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食堂で、三人はルイの行動について話し合っていた。
「話しかけても逃げるなんて、よっぽど嫌なんですかね?」
カイルが酷いことをさくっと言う。
「そんな……」
ルイは顔を両手で隠して狼狽えている。
「照れてるって可能性もありませんか? まぁ、限りなく少ない可能性ですが……」
オーレリアは助け舟を出しているつもりだ。
「可能性少ないの?」
「三人で恋愛相談か?」
レックスがノックと一緒に現れた。
「レックス君、この二人酷いんだよ! 助けてよ」
レックスは吹き出した。
「助けてって言われる姫って……」
「レックスも笑ってないで、何かアドバイスして?」
オーレリアがお願いする。
「うん? 本人同士しかわからないことってあるだろうし、俺らが色々言ってもな」
「そんな事言わないでよ〜。女の子に慰めてほしいのに、口説くの禁止って言われてるし、僕もうどうしたら?」
「禁止されたんだ」
ノックも笑っている。
「ルイ君がルビー姫に、ちゃんと気持ちを伝えたらいいんじゃない? ルイ君次第だよ」
レックスがさらっと真っ当な事を言う。
「そんなかっこいい事言うけど、じゃあ、レックス君は婚約者様に気持ち伝えたの?」
少し不貞腐れたルイが、レックスをジトっと見る。
「伝えたよ?」
あっけらかんと言うレックス。
「好きなんだから、毎日伝えてもいいよ。なんなら今もぎゅっとしたいくらい……」
レックスがオーレリアの頭を撫でる。
オーレリアはレックスの突然の行動に心臓がはねる。
周りが赤面する。
「レックス、恥ずかしいからやめて」
オーレリアが俯きながら、両手でバツを作る。
そんな姿をじっと見るルイ。
「僕頑張ってみる! こんなラブラブ見せられて、僕だってルビーの頭撫でたい!」
と、レックスのおかげで決心したルイであった。
◇
あの後、ルイはルビーを誘おうと幾度か頑張ったが、ルビーに避けられてしまうようであった。今までのルイの行動を考えれば、可哀想だが自業自得である。
「僕も頑張って、女の子を口説かないようにしてるんだ……」
ここ数週間、ルイは以前とは別人のように女の子を口説いていない。ルビーが不安に思うような事は、極力しない事をモットーとしている。カイルやレックス、ノックといった男友達と一緒にいるようだ。時々オーレリアや、エイラが混ざるのは致し方ない。
そうこうしているうちに、夏休みが近づいてきた。太陽の国へ帰る者は少なく、涼しい氷の国に残る者が多い。しかし、今年は寮が使用できない。王族は氷の城で一時的に滞在することになった。
因みに、サン王子、ルイ、ルビー、従者達が城へ滞在予定である。
レース先生の言葉で、夏休み前最後の授業が終わる。
「それでは明日から夏休みです。また休み明け、皆さんが元気に学園に来てくれる事を願っています」
翌日、皆帰省を始めた。
ルイは早速ルビーへと話しかける。
「ルビー、荷物持つよ?」
「結構です。自分で持てますので!」
「そっそう?」
ルビーはさっさと馬車へ乗り込んでしまった。
隣の馬車では、サン王子がエイラの手を取って一緒に乗っている。
もう一つ隣は……カイルとノックが楽しそうに話している。荷物を馬車へ入れているようだ。
婚約者であるルイも、後からルビーの馬車へ乗る。
「はぁ」
無意識にため息をつくルイ。
皆楽しそうでいいなぁ。
「ルイ様、そのため息は?」
ルビーがこっちを怖い顔で見ている。
「え? 僕ため息ついてた?」
「はい。私との馬車が嫌なのですか?」
「いやいや、そういうわけじゃないよ。むしろ……やっぱり何でもない」
ルイは外を見る。
むしろ一緒にいられて嬉しいなんて、恥ずかしくて言えない。
「あ、レックスとオーレリアだ」
外に二人が見える。オーレリアの荷物をレックスが持とうとして断られている。
僕と同じだ。
でもその後、レックスがオーレリアの手を取ると、荷物をさりげなくレックスが持った。手を繋いだまま、何か話しているようだ。オーレリアが何か言って、レックスは笑っている。
「いいなぁ」
ルイは、また無意識に言葉が出ていた。
「ルイ様はオーレリア様が好きなのですか?」
「え?」
ルビーがこちらを睨んでいる。
「レックス様が羨ましいようだったので」
「いや、羨ましいのは当たってるけど、そうじゃなくて」
ルビーかこっちを見ているだけで、動揺してしまう。
「やっぱり。最近、女性を口説くのをやめたのも、本命が出来たからって噂、本当だったんだ……」
「出発いたします」
ルビーの声と従者の声が被る。
ルビーが下を向く。
ルイはその姿に首を傾げる。
「ルビー?」
返事がない。
ルイは立ち上がり、ルビーの隣へ座る。
「ルビーどうしたの?」
いつもの強気な彼女じゃない。まさか僕に嫉妬してくれてる? まさか……ね。
触れてもいいものか……
一瞬思案するルイ。ルビー相手だと、一つ一つの行動をいちいち考えてしまう。
オーレリアに話しかけた時は、手を取るのに何の躊躇もなかったのに。
そっとルビーの肩に触れる。
ルビーは驚いたようで、こちらを振り向く。
「ごめん!」
咄嗟に肩に触った手を退けて、謝るルイ。
その態度に、ルビーは傷付いた顔をした。
「ルイ様は、私の事が怖いのですね……こんな私が婚約者なんて、本当に申し訳ありません」
ルビーは頭を下げる。
ルビーの意外な行動に、ルイは驚いた。
「違う、ルビーが怖いわけじゃないよ! 僕の行動で嫌われる事が怖いんだよ」
「え? 私に嫌われる事が?」
ルビーがルイを、信じられないモノを見る目で見ている。
「うん、まぁ、既に嫌われてる気がするけど。皆んなにも言われたし……」
ルイは頭を掻く。
「そんなことは!」
ルビーが何か言いかけた所で、馬車が止まった。
「到着致しました。開けてもよろしいでしょうか?」
「はい」
ルイが返事をする。
二人の会話はそこで終わってしまった。
「ルビー、手を」
ルイが馬車を降りて手を出す。
ルビーは戸惑いながらも、そっと手を差し出した。
「……ありがとう」
ルビーが上目遣いでお礼を言う。
ルイは一瞬、時が止まったと思った。
ルビーが僕の手を取ってくれた! しかもお礼を! ありがとうって言った!
ルイはルビーの手を取ったままである。
「ルイ様?」
ルビーが話しかける。
「もう少しこのままいたいな」
つい本音が出てしまった。
ルビーの顔がみるみる赤くなる。
「顔赤いよ? 暑いから、早くお城へ入ろう! 従者さん、荷物お願いしても?」
「あの!」
ルビーが焦っている。
「お荷物の事はお任せください」
従者は心得ているとばかりに、胸に手を当てお辞儀する。
「ほら、ルビー行こう」
ルイとルビーは手を繋いだまま、お城へと入っていったのだった。
その姿を、馬車からオーレリアとレックスが見守っていた。
「手を繋いでたね」
「手を繋いでたぞ」
同時に同じ事を言う二人。
「一歩前進だな!」
レックスが頷く。
「そうだね!」
二人は微笑ましい気持ちになるのであった。
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