11
砂漠を進む。
馬や馬車での移動だ。小隊ではあるが、龍ほど早く進めない。
オーレリアは大人しく馬車に乗っている。
馬に乗ろうとしたが、一人ではまだ無理だし、レックスは一緒に乗る事を断った。理由は「気が散るから」である。それなら、騎士団の隊長あたりと一緒に乗ると伝えると
「絶対だめだ!」
と、激しく反対された。
村まではスムーズに進んだ。
しかし、いざ補給をしようとすると
「井戸の水が、少し前からほとんど残っていないのです……」
村長は申し訳なさそうに伝える。
「魔獣を退治していただくのは大変有り難いんですが、補給できる量に限りがありまして、申し訳ございません」
「それは仕方ない事だ。そんなこともあろうかと、こちらには考えがある。村長、顔を上げてくれ」
レックスが対応している。
王子らしいなぁ。
こういう時、レックスは王子だと思い知らされる。そして何故か誇らしくなる。
広場に移る一団。
何が始まるのかと、従民達が遠巻きに見ている。
「グレイス、お願い」
オーレリアが召喚すると、グレイスが氷の塊を何個も作り出す。
広場に幾つもの氷が現れると、少し涼しくなる。
「ここは毎度、乾燥しているな」
氷の粒を細かくして、空へと向ける。暑さで溶けた氷が雨のように降り注いだ。
「半日は雨になるから、井戸の水も戻ると思うが。足りなかったら言ってくれ」
グレイスが村長へ話しかける。
「あ、あなた様は……もしや氷の妖精王様では?」
「いかにも。よく分かったな!」
「昔から好きでよく本を読んでいたもので、最近何かと噂を聞いておりましたが、いやはや、感動です……! あの、サインってもらえたりしません?」
住民達は雨に歓喜している。
グレイスはすごいなぁ。
オーレリアが感動している。
「オーレリア、疲れてないか?」
レックスが気遣うが、
「大丈夫だよ! あのさ、近くに池でも作ったらこの先も安心だよね?」
「え、池作れるの?」
レックスはオーレリアをまじまじと見る。どこにそんな大量の魔力が?
「俺、紅龍出して砂漠に来ただけで、すっごい疲れたのに。グレイスにあんな魔法使わせた上に、池作るって……」
レックスがぶつぶつ話し始めた。
騎士団は補給中である。
オーレリアとグレイス、レックスは村の外れまで歩いてきた。
「この辺りか」
「そうだね。私が魔法で穴掘るから、グレイスさ、そこに氷放り込んでもらおうかな!」
オーレリアが魔力を溜める。
魔法陣が砂漠に現れる。
いきなり大穴が開く。砂が滑り落ちていく前に、グレイスが氷を落とす。穴にハマるほどの巨大な氷である。
思ったより大きい……
これ、湖じゃないか?
オーレリアが何やらグレイスに渡している。
オーレリアがまた魔力を溜め、魔法陣が湖の周りに幾つも現れる。
グレイスが魔法陣の中に、何かを投げ入れた。と、植物が生え始めた。
「今日の朝、宿舎の周りから植物かき集めといたんだ」
嬉しそうなオーレリアである。
砂漠でも枯れないような植物が、めきめき茂りだした。サボテンやアロエなど、湖のほとりに緑が眩しい。
溜池を作ろうとしたら、オアシスを作ってしまったようだ。全部氷から作った水だから、透明度がすごい。深い所までよく見える。
これ、綺麗すぎてここが観光地化するんじゃないか?
騒ぎを聞きつけて、騎士団や村民がわらわらやってきた。
「これは!」「オアシスがこの夏に」「なんて綺麗な湖だろう」「このサボテンは食用になるな」
気付けば皆、オアシスで思い思いに過ごしている。
湖で泳ぐ者、湖畔の木陰で寝ている者。小屋を建てている者もいる。
ここに住む気なのだろうか?
「皆嬉しそうで良かった」
「いや、すごいよオーレリア……」
レックスはオーレリアを見つめる。
「魔力使ったらお腹空いたな、何か食べよう?」
「うん。そうしよう」
二人は村の屋台へ向かうのであった。
読んでいただき、ありがとうございます。
感想、反応いただけると大変嬉しいです。
評価、レビュー、ブックマークお願いします!




