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妖精の国の姫、氷の国へ留学する  作者: 紙絵
第二部

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27/45

3

 ウォルドと魔術士は、氷の国の牢へ入れられた。

 しかしウォルドはオーレリアの父であり、王族である。この国で罪を裁くことはできない。

そのため、魔術士へ手を貸したという事で妖精の国へ送還される。氷の国へは二度と入国できないだろう。


 オーレリアは迷ったが、父と面会する事にした。被害者であるが、娘でもある。

「オーレリア・セイブルです。ウォルド・セイブルとの面談に参りました」

 守衛が門を開ける。


 父は捕まって、しばらくすると正気に戻ったらしい。ここが氷の国だと知ると、凄く驚いていて、自分がどうやってこの国に来たのかも覚えていないようだった。ただ、暗闇からの声に応えたことは覚えていたそうだ。


「オーレリア……久しぶりだな。その、今回のことは本当に悪かった」


 父が謝罪した。

 

 お父様が謝るなんて

 未だかつて私に謝った事があっただろうか?

 オーレリアは驚きすぎて声も出ない。


「妖精の国へ帰ったら、もしかしたら私は、王族ではなくなるかもしれない。そうしたらお前も、婚約解消されてしまうな……」


 ん? そうなるのか?


「小さい時から、私はお前をないがしろにしてきた。その報いを受けたんだな」


 オーレリアは面会を終え、ぼんやり考えていた。婚約解消されたら、私は妖精の国へ戻るという事だ。王族でない私は、この留学の条件に合っていない。

 ここへ来た時は、この氷の国にずっと住むなんて事を考えもしなかったのに。

 今は不安でたまらない。


「オーレリア、面会はどうだった?」

 目の前にレックスが立っている。迎えに来てくれたらしい。

「あの、レックス……」

 うまく言葉が出てこない。

 レックスがいつもと違うオーレリアの様子に気付き、駆け寄る。

「どうした?」

 優しい瞳がオーレリアを覗き込む。


「私が王族じゃなくなったら、どうなるの?」

「ん? どうなるって?」

 レックスが聞き返す。

「この留学とか、婚約とか……全部無しになる?」

 オーレリアは上目遣いでレックスを見上げる。その目は不安でいっぱいだ。

「何言ってるんだ、オーレリア? そんなわけないだろ。王族かどうかなんて、もう関係ないよ?」

 レックスが少し驚いている。

「でも、平民の私が王子のレックスと結婚するなんて……」

 レックスが少し真剣な顔になる。

「オーレリアじゃないと駄目なんだ。魔力がある姫だから君が選ばれたけど、そんな事を知る前だって、俺は君に惹かれてたよ?」

 オーレリアは赤面する。

「そ、それは、でも春を取り戻す力が必要なんじゃ……?」

「この国としてはそうだけど、俺はオーレリアを返す気はない」

 断言するレックスに、目が離せなかった。不安を一掃されたオーレリアは、レックスに救われた。

「レックスありがとう」

「うん。そこは大好きとか言ってほしいな!」

「……それはまだ」

手を繋いで寮へ帰る二人は幸せそうだった。


ーーーー


 魔術士は取り調べの後、やはり妖精の国へ送還される予定だ。

 散々文句を言っているようだ。そして、王族の誰かに取り入って事件を起こしたかったと自白した。

 嫌いな王族共々、オーレリアを狙ったようである。


 魔道具の鏡は調査の結果、魔力を込めるとそれを跳ね返せる魔道具らしい。

「あれを使って、ムカつくやつに魔力を放ってやろうと思ったんだ!」

 と、魔術士は騒いでたらしい。

 あの鏡をどこから手に入れたのか、それはまだ調査中である。



 あの事件の後、学園はまた不安が渦巻いていた。生徒は一人でいるのを怖がり、庭に出る者も少ない。オーレリアが攫われているのだ、無理もない……


 しかし、授業再開の日、何事もなかったように庭で日向ぼっこをし、授業を受けているオーレリアに、皆目を丸くした。


「オーレリア様……体調はもういいのですか?」

「無理せずとも休んだらいいのでは?」

 クラスメイトはオーレリアを心配した。

「ありがとうございます。でも、犯人も捕まりましたし、私も無事でしたし、大丈夫ですよ」

 あまりに何ともなさそうな彼女を目の当たりにし、学園は平穏を取り戻していった。


 ただ、ある噂が流れた。

 オーレリアはわざと捕まり、犯人を制圧したという噂だ。


 確かに、犯人に攻撃したし、氷漬けにしたけど……


「さすが氷の妖精王を召喚する姫だ」「将来はレックス様と一緒に、騎士団へ入隊するって噂もあるらしい」「戦える姫なんて、カッコいい!」

 噂の一人歩きは慣れている。

 しかし、微妙な噂に内心苦笑いのオーレリアである。


 その噂を聞いたレックスは、笑いを堪えていたのだった。

読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。

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