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次にオーレリアが目を覚ますと、横にレックスが座っていた。
「レックス?」
「オーレリア大丈夫かい?」
自分の手を見る。いつもの私の掌の大きさだ。さっきは子どもになっていた。今これは現実か?
次はベンチに座っているようだ。目の前には満開の桜の木がある……
「オーレリア、君の魔力を見せてくれないか?」
「いいよ。どんな魔法で見せる?」
「この鏡に魔力を込めてくれ」
オーレリアは集中して自分の魔力を感じる。
「レックスは私の事どう思う?」
突然オーレリアは質問する。
「え? 素敵な婚約者だと思ってるよ」
オーレリアはニヤッと笑う。
早口で呪文を唱え、レックスに向けて爆風を飛ばす。
もろに当たったレックスは、持っていた鏡を落とし、飛ばされていく。
オーレリアは咄嗟に鏡を拾い、ポケットに隠した。
空中で体勢を立て直し、レックスが止まる。
空飛べるなんて! 羨ましい!
「なぜ分かった?」
見た目はレックスだが、声が変わった。あのしゃがれ声だ。
「これは現実じゃない。今桜は散っているはず。それに……質問の答えはハズレ、あなたは誰?」
「操れないとは……つまらないな!」
周りの空間が変わる。木々が立ち並んでいる。
学園の林の中のようだ。
声の主の見た目が変わる。黒いローブを着た男だは不敵に笑っている。
「俺は魔術士だ。お前は落ちぶれた王女だろう? それなのに、それなのに、うまくやりやがって!」
急に声を荒げる男。
「妖精の国で一番下のプリンセス。俺は自分より下のヤツを見ているのが好きなんだ。お前は姫とは程遠い扱いだっただろ? 見ているのに、ちょうど良い暇潰しだった。
それなのに、他国へ追い出されたと思ったら、王子と婚約だと? ふざけるな! 俺より下のお前が、俺より幸せになっていいはずがない」
オーレリアはダラダラと話す男を、冷めた目で見つめていた。
逆恨みというか何というか……それより、グレイス様は……
「私は昔から幸せだった。もちろん今も。王子と婚約したから幸せになるわけじゃないの。勘違いしないでほしい」
オーレリアは召喚の呪文を唱える。
「オーレリア! 良かった! やっと戻れた!」
グレイスが光ながら現れ、現れついでに男に攻撃した。
「くっ!」
間一髪避けたらしい。腕の一部が凍っている。
騒ぎを聞きつけて、騎士団がこちらに向かってくる。
それを察知した男、
「今日はこの辺で勘弁してやる!」
男が悪役そのもののセリフを言ったその時、上から炎が降ってきた。紅龍だ!
「焼け焦げろ」
レックスが激しい怒りを、静かに男へ向けている。
オーレリアは息を呑んだ。
このままだと焼けてしまう!
「グレイス!」
グレイスは氷で男を包んだ。焼き焦げる前に、彼は氷漬けになった。
「あ、危なかった……」
オーレリアがホッとする。
龍からレックスが飛び降り、早足でオーレリアへ向かってくる。
怒ってる?
「レックスごめん! でも焼けちゃったら、どうやってこの国に忍び込んだとか、何の目的でとか全部分かんなくなっちゃうから……」
レックスはオーレリアを強く抱きしめた。
「……よかった。無事で……」
その声は小さく、泣き出しそうだった。
「……レックス」
オーレリアもレックスを抱きしめた。
「!」
「お返し」
オーレリアが照れながらも笑う。
それを見て、レックスも優しい顔で笑った。
「オーレリア、魔道具の気配がするが……」
グレイスが指摘する。
「あ!」
オーレリアはポケットから鏡を取り出した。
「それは?」
グレイスとレックスが注目する。
「あの男が、私にこの鏡に魔力を込めろって言ってたの。これ、何だろう?」
追いついてきた騎士団が男を拘束している。
「調べてもらおう。ノックいるか?」
「はいっ! オーレリア様、ご無事でよかったです……」
ノックは敬礼しながら涙ぐんでいる。
「心配してくれてありがとう」
オーレリアは微笑む。
「これを調べてほしい。男が持っていた物だ」
「はっ!」
ノックは鏡を受け取り、騎士団の元へと戻っていった。
「オーレリアも一旦城へ行こう。ゆっくり休むんだぞ?」
「うん、わかった。あのレックス? そろそろこの手……」
レックスはオーレリアの手をずっと握っている。
「駄目だ。また俺の前からいなくなったら耐えられない。安心できる所へ行くまでは離さないからな!」
すごい剣幕だ。
「ひぇ……」
「オーレリア、レックスはとても心配してたんだ。それくらい許してやれ」
グレイスが浮かびながら苦笑している。
「グレイス様!」
「さっき呼び捨てにしただろう? 様はいらん」
「気付いてたんですね……」
バレていないと思っていたのに。
「我は帰る。疲れた。用があれば呼べ」
辺りが光り、グレイスは消えた。
移動魔法でレックスと共に城へ着く。
まだ手を離さない。
「もう大丈夫じゃない?」
「オーレリアの部屋へ行くまで駄目」
「私の部屋?」
「婚約者の部屋があるのは当たり前だ。将来ここに住むんだからな。因みに、俺の部屋と繋がってる」
「え?」
「まぁ、鍵は出来るから大丈夫だろ」
オーレリアは言葉が出ない。
手を繋ぐだけでこんなに挙動不審になるのに、部屋が隣で、繋がってるってどういう事!
「まぁ、俺はまだ仕事が残ってるから部屋にはいないよ。安心して休んで。彼女をお願いする」
「お任せください!」
メイド達にオーレリアを任せ、やっと手を離したレックスは部屋を後にした。
幻術を受けていた彼女は、医者の診察を受けた。
「これ弾いてるね、幻術かからなかったでしょ?」
おじいさんのお医者さんは感心している。
「幻術弾くって、今まで初めて見たよ。君、魔力多いんだね。今後の対策になるかもしれないから、弾く方法教えてくれない?」
意見を求められるオーレリア。
「方法ですか、えっと、おかしいなって所を指摘してですね。自分を強く持つというか。あ、でも眠らされちゃうのはどうしようもなくて……」
なぜか、お医者さんと幻術について語り合う事になったのだった。
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