1
授業が終わり、オーレリアは一人温室へと向かっていた。レックスはクラス長会議があるとかで、鍵はオーレリアが預かっている。
暖かい春になったが、温室の植物の事も忘れてはいけない。しっかりお世話してあげないと!
オーレリアが魔法を使えば、お世話する事もほぼないのだが、ただ愛でたいだけである。
それは突然起きた。大きな破裂音が聞こえた。
学園は魔法の防御が施されている。
それが大きな音をたてて消えたということは、悪意のあるモノが侵入した合図である。
職員は対応に追われる。
生徒は速やかに寮へ戻るよう伝えられる。
「どうしたんだろう?」「先生達すごいバタバタしてるよね?」「あの音、防御が消えた?」「怖い」
皆、不安になりながら校舎を出ていく。
「エイラ様、寮までお送りします」
「カイル、オーレリアは?」
「見当たりません!」
「きっと温室よ! 行きましょう」
「なりません。オーレリアは妖精王が付いております。今ノックがレックス様に伝えていますので、エイラ様は私と共にいて下さい」
「……分かったわ」
エイラはとても不安になった。
辺りが光り、グレイスが現れる。
「オーレリア、何者かが侵入したようだな?」
「グレイス様! 侵入ですか?」
「あぁ。あの音はおそらく防御魔法が破られた合図だ。オーレリアも早く皆がいる所へ戻ろう」
温室へ向かう道にはオーレリアしかいない。確かに、ここで侵入者に鉢合わせたらまずい。
「オーレリアか?」
どこからか呼ぶ声がする。
「声が……」
「あの木の後ろに誰かいる!」
グレイスが杖を向ける。
「……お父様?」
木に隠れながら自分を呼ぶのはオーレリアの父、ウォルドだ。
なぜここに?
「お父様なのですか?」
オーレリアが問うも、返事はない。ただこちらをじっと見ている。
ウォルドは一歩こちらへ踏み出す。
「オーレリアよ。父と一緒に来い」
父はもっとビクビクしている人だった。あの自信にあふれた姿はなんだ?
グレイスが間に入る。
「やめろ! 凍らされたくなければ動くな」
ウォルドはニヤッと笑う。
「できるものならやってみろ」
ウォルドの口から発しているが、そのしゃがれ声は彼のものではない。
グレイスが杖を振るうと同時に、後ろにいたオーレリアが消えた。
目の前のウォルドは氷漬けになっている。
二人いたのか!
全く気配に気付かなかった。
ーーーー
暗闇に引きずり込まれるオーレリアは、意識を失う。
目が覚めると、そこは見慣れた天井……
幼い時から住んでいる、妖精の国の自分の家である。簡素な作りの部屋、とても姫が住んでいるとは思えない。
「あれ? 私……」
ベットに寝ている。起き上がり、室内を見回す。特に変わった所はない。
なんだか頭がぼーっとする。
鏡を見て驚いた。
そこには小さな子どもが写っていた。
ドアが開く。
「起きたのね?」
そこから入ってきたのは、綺麗な女性。
それは昔、一度だけ見せてもらった写真の女の人……
「お母様?」
私を産んですぐ亡くなったはずでは?
「オーレリア大丈夫? さっき転んで頭を打ったのよ。覚えてる?」
「私は一七歳のはず。ここは何?」
「まだ混乱してるのよ、もう一度眠れば大丈夫」
オーレリアはベットに寝かされる。
「あの!」
「しー…。おやすみオーレリア」
抗えない眠気が彼女を襲う。
おかしい。これは魔術……?
◇
オーレリアが攫われた。
城の警護の騎士団にそれは伝えられた。
「おそらく移動魔法だ。他国へは行っていないはず!」
「彼女の魔力を使いたいのなら、危険な目にはあっていないと思うが……」
「お父様と言っていた……妖精の国の者なのは確かだろう」
騎士団、グレイスも焦っている。
「なぜだかオーレリアの元へ戻れないのだ。何らかの魔術だと思うが……」
まさか、自分の目の前で攫われるとは! 平和ボケか、腕が鈍った。不甲斐ない!
「自国で人目に付かない場所、妖精の国の者なら地の利はないはずだが……」
レックスは冷静に分析している。
こやつ、婚約者が連れ去られたのにえらい冷静だな?
「レックス……」
グレイスは声をかけるのを躊躇った。
その目はとてつもなく冷たかった。握りしめた手が震えている。
今まで見た事がないレックスがそこにいた。
読んでいただき、ありがとうございます。
感想、反応いただけると大変嬉しいです。
評価、レビュー、ブックマークお願いします!




