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休憩時間。
サン王子とエイラは仲良く手を繋いでいる。
一緒に食堂で昼食をとるようだ。
「エイラ様、嬉しそう」
「そうですね、なんだか微笑ましいです」
カイルとオーレリアは、二人をこっそり見守る。自分のことは置いといて、人の恋路を見守るのは楽しい。
「何見てるの?」
ルイが話しかけてきた。
「いや、あの、友人が嬉しそうなのは嬉しいなって」
オーレリアが伝える。
「はい。仕える方が幸せなのは嬉しいです」
カイルは大きく頷いている。
サン王子とエイラを見るルイ。
「サン君が女性といるのが不自然すぎる……婚約者かぁ」
しみじみ話している。
「ルイ様の婚約者の方はどんな人なんですか?」
オーレリアが聞いてみる。
「僕の婚約者は、僕のことが好きじゃないんだ」
ルイが俯く。いつもの彼と違って、少し寂しそうに見えた。
「その姫は太陽の国の方ですか?」
「あぁ。彼女も氷の国に留学してる」
「え! この学園にいるんですか?」
驚くオーレリア。婚約者がいる前で、女の子に声をかけまくっているルイ……それは嫌われるに決まっている。
「別のクラスだけどね。僕に関心なくて、見えてないんじゃないかってくらい」
もしかして……
「ルイ様、その婚約者様の気を引こうとして、女生徒にちょっかい出してます?」
「え? なんで分かるの?」
オーレリアは少しふらついた。
なんて乙女心がわかっていない王子なのだろう?
「僕も婚約者と仲良くしたいんだけど、無視されるし、軽蔑されてるし……」
いやいや、自業自得では?
「ルイ様、根本的に考えを改めないと、今のままだと婚約者様に嫌われて終わりですよ?」
「そうなの? 僕こんなにかっこいいのに?」
「すごい自信だ……!」
カイルが驚いている。
「女の子に声をかけるのを控えてください」
オーレリアは直球で伝えることにした。
「そんなあ。最初は気を引こうとしてたけど、女の子好きなのは本当だし……」
ルイはうだうだしている。
「女々しいですね……」
カイルがボソッと本音を漏らす。
「というか、嫉妬させたいんでしょうけど、逆効果ですよ? 婚約者に好かれたいなら、他の女の子口説くの禁止です!」
オーレリアがはっきり伝える。
「分かったよ。君の言う通りにするよ。そのかわり今度デートし……」
「しません!」
オーレリアは言い終わる前に拒否した。この王子、雑な扱いで良さそうだ。
「オーレリア様、はっきりしててかっこいいです!」
カイルが横で頷いている。
「ルイ様も見習った方がいいですよ?」
そして失礼なことを言っている。
「ひどいなぁ」
ルイがしょんぼりしている。
そんな様子を見守っていたレックス。
オーレリアの拒否っぷりに、笑いを我慢していた。ルイ君を言い負かすって、本当に自分の婚約者は面白い。
ルイの婚約者は隣のクラスにいた。
名はルビー・マルグリット。太陽の国の貴族令嬢である。
肩までの赤い髪の毛が目を引く。意志の強そうな瞳は黒である。背が小さくて、目が大きくて、とても可愛い姫だ。しかし、
「ルビーは気が強いんだ。僕も睨まれて怖くて、うまく誘えない」
ルイはさながら、うさぎのように縮こまっている。
「さっきまであんなに自信満々だったのに、しっかりしてください」
オーレリアに叱責されるルイ。
三人はあの後、ルイの婚約者を見ようということになり、隠れて婚約者を見ている最中である。
「可愛らしい姫ですね!」
カイルは素直である。
「僕の婚約者だぞ!」
ルイがカイルを一瞥する。
……自分が言いよるのはいいのに、ルビー様が言い寄られるのは嫌なのか。
「ほら、ルイ様! 早くルビー様を昼食に誘って来てください?」
オーレリアが急かすが、ルイはもじもじしていて中々行かない。
「私や他の女の子にはグイグイ行けるのに、本当に同一人物ですか?」
オーレリアは呆れる。
「オーレリア、代わりに行ってきて」
ルイが手を合わせる。
「私が行ったらややこしい事になるでしょ?」
駄目な弟の面倒をみる、姉の心持ちである。
そんな事をしている間に、ルビーは友達と行ってしまった。
「もう、ルイ様行っちゃいましたよ?」
カイルがやれやれといった表情で首を振る。
「私達も食堂行きますか」
オーレリアとカイルは先に立って歩き出す。
「待ってよ〜、僕も行くよ〜」
全然王子っぽくないルイが付いてくる。
なぜか三人でお昼を食べる事になったのだった。
◇
ルイは、王子としてチヤホヤされて育った。
小さい時から自分の思うがまま。第二王子の自分は第一王子ほど厳しくされることなく、怒られる事はほとんどなかった。
城の庭にはバラが咲いている。
七歳のルイは何気なく、バラの花びらをむしって遊んでいた。
大人達は優雅にお茶会をしている。ルイの行動を見ている者はいても、咎める者はいない。
「バラが可哀想だよ?」
振り向くと小さい女の子が自分を指差している。
「せっかく綺麗に咲いたのに、取ったら駄目なんだよ?」
その大きな瞳はこちらをじっと見ていた。
自分より小さい女の子からの指摘に恥ずかしくなるルイ。
「う、うるさいな! 別に僕の庭なんだからいいだろ?」
狼狽えるルイ。
「このお城もお庭も、国のものよ。あなたの物じゃないわ?」
「そ……そんな」
言い負かされて黙るルイ。その通りである。自分の幼稚な行動は王子としていけない事だ。この小さい女の子は、もうそれを当たり前に思っている。
「バラにごめんなさいは?」
大人びた口調でルイを叱る女の子。
「……ごめんなさい」
小さい声で言うルイ。
「よくできました!」
女の子がニッコリ笑う。
その笑顔がとても可愛いくて、ルイは目が離せなかった。
それはルイの一目惚れであり、その小さい女の子が、ルビーだった。
自分の婚約者があの女の子だと知って、ルイはとても嬉しかった。だが、同時に不安になった。
あんなに小さかった時の出来事、きっとルビーは覚えてないだろう。覚えていたとしても、駄目な王子という印象を与えてしまっている。婚約なんて嫌だと思われていたらどうしよう。
婚約者として決まった後、パーティーで顔を合わせた。それが去年である。
「ルビー姫、第二王子のルイ・アンリオです」
大人になった自分を見てほしくて、王子らしくルビーに自己紹介したルイ。
「ルビー・マルグリットです。宜しくお願いします」
ルビーは自分を見ることなく、それだけ話すとどこかへ行ってしまった。
それからも、仲良くなりたくて顔を合わせると話しかけるのだが、いつも逃げられてしまう。
そして、今に至る。
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