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妖精の国の姫、氷の国へ留学する  作者: 紙絵
第二部

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12

 大分、体力も回復できただろう。

 魔獣退治に出発だ。


「魔獣って、どんな姿なの?」

 オーレリアがレックスに訊ねる。

 二人は馬車で移動だ。

「大きい獅子みたいって聞いたぞ」

「誰が見付けたんですか?」

「城に勤める魔法使い達だ。代々引き継がれているやり方で、復活したら知らせが飛ぶように、魔獣の亡骸を厳重に封印しているらしい」

「なぜ復活するの?」

「さぁ? 何か未練でもあるのか……それは誰にも分からないらしい。そろそろ魔獣がいる辺りだな」


 魔獣の声が聞こえる。

 これは……何か訴えてる?


「すみません、止めてください!」

 オーレリアは馬車から降りる。

「どうした?」

 レックスも一緒に降りてくる。

 付いてきている騎士団も歩みを止めた。


「レックス、私、魔獣の声が聞こえるんだけど?」

「ええ!」


 どこにいる?


「あの遺跡の上!」

 指差すオーレリア。遺跡の上に黒い塊が見える。動いているようだ。


「思ってたより小さいな……?」

「うん、それに獅子っていうよりか、犬だよね?」

「何か探してるみたい。白い花って言ってる。ご主人の白い花って」

「ご主人?」


 かつて誰かと一緒にいたのだろうか?


 しかし、ここは砂漠である。白い花どころか、植物の気配もない。

 オーレリアは、そっとグレイスを召喚する。

「おお、砂漠か。ん? あれは魔犬か?」

 グレイスは出てきて早々に、皆が長年調べていた魔獣の正体がわかったようだ。

「魔犬って何?」

 魔犬から目を逸らさずに、訊ねるオーレリア。

「簡単に言うと、魔力を持った犬だ。昔はちょこちょこおってな、最近はあまり見なかったが……」


「グレイス様、昔ってどのくらいでしょう?」

 レックスが恐る恐る確認する。

「そうだな、太陽の国と氷の国が一つの国だった時だから、二千年くらい前か?」

「そんなに昔か。あの魔犬は貴重な生き残りってことか」

 レックスが頷いている。

「魔犬は復活するの?」

「まぁ、魔力があるからしぶといだろうが、限度はあるんじゃないか?」

 あの魔犬は数十年前にも、その前にも現れている。その度に魔力を使って復活したとすれば、段々と力はなくなっていくだろう。

「見た感じ、あまり大きくないのも魔力の衰えってことかな?」

 オーレリアは魔犬を注視する。


 さっきまでの、倒すぞ! の雰囲気ではなくなっている。

 皆、猛々しくて、大きな獅子を想像していたのに。実際は、痩せたちょっと大きめの犬である。

 拍子抜けだ。

 それも、必死にここにはない花を探している。何だか可哀想に思えてきた。皆、同情してしまったようだ。


「倒さない方法はないのかな?」

 オーレリアがぼそっと呟く。


 この時代にそぐわないのは分かる。何かをしでかしてからじゃ遅いのだ。その前に始末してしまうのは合理的だといえる。

 が、魔犬の声が聞こえてしまうのは、どうした事か……


「それなら、オーレリアの召喚獣にしてしまえばいいではないか?」

 グレイスが何ともなさそうな様子で伝える。

「私の召喚獣に?」

「あぁ。お主は魔力が有り余っておる。私とあの魔犬を召喚獣にした所で、問題なかろう」

「すごい! そんな事思い付かなかった」

「やり方は……」

 グレイスが説明する。


「わかった」

 魔犬の方へ歩みを進める。

 あちらも警戒しながら近付いてくる。

 やはり小さい。大型犬くらいの大きさだ。

 毛並みも悪く、ボサボサだ。しかし、緑の瞳だけは爛々としている。


「白い花を探してるの?」

 オーレリアが魔犬へ話しかける。

 言葉が分かるのか、魔犬は一瞬怯んだ。

「クゥーン」

 鳴いた。


 騎士団達もざわつく。


「一緒に探すから、私の召喚獣になってくれる?」

 一拍おいて、頷く魔犬。


 オーレリアは、グレイスに教わった通りに詠唱呪文を唱える。

 一度聞いてできるものではない。しかし彼女はできてしまうのである。


 オーレリアと魔犬の下に魔法陣が現れた。

「汝、我と契約する。相違ないか」

 オーレリアの問いかけに、「ワン」と吠える。

 魔犬が光に包まれる。

「契約成立だ」

 その言葉と共に光が消える。


 魔犬の様子が変わった。

 人が乗れるほどの大きさになっている。

 ボサボサだった毛並みが、艶々のモサモサに変わる。


 召喚獣となった事で、本来の姿に戻ったようだ。確かに、この姿の魔犬であれば警戒するだろう。


「よろしくね」

 オーレリアに擦り寄る魔犬。

 尻尾を振って、嬉しそうである。


「こやつ、子犬だな」

 グレイスが呟いた。

読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。

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