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城での滞在は、前回に比べれば緊張しなかった。
国王と王妃は、別荘に滞在中で不在であったし、レックスの計らいか、メイドは部屋にいなかった。
城の談話室で、レックスとサン王子、エイラとオーレリアが宿題をしている。
ひと段落し、少し休暇中である。
「太陽の国からの留学が終わる日の夜に、毎年パーティーが開かれるから、それは我慢して出てね?」
レックスに教えられ、渋々頷くオーレリア。
「王族のパーティーとは違って、学園主催のパーティーだから、ドレスはカジュアルな物を選ぶのよ!」
エイラがオーレリアに指示する。
「エイラと同じのでいいよ」
もうドレスを選ぶのはこりごりだ……
「お揃いってことね! それは楽しそう!」
オーレリアの言葉に、エイラはなんだかノリノリである。
「この休み中にお買い物行きましょう。ドレスも選びたいし、小物も必要よね!」
「ドレスは特注じゃないの?」
「カジュアルなパーティーだから、特注のドレスは浮いちゃうわ。既製品を選んだ方が無難なの!」
「へぇ」
以前のオーレリアは、パーティーは全て欠席していた。出席しなくても咎められなかったし、出たいと思ったこともなかった。
今も面倒なことに変わりはないが、友達が一緒に準備をしてくれるのは、何だか楽しい。
「話してたら楽しみになってきちゃったわ! 明日にでも買い物行きましょう? ちょっと手配頼んでくるから!」
エイラは従者を探しに部屋から出ていく。
「ちょっとエイラ、一緒に行くよ」
サン王子が急いで追いかける。
「エイラ楽しそう」
オーレリアが微笑む。
「オーレリアのドレス姿、俺も楽しみだな」
レックスが何か言っている。
「私達の旅行はいつ行ける?」
オーレリアがレックスに問いかける。
驚いた顔をしたレックスが、こっちを見た。
「……楽しみにしててくれたの?」
少し照れながらも頷くオーレリア。
「そっか」
優しく微笑むレックス。
「旅行って初めてだから、楽しみなの」
「なんだ、ついに俺を好きになってくれたのかと思ったのに」
笑いながら冗談を言うレックス。
言葉に詰まるオーレリア。
レックスの事、嫌いじゃないし、隣にいるのが当たり前って今じゃ思ってるけど……
「あの、レッ」
「オーレリア! 明日買い物行けるって!」
エイラとサン王子が部屋に戻ってきた。
「そ、そう! よかった」
言いかけた言葉を飲み込む。
「じゃあ、宿題ちゃっちゃと進めちゃおう!」
ウキウキのエイラである。
びっくりした……
レックスはこちらを一瞬見たが、それぞれ宿題を再開するのであった。
◇
オーレリアとエイラは変装していた。
街へ買い物へ行く為である。
しかし姿勢がいいのと、エイラは特に品がいいので、結果、いい所のお嬢様スタイルで出かける事にした。
途中まで馬車で行き、あとは歩きである。
変装したとはいえ、女二人での買い物はリスクを伴う。護衛のカイルとノックがやはり、私服姿で一緒に行く事になった。
サン王子もレックスも行きたがったが、それだともっと目立ってしまうので諦めてもらった。
本当は護衛をもっと増員したかったようだが、
「いざとなったらグレイス召喚する!」
というオーレリアの言葉に、この人数で決定になった。
街歩きは楽しい。
お店が沢山あるのを見ているだけで、心躍る。やはり大都市は違う。
「ここね」
目当てのお店に着き、ドレスを選ぶエイラ。
「これとこれ、どっちがいいかな?」
「んー…、こっち!」
「アクセサリーは向こうのお店見てみよう」
楽しく買い物も終わり、店を出る。
人が多く集まっているお店がある。
「あいす? 何かしら?」
エイラが首を傾げる。
「何でも、夏にぴったりな冷たいデザートらしいですよ?」
カイルが後ろから情報を教えてくれた。
「冷たいデザート……食べたい!」
オーレリアが目をキラキラさせる。
「いいわね! あのお店で一休みしましょ!」
四人はカフェのテラスで、アイスを食べる。
「おいしい……」
「溶ける〜!」
「すみません、自分お手洗いに行ってきてもいいでしょうか?」
ノックが申し訳なさそうに伝える。
「大丈夫よ」
エイラが頷く。
「ありがとうございます!」
走っていくノック。
「こんな昼間から、悪い事考える奴なんていないだろうし」
カイルが言ったその時、
「いるんだなぁ。それが」
後ろから声がした。
フラグかい!
悪い顔のごろつきが三人現れる。
「その娘二人置いてけ。いい額で売れそうだ」
カイルが立ち上がる。
「そんな細いやつ一人で何ができる?」
三人ともナイフを取り出す。
周りで悲鳴が聞こえる。
一人がカイルに襲い掛かろうとする。
オーレリアが静かに呼ぶ。
「グレイス!」
一瞬で三人は動かなくなった。氷漬けになっている。
「は、早い……」
カイルが驚いている。
「主人はまた危ない目にあってるのか? 怒りを感じるが……」
ふわふわ浮きながら、グレイスが振り返る。
「楽しい時間を邪魔されて、怒ってるだけ」
そういうと、オーレリアは椅子に座ってアイスを食べ始める。
「せっかくのアイスが溶けちゃう!」
カイルとエイラも、急いでアイスを食べはじめる。
街の人達は呆然とその光景をみていたが、やがて歓声が聞こえた。
「凄い魔法だ!」「一瞬で氷になった」「かっこいい、あのお姉ちゃん」
「どうしたの? わっ! 凍ってる!」
何も知らないノックが戻ってきた。
「後で牢にでも入れといてください」
オーレリアが指示する。
後々、アイス好きの凄腕魔女と街で噂になり、レックスが笑いを堪える事になるのを、この時はまだ知らない。
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