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妖精の国の姫、氷の国へ留学する  作者: 紙絵
第二部

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25/45

1

 授業が終わり、オーレリアは一人温室へと向かっていた。レックスはクラス長会議があるとかで、鍵はオーレリアが預かっている。


 暖かい春になったが、温室の植物の事も忘れてはいけない。しっかりお世話してあげないと!

 オーレリアが魔法を使えば、お世話する事もほぼないのだが、ただ愛でたいだけである。


 それは突然起きた。大きな破裂音が聞こえた。


 学園は魔法の防御が施されている。

 それが大きな音をたてて消えたということは、悪意のあるモノが侵入した合図である。


 職員は対応に追われる。

 生徒は速やかに寮へ戻るよう伝えられる。

「どうしたんだろう?」「先生達すごいバタバタしてるよね?」「あの音、防御が消えた?」「怖い」

 皆、不安になりながら校舎を出ていく。


「エイラ様、寮までお送りします」

「カイル、オーレリアは?」

「見当たりません!」

「きっと温室よ! 行きましょう」

「なりません。オーレリアは妖精王が付いております。今ノックがレックス様に伝えていますので、エイラ様は私と共にいて下さい」

「……分かったわ」

 エイラはとても不安になった。


 辺りが光り、グレイスが現れる。

「オーレリア、何者かが侵入したようだな?」

「グレイス様! 侵入ですか?」

「あぁ。あの音はおそらく防御魔法が破られた合図だ。オーレリアも早く皆がいる所へ戻ろう」


 温室へ向かう道にはオーレリアしかいない。確かに、ここで侵入者に鉢合わせたらまずい。


「オーレリアか?」

 どこからか呼ぶ声がする。

「声が……」

「あの木の後ろに誰かいる!」

 グレイスが杖を向ける。


「……お父様?」

 木に隠れながら自分を呼ぶのはオーレリアの父、ウォルドだ。


 なぜここに?


「お父様なのですか?」

 オーレリアが問うも、返事はない。ただこちらをじっと見ている。


 ウォルドは一歩こちらへ踏み出す。

「オーレリアよ。父と一緒に来い」


 父はもっとビクビクしている人だった。あの自信にあふれた姿はなんだ?


 グレイスが間に入る。

「やめろ! 凍らされたくなければ動くな」

 ウォルドはニヤッと笑う。


「できるものならやってみろ」

 ウォルドの口から発しているが、そのしゃがれ声は彼のものではない。

 グレイスが杖を振るうと同時に、後ろにいたオーレリアが消えた。

 目の前のウォルドは氷漬けになっている。


 二人いたのか!

 全く気配に気付かなかった。


 ーーーー


 暗闇に引きずり込まれるオーレリアは、意識を失う。


 目が覚めると、そこは見慣れた天井……

 幼い時から住んでいる、妖精の国の自分の家である。簡素な作りの部屋、とても姫が住んでいるとは思えない。


「あれ? 私……」

 ベットに寝ている。起き上がり、室内を見回す。特に変わった所はない。

 なんだか頭がぼーっとする。

 鏡を見て驚いた。

 そこには小さな子どもが写っていた。


 ドアが開く。

「起きたのね?」

 そこから入ってきたのは、綺麗な女性。

 それは昔、一度だけ見せてもらった写真の女の人……

「お母様?」

 私を産んですぐ亡くなったはずでは?

「オーレリア大丈夫? さっき転んで頭を打ったのよ。覚えてる?」

「私は一七歳のはず。ここは何?」

「まだ混乱してるのよ、もう一度眠れば大丈夫」

 オーレリアはベットに寝かされる。

「あの!」

「しー…。おやすみオーレリア」

 抗えない眠気が彼女を襲う。


 おかしい。これは魔術……?


 ◇


 オーレリアが攫われた。

 城の警護の騎士団にそれは伝えられた。

「おそらく移動魔法だ。他国へは行っていないはず!」

「彼女の魔力を使いたいのなら、危険な目にはあっていないと思うが……」

「お父様と言っていた……妖精の国の者なのは確かだろう」

 騎士団、グレイスも焦っている。


「なぜだかオーレリアの元へ戻れないのだ。何らかの魔術だと思うが……」

 まさか、自分の目の前で攫われるとは! 平和ボケか、腕が鈍った。不甲斐ない!


「自国で人目に付かない場所、妖精の国の者なら地の利はないはずだが……」

 レックスは冷静に分析している。


 こやつ、婚約者が連れ去られたのにえらい冷静だな?


「レックス……」

 グレイスは声をかけるのを躊躇った。

 その目はとてつもなく冷たかった。握りしめた手が震えている。

 今まで見た事がないレックスがそこにいた。

読んでいただき、ありがとうございます。

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