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魔犬は、思っていることを分かってもらった事が、よっぽど嬉しかったようだ。
「この魔犬の言ってる、白い花って何だろう?」
グレイスに聞いてみるが、
「それは分からんなぁ?」
グレイスにも分からない事があるのか。
「この辺に花は無いし、とりあえず帰ろうか?」
レックスが帰還を指揮する。
◇
氷の城の庭で、魔犬は、エイラの召喚獣の白狐と共に走り回っている。
城に戻って三日目、もう自分の家のように振る舞う魔犬。順応性が高いらしい。
ここしばらく、砂漠や乾燥地帯に咲く白い花を幾つか咲かせてみたり、本を見せたりしたが興味を示さなかった。
「やはり城の菓子は一味違うな。このクッキーは最高だ」
グレイスが端からお菓子を頬張っている。
「グレイス様は本当に、甘い物が好きですねぇ」
エイラがクスクス笑っている。
「魔犬は大分慣れたようだな」
「そうだね。砂漠とは環境が全然違うのに、楽しそうで良かった」
オーレリアが微笑む。
「いや、魔犬はもともと森に住んでいたからな」
「え?」
「何年も昔は、砂漠も森だったんだろうな」
何気なく言うグレイス。
「じゃあ白い花って、森に咲いてる花かもしれない!」
「白い花?」
「うん。魔犬を発見した時に『白い花』って言葉が不思議と聞こえてきて、何故か私しか分からなかったんだけど……」
「それは、お主が妖精の国の出身だから聞こえたのだ。不思議でも何ともないぞ?」
「え?」
グレイスは紅茶を優雅に飲んでいる。
「妖精の国の者は、妖精と話せるだろう? 魔犬も似たようなものだ」
「なんか説明、雑じゃない……?」
グレイスはそんな事気にせず、次はマフィンを手にしている。
「グレイス! それ最後の一個でしょ? 私まだ食べてない」
オーレリアが立ち上がる。
「年功序列だ」
一口で食べてしまうグレイス。
「ああ! ひどい!」
二人がお菓子を巡って争うのを、エイラが優しく見守るのだった。
◇
オーレリアはお城の談話室で、何かを書いている。
「オーレリアここにいた! あれ? 宿題終わったんじゃなかったの?」
エイラが話しかけてきた。
「グレイスが教えてくれた、魔犬の特徴を書いてるの。白い花を見つけるのに、役立つかと思って……」
・妖精の国出身
・森に生息
・夜行性
・鼻がいい
・人と意思疎通ができる
・群れで行動する
「特徴か、なんだか本当に犬なのね。あ、でも夜行性っていうのは犬と違うけど」
「そういえばそうだね……」
夜に花を見つけるとしたら、よく見えないだろう。けど、鼻が効くなら花の香りを追えばいい。
「夜に咲く花、探してみる!」
◇
栽培室が完成した。
夏休みももうすぐ終わりだ。先生達は学園で準備を進めている。
ファートム先生は、完成した栽培室を見学に来た。
「これが研究施設……!」
感動しているファートム先生。
「先生、おはようございます」
オーレリアも栽培室へとやってきた。
「おはようございます。オーレリアさんも見学ですか?」
「はい。あと、ファートム先生に聞きたい事がありまして」
「聞きたい事ですか? 何でしょう?」
興味深そうにこちらを見る。
「夜に咲く花を探してるんです。ご存じないですか?」
興味深い質問に、先生の瞳が光る。
「幾つかありますよ。月下美人、ヨルガオ、マツリカなど……どれも夜に開花します」
「へぇ、沢山あるんですね! その花の種が手に入ればいいんですが」
「行きつけの農園の方に聞いてみましょう。手に入ったらお知らせします」
「いいんですか?」
「私も咲いた所を見てみたいですし。オーレリアさんは、なぜ夜に咲く花を探しているのですか?」
「私の新しい召喚獣が、白い花を探してまして……どの花か調べてる最中なんです」
「新しい召喚獣ですか! やる事が突拍子もないですねえ!」
「あはは……成り行きで」
「丁度いいので、栽培室で最初に研究する植物にしましょう!」
力強い味方が現れたのであった。
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