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「おはようございます。私はレース・アズール、召喚の先生です」
まるで物語の女神さながらの女性が教室に入ってくる。
髪の毛は床につきそうなくらい長くて、薄い水色、睫毛が長い青い瞳。
分厚い本を教卓に置く。ドンと重厚な音がした。
あの本、もしかしてめちゃくちゃ重いのでは?
「本日は召喚獣を出してみましょう。魔力のある皆さんは、何かしら召喚できるはずです。中庭へ移動します。大きな召喚獣が現れた時に教室だと壊れちゃうので、念の為です」
全員中庭へ移動する。
妖精の国だと、召喚されるのは大体妖精だ。大きな召喚獣は見た事がない。
きっと私も妖精が召喚されるはずである。
レース先生が何かする仕草をすると、空中に呪文が現れた。
「この呪文を唱えます。魔力を込めて、詠唱してください」
生徒が魔力を込めて詠唱を始める。
オーレリアも魔力を込める。
レースは目を見張った。妖精の国の者は元々魔力量が多いが、オーレリアはさらに、とてつもない魔力量だ。
呪文を詠唱すると、足元に魔法陣が現れる。
オーレリアの魔法陣は、クラスの誰よりも大きい。
ポンっとした音があちこちで聞こえる。
召喚獣が現れた音だ。
エイラ王女は、真っ白で綺麗なキツネが。
「まぁ、綺麗な召喚獣」「ずっと見ていたいわ」
周りが美しさのあまり、ため息をつく。
レックス王子は、深紅の鱗をした巨大な龍。
召喚した途端どよめきが広がり、悲鳴を上げている者もいる。龍は大人しく頭を垂れて、レックスに撫でられている。
「すごい!」「あんなに大きな龍見た事ない!」
オーレリアは……ん? 人?
「我が名は、グレイス。氷の妖精だ」
周りの生徒も困惑している。
人と変わらない姿、違うのは羽があることくらいか。若い男性姿で、杖を持って冠を被っている。なんだか全体的に白い。
「妖精にしては大きい気がします」
オーレリアが疑問に思うのは当然だ。通常、妖精は小さい。大きくても掌くらいの大きさである。
「うむ。妖精王だからな。まあ、お主は妖精の国の姫であろう? 妥当な召喚だ」
そして偉そうな感じだ。
「氷の妖精の王……」
オーレリアは呟きながら考える。
そんなものをただの留学生が召喚してしまっていいのだろうか? この国の大事な妖精なのでは? この妖精王がこの国の気候とか司ってるのでは? 召喚しちゃいけない偉い人なのでは?
「あらら〜! 王様召喚しちゃうなんて、オーレリアさん凄いわねぇ……!」
レース先生が走ってきた。
そして氷の妖精王へと跪く。
「氷の妖精王、お姿をこの目で見る事ができる時が来るとは思いませんでした」
「面をあげよ。
私も何千年も生きているが、召喚される日が来るとは驚きだ。まぁ、楽しそうなので少し付き合おうと思うぞ」
氷の妖精王はちらりとオーレリアを見ると、楽しそうに笑った。
鋼の心を持つオーレリアも、流石に少し焦ったが……
そもそも召喚獣が、「召喚されても良い」と思わないと成立しないはずだ。
お茶目な方なのかな?
ということにした。




