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ウォルドと魔術士は、氷の国の牢へ入れられた。
しかしウォルドはオーレリアの父であり、王族である。この国で罪を裁くことはできない。
そのため、魔術士へ手を貸したという事で妖精の国へ送還される。氷の国へは二度と入国できないだろう。
オーレリアは迷ったが、父と面会する事にした。被害者であるが、娘でもある。
「オーレリア・セイブルです。ウォルド・セイブルとの面談に参りました」
守衛が門を開ける。
父は捕まって、しばらくすると正気に戻ったらしい。ここが氷の国だと知ると、凄く驚いていて、自分がどうやってこの国に来たのかも覚えていないようだった。ただ、暗闇からの声に応えたことは覚えていたそうだ。
「オーレリア……久しぶりだな。その、今回のことは本当に悪かった」
父が謝罪した。
お父様が謝るなんて
未だかつて私に謝った事があっただろうか?
オーレリアは驚きすぎて声も出ない。
「妖精の国へ帰ったら、もしかしたら私は、王族ではなくなるかもしれない。そうしたらお前も、婚約解消されてしまうな……」
ん? そうなるのか?
「小さい時から、私はお前をないがしろにしてきた。その報いを受けたんだな」
オーレリアは面会を終え、ぼんやり考えていた。婚約解消されたら、私は妖精の国へ戻るという事だ。王族でない私は、この留学の条件に合っていない。
ここへ来た時は、この氷の国にずっと住むなんて事を考えもしなかったのに。
今は不安でたまらない。
「オーレリア、面会はどうだった?」
目の前にレックスが立っている。迎えに来てくれたらしい。
「あの、レックス……」
うまく言葉が出てこない。
レックスがいつもと違うオーレリアの様子に気付き、駆け寄る。
「どうした?」
優しい瞳がオーレリアを覗き込む。
「私が王族じゃなくなったら、どうなるの?」
「ん? どうなるって?」
レックスが聞き返す。
「この留学とか、婚約とか……全部無しになる?」
オーレリアは上目遣いでレックスを見上げる。その目は不安でいっぱいだ。
「何言ってるんだ、オーレリア? そんなわけないだろ。王族かどうかなんて、もう関係ないよ?」
レックスが少し驚いている。
「でも、平民の私が王子のレックスと結婚するなんて……」
レックスが少し真剣な顔になる。
「オーレリアじゃないと駄目なんだ。魔力がある姫だから君が選ばれたけど、そんな事を知る前だって、俺は君に惹かれてたよ?」
オーレリアは赤面する。
「そ、それは、でも春を取り戻す力が必要なんじゃ……?」
「この国としてはそうだけど、俺はオーレリアを返す気はない」
断言するレックスに、目が離せなかった。不安を一掃されたオーレリアは、レックスに救われた。
「レックスありがとう」
「うん。そこは大好きとか言ってほしいな!」
「……それはまだ」
手を繋いで寮へ帰る二人は幸せそうだった。
ーーーー
魔術士は取り調べの後、やはり妖精の国へ送還される予定だ。
散々文句を言っているようだ。そして、王族の誰かに取り入って事件を起こしたかったと自白した。
嫌いな王族共々、オーレリアを狙ったようである。
魔道具の鏡は調査の結果、魔力を込めるとそれを跳ね返せる魔道具らしい。
「あれを使って、ムカつくやつに魔力を放ってやろうと思ったんだ!」
と、魔術士は騒いでたらしい。
あの鏡をどこから手に入れたのか、それはまだ調査中である。
◇
あの事件の後、学園はまた不安が渦巻いていた。生徒は一人でいるのを怖がり、庭に出る者も少ない。オーレリアが攫われているのだ、無理もない……
しかし、授業再開の日、何事もなかったように庭で日向ぼっこをし、授業を受けているオーレリアに、皆目を丸くした。
「オーレリア様……体調はもういいのですか?」
「無理せずとも休んだらいいのでは?」
クラスメイトはオーレリアを心配した。
「ありがとうございます。でも、犯人も捕まりましたし、私も無事でしたし、大丈夫ですよ」
あまりに何ともなさそうな彼女を目の当たりにし、学園は平穏を取り戻していった。
ただ、ある噂が流れた。
オーレリアはわざと捕まり、犯人を制圧したという噂だ。
確かに、犯人に攻撃したし、氷漬けにしたけど……
「さすが氷の妖精王を召喚する姫だ」「将来はレックス様と一緒に、騎士団へ入隊するって噂もあるらしい」「戦える姫なんて、カッコいい!」
噂の一人歩きは慣れている。
しかし、微妙な噂に内心苦笑いのオーレリアである。
その噂を聞いたレックスは、笑いを堪えていたのだった。
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