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妖精の国の姫、氷の国へ留学する  作者: 紙絵
第二部

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4

 レース先生の召喚獣の授業である。

 皆、庭に集まって話を聞いている。

「自分の召喚獣と仲良くなる事で、今よりもっと強い力が出るのですよ」


「なるほど……」

 そういえば、魔術士に攻撃を放った時、咄嗟に「グレイス」って呼び捨てにしてた。呼吸が合っていたように、あの時の魔法はとても早かった。


「では、皆さん召喚してみましょう!」


 次々と召喚獣が現れる。

「スキンシップが大事です。信頼関係を築きましょう」


 レックスが紅龍を撫でている。

 あの炎を吐いた龍と同じとは思えないほど、リラックスしている。今にもねむそうだ。


 エイラも白い狐をもふもふしている。もふもふしているエイラも、されている白狐も、とても気持ちよさそうである。後で触らせてもらいたい。


 オーレリアは……グレイスと向かい合う。


「オーレリア、これは何の授業だ?」

 グレイスが周りをみて訊ねる。

「召喚獣との信頼関係を築く授業」

「なるほどなぁ。我との信頼関係となると、撫でられるわけにもいかんし……」

 オーレリアは少し想像してみて、首を振る。

「我がオーレリアを撫でるのは……レックスが怒りそうだな!」

 グレイスは笑っているが、オーレリアは何だか遠くから視線を感じた。


「冗談はさておき、グレイスを呼び捨てにしたあの時、魔法を使う速さが段違いだったんです。だから、信頼関係は必要なんだと思っていて、まずはタメ口から始めようかと」

 オーレリアが説明する。

「そうか。了解した」


 オーレリアは少し考えた。

「グレイスの事、もっと教えてもらおうかな? 氷の妖精王って普段何してるの?」

 グレイスは笑った。

「そうだなぁ、我は大体寝てるか、お菓子食べてるか……」


 不摂生である。


「けっこう怠惰な生活してるんだ」

「我は妖精だからな。気ままに過ごしているのだ。オーレリアはどうなんだ?」

「私? 私は学園通って、植物育てて、ご飯食べて寝てるよ!」

 グレイスは首を振る。

「そうじゃない。一日の過ごし方じゃなくて、何が好きか何が嫌いか……オーレリアの事を教えてくれ」

 自分の話をするのは少し照れくさい。

「私が好きなのは、植物! 嫌いというか苦手なのはダンス! グレイスってダンス踊れるの?」

「我は踊れん。音楽に乗ることができん」

「確かに、グレイスのダンス姿想像できない」

 オーレリアは想像して笑っている。


 授業が終わるまで、二人は話した。

「またお茶会しよう!」

「そうだな!」

 最後は友達のようになった。


「では、今日の授業はこれで終わります。オーレリアさん、放課後職員室へ来てもらえますか?」

 召喚の授業終わり、またレース先生に呼び出された。

「え! はい……」


 また呼び出された! 今度は一体?


 ーーーー


「失礼します……」

 オーレリアは今、警戒心の塊である。

「オーレリアさん! 来ましたね!」

 オーレリアが職員室へ入るとすぐ、ファートム先生が声をかけてきた。

 何だか嬉しそうである。

「先生どうしたんですか?」

「それがね!」

 ファートムの顔が輝いている。

「ファートム先生、その説明はこちらで。オーレリアさんもどうぞ」

 レース先生に別室へ案内される。


 そこには国王の側近、エミールがいた。

「お時間いただき感謝します。では、早速本題へ……」

 相変わらず無駄がないエミールである。

「今回、正式にオーレリア様が婚約された事で、今後、この国の植物の研究を本格的に始める事になりました。

 施設は城の敷地内で考えています。ファートム先生とオーレリア様には、施設の管理と研究を手伝っていただきたいのです」


「とても名誉な! ぜひ、やらせていただきます!」

 ファースト先生は両手を握って嬉しそうである。オーレリアと同レベルの植物好きなだけある。


「あの、研究とは具体的にどんな事をするのでしょうか?」

 オーレリアがエミールへ質問する。

「貴重な植物、絶滅危惧種の保存、栽培を行う研究です」


 栽培室は、オーレリアの植物を育てる魔法があってこその施設である。

 城の敷地内ということは、将来的に城に住むオーレリアが通いやすいように、との配慮だろう。それがわかっていてもなお、魅力的である。


「私もぜひ! やらせてください」

 氷の国に骨を埋める覚悟をした、オーレリアであった。


 ◇


 しかし、いざ栽培室を作るとなったのに、庭が潰れると渋ったのは、城の庭師達だった。

「そんなに言うなら、その妖精の姫の力を見せてくれないか?」

「この植物の花を咲かせられたら、栽培室を建てることを了承しよう」

 なんだかんだ条件を付けてきたようで、エミールは困りながらも、渋々条件をのんだ。


 リュウゼツラン(竜舌蘭)という花がある。

 龍の舌のように葉が尖っていて、縁にトゲがあることからこの名前が付けられた。

 見た目はアロエのような植物で、花を咲かせるのは三十年〜五十年に一度だけ。


 栽培室を作る条件は、この珍しい花を咲かせること。

 つまり、何十年分もの魔力を注がないと花は咲かないという事だ。


 エミールはオーレリアに謝る。

「オーレリア様、本当に申し訳ない。しかし、庭師の了承を得ないとどうしても工事がすすめられなくて……」

 翌日の放課後、お城に呼ばれたオーレリアは、心配だと付いてきたレックスと共に、庭師の方々と城の庭にいた。

「いえいえ、そういう事で納得いただけるのならありがたい事です」

 オーレリアが答える。


「本当に咲かせられるのか?」「あんな若い女の子に出来るのか?」

 話し声は聞こえるが、何とも思わないオーレリアである。


 目の前には珍しい植物、リュウゼツランがある。

 皆、どうだやってみろという表情をしている。


「では、咲かせますね」

 オーレリアが魔力を込める。

 五十年分なら、少し気合を入れて魔力を貯めよう。

 足元に魔法陣が現れる。辺りが光に溢れ、その光がリュウゼツランへと注がれる。

 神秘的な現象に、皆釘付けである。

 光が消える。固唾を飲んで見守る庭師達。


「なんだ、何も起きないじゃないか!」

 一人が声をあげたが、すぐに静かになった。

 それは、リュウゼツランの形が変わっていったからだ。アロエのような形から、茎がどんどん伸びていく。

「すごい」「一気に成長している」


 するとその茎の部分から、筒状の黄色の花が一斉に咲き始めた。


 庭師達は驚愕の表情をしている。

「本当に咲いた……」「まさか生きてる間に見られるとは!」「君、すごいな!」「信じられない」


 エミールがオーレリアを見る。

「さすがです。オーレリア様」

「そんな、たいした事では……!」

 オーレリアは顔の前で手を振っている。

 五十年分の魔力を使って咲かせたというのに、疲れた様子は見られない。

「オーレリアはすごいな!」

 レックスも感動している。

「えへへ、レックスまで、褒めてくれてありがとう」

 どうやら合格らしい事がわかって、オーレリアは笑顔になった。


 これで栽培室の建設が確定となった。

読んでいただき、ありがとうございます。

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