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レース先生の召喚獣の授業である。
皆、庭に集まって話を聞いている。
「自分の召喚獣と仲良くなる事で、今よりもっと強い力が出るのですよ」
「なるほど……」
そういえば、魔術士に攻撃を放った時、咄嗟に「グレイス」って呼び捨てにしてた。呼吸が合っていたように、あの時の魔法はとても早かった。
「では、皆さん召喚してみましょう!」
次々と召喚獣が現れる。
「スキンシップが大事です。信頼関係を築きましょう」
レックスが紅龍を撫でている。
あの炎を吐いた龍と同じとは思えないほど、リラックスしている。今にもねむそうだ。
エイラも白い狐をもふもふしている。もふもふしているエイラも、されている白狐も、とても気持ちよさそうである。後で触らせてもらいたい。
オーレリアは……グレイスと向かい合う。
「オーレリア、これは何の授業だ?」
グレイスが周りをみて訊ねる。
「召喚獣との信頼関係を築く授業」
「なるほどなぁ。我との信頼関係となると、撫でられるわけにもいかんし……」
オーレリアは少し想像してみて、首を振る。
「我がオーレリアを撫でるのは……レックスが怒りそうだな!」
グレイスは笑っているが、オーレリアは何だか遠くから視線を感じた。
「冗談はさておき、グレイスを呼び捨てにしたあの時、魔法を使う速さが段違いだったんです。だから、信頼関係は必要なんだと思っていて、まずはタメ口から始めようかと」
オーレリアが説明する。
「そうか。了解した」
オーレリアは少し考えた。
「グレイスの事、もっと教えてもらおうかな? 氷の妖精王って普段何してるの?」
グレイスは笑った。
「そうだなぁ、我は大体寝てるか、お菓子食べてるか……」
不摂生である。
「けっこう怠惰な生活してるんだ」
「我は妖精だからな。気ままに過ごしているのだ。オーレリアはどうなんだ?」
「私? 私は学園通って、植物育てて、ご飯食べて寝てるよ!」
グレイスは首を振る。
「そうじゃない。一日の過ごし方じゃなくて、何が好きか何が嫌いか……オーレリアの事を教えてくれ」
自分の話をするのは少し照れくさい。
「私が好きなのは、植物! 嫌いというか苦手なのはダンス! グレイスってダンス踊れるの?」
「我は踊れん。音楽に乗ることができん」
「確かに、グレイスのダンス姿想像できない」
オーレリアは想像して笑っている。
授業が終わるまで、二人は話した。
「またお茶会しよう!」
「そうだな!」
最後は友達のようになった。
「では、今日の授業はこれで終わります。オーレリアさん、放課後職員室へ来てもらえますか?」
召喚の授業終わり、またレース先生に呼び出された。
「え! はい……」
また呼び出された! 今度は一体?
ーーーー
「失礼します……」
オーレリアは今、警戒心の塊である。
「オーレリアさん! 来ましたね!」
オーレリアが職員室へ入るとすぐ、ファートム先生が声をかけてきた。
何だか嬉しそうである。
「先生どうしたんですか?」
「それがね!」
ファートムの顔が輝いている。
「ファートム先生、その説明はこちらで。オーレリアさんもどうぞ」
レース先生に別室へ案内される。
そこには国王の側近、エミールがいた。
「お時間いただき感謝します。では、早速本題へ……」
相変わらず無駄がないエミールである。
「今回、正式にオーレリア様が婚約された事で、今後、この国の植物の研究を本格的に始める事になりました。
施設は城の敷地内で考えています。ファートム先生とオーレリア様には、施設の管理と研究を手伝っていただきたいのです」
「とても名誉な! ぜひ、やらせていただきます!」
ファースト先生は両手を握って嬉しそうである。オーレリアと同レベルの植物好きなだけある。
「あの、研究とは具体的にどんな事をするのでしょうか?」
オーレリアがエミールへ質問する。
「貴重な植物、絶滅危惧種の保存、栽培を行う研究です」
栽培室は、オーレリアの植物を育てる魔法があってこその施設である。
城の敷地内ということは、将来的に城に住むオーレリアが通いやすいように、との配慮だろう。それがわかっていてもなお、魅力的である。
「私もぜひ! やらせてください」
氷の国に骨を埋める覚悟をした、オーレリアであった。
◇
しかし、いざ栽培室を作るとなったのに、庭が潰れると渋ったのは、城の庭師達だった。
「そんなに言うなら、その妖精の姫の力を見せてくれないか?」
「この植物の花を咲かせられたら、栽培室を建てることを了承しよう」
なんだかんだ条件を付けてきたようで、エミールは困りながらも、渋々条件をのんだ。
リュウゼツラン(竜舌蘭)という花がある。
龍の舌のように葉が尖っていて、縁にトゲがあることからこの名前が付けられた。
見た目はアロエのような植物で、花を咲かせるのは三十年〜五十年に一度だけ。
栽培室を作る条件は、この珍しい花を咲かせること。
つまり、何十年分もの魔力を注がないと花は咲かないという事だ。
エミールはオーレリアに謝る。
「オーレリア様、本当に申し訳ない。しかし、庭師の了承を得ないとどうしても工事がすすめられなくて……」
翌日の放課後、お城に呼ばれたオーレリアは、心配だと付いてきたレックスと共に、庭師の方々と城の庭にいた。
「いえいえ、そういう事で納得いただけるのならありがたい事です」
オーレリアが答える。
「本当に咲かせられるのか?」「あんな若い女の子に出来るのか?」
話し声は聞こえるが、何とも思わないオーレリアである。
目の前には珍しい植物、リュウゼツランがある。
皆、どうだやってみろという表情をしている。
「では、咲かせますね」
オーレリアが魔力を込める。
五十年分なら、少し気合を入れて魔力を貯めよう。
足元に魔法陣が現れる。辺りが光に溢れ、その光がリュウゼツランへと注がれる。
神秘的な現象に、皆釘付けである。
光が消える。固唾を飲んで見守る庭師達。
「なんだ、何も起きないじゃないか!」
一人が声をあげたが、すぐに静かになった。
それは、リュウゼツランの形が変わっていったからだ。アロエのような形から、茎がどんどん伸びていく。
「すごい」「一気に成長している」
するとその茎の部分から、筒状の黄色の花が一斉に咲き始めた。
庭師達は驚愕の表情をしている。
「本当に咲いた……」「まさか生きてる間に見られるとは!」「君、すごいな!」「信じられない」
エミールがオーレリアを見る。
「さすがです。オーレリア様」
「そんな、たいした事では……!」
オーレリアは顔の前で手を振っている。
五十年分の魔力を使って咲かせたというのに、疲れた様子は見られない。
「オーレリアはすごいな!」
レックスも感動している。
「えへへ、レックスまで、褒めてくれてありがとう」
どうやら合格らしい事がわかって、オーレリアは笑顔になった。
これで栽培室の建設が確定となった。
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