暑かったから、すごい薄着なのに……
「イタズラだと思う」
小さい声で答えるオーレリア。
「はぁ、またか。それならいい」
ため息をついてベットに座るレックス。
「あの、大丈夫だから戻って……」
手を引いてオーレリアを抱き寄せる。
「こんな姿見て、何もしないのは無理だ」
「!」
お互いの心臓の鼓動が伝わる。
「あの、レックス……」
「……ごめん! 戻るから、すぐ鍵かけて!」
そう言うと、レックスは一目散に部屋に戻った。ドアが閉まる音が響いた。
オーレリアは恥ずかしさで、真っ赤である。
顔が熱い!
あ! 鍵!
ーーーー
部屋に急いで戻ったレックス。
二人で宿に泊まる事になった時は、もっとしっかりした服だったのに。無防備なオーレリアを思い出し、赤面する。
あんな下着みたいな服で、普段寝てるのか!
それに、何で鍵空いてるんだよ!
パニックになるレックスであった。
◇
朝食を食べ終わり、オーレリアはレックスに流星群の事を伝えた。
「オーロラの時もそうだったが、グレイス様は、何故俺にあんな嫌がらせを?」
「何でだろうね?」
「次は一緒に見るか? 庭で」
レックスがさらっと誘う。
「そうだね! なら、他の皆んなも誘ってみよっか?」
「いや、二人がいい」
急に迫るレックス。
「ちょっとレックス?」
壁に追い詰められるオーレリア。何だかピンチである。
「二人で見ます!」
オーレリアがそう言うと、レックスは少しホッとした顔をした。
「じゃあ、あとで」
そう言って去っていく。
どうしたのだろう?
「オーレリア! 何レックス様と話してたの?」
エイラが微笑みながら問いかける。
「えと、あのーー」
結局は、流星群の事を皆んなに伝えたのだった。
ーーーー
夜、オーレリアとレックスは、城の庭で空を見上げていた。
皆は別の場所で、各々空を見上げている事だろう。
「オーレリア寒くない?」
「大丈夫。上着着てるから」
二人は手を繋いでいる。
「もう慣れたんだよね?」
オーレリアに問いかける。
「うん……前よりは」
「じゃあ、もう一段階、前進してもいい?」
「え? 前進?」
レックスの顔が近付いてくる。と、オーレリアの頬に口づけした。
「これは大丈夫?」
レックスが訊ねる。
「大丈夫……」
内心ドキドキだが、挨拶で頬にキスすることはままある。
「じゃあ、これは?」
レックスの手が、オーレリアの頭の後ろに伸びる。片手は手を繋いだまま、上を向かされたオーレリアは身動きが取れない。
レックスに口を塞がれる。
オーレリアは身体が一気に熱くなった。
一瞬だった。
頭の後ろの手がゆるむ。
「大丈夫?」
レックスの瞳が光る。
「……大丈夫なわけ、ない、じゃん」
小さい声で呟く。オーレリアはレックスを直視できない。
「でも、受け入れてくれたね」
レックスの言葉にオーレリアは動揺する。
空に星が見える。
どこからか歓声が聞こえる。皆、星を見上げているのだろう。
しかし、二人はしばらく空を見上げるのを忘れて、見つめ合っていた。
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