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会場に入ると、リリアとノエルが見えた。
「レックス! オーレリアも!」
ノエルが気付いて声をかけてきた。
「その節はお世話になりました」
オーレリアがリリアに挨拶する。
「素敵なドレスですね! 間に合ってよかった」
「ドレス? 間に合う?」
隣でポカンとするレックス。
「リリア様にドレスの仕立てについて相談していたの。私こんなパーティーあまり経験がなくて……本当にありがとうございました」
オーレリアとリリアは互いに微笑みあっている。
「……兄さん、俺のこと騙した?」
レックスの声は小さいが、有無を言わさない迫力がある。
「何のこと?」
ノエルはニコニコしているだけで何も言わない。
「俺のことけしかけるような事して、どういうつもり?」
怒りで素になっていることに、本人は気付いていない。
「レックス様、ノエルはあなたをからかっていたわけではないの」
リリアが横から声をかける。
「あ! 父上達だ。行こうかリリア。じゃあね二人とも」
ノエルはリリアを伴って行ってしまった。
「レックス大丈夫?」
オーレリアが心配している。
「大丈夫、ありがとう」
レックスは安心した。ノエルの意図はよく分からないが、とりあえずオーレリアは無事らしい。
エイラとサン王子が登場すると、会場は拍手で包まれた。
エイラはサン王子の瞳と同じ、赤のドレス姿。サン王子はエイラの瞳の紫のタキシード。二人の頭上にはそれぞれ王冠が乗っている。
「本日は私達の婚約パーティーにご列席くださり、ありがとうございます」
サン王子が挨拶する。二人は時々、顔を見合わせて微笑んでいる。とても幸せそうだ。
「エイラ、幸せそうで良かった。サン王子に会う前はあんまり乗り気じゃなかったけど、好きな人が婚約者になるなんて良かったよね!」
オーレリアがレックスへ話しかける。
「そうだな。普通、俺たちは結婚に夢なんか持てないからな」
さらりと言った言葉になぜか胸が痛くなるオーレリア。
「オーレリア!」
エイラの呼ぶ声がした。
主役の二人がこちらへ駆け寄ってくる。
「エイラ、サン王子。婚約おめでとうございます」
オーレリアとレックスは形式的な挨拶をする。
「ありがとう」サン王子とエイラが答える。
「それより、ドレス! 私の瞳の色にしたのね! 嬉しい!」
大はしゃぎのエイラである。
「まさか、レックス様とペアで来るなんて! 大広間に入った瞬間、上からこっそり見てたけど、すごく素敵だったわ!」
エイラがうっとりしている。
「あはは、そう? なぜだか、レックスと来る事になっちゃって」
レックスがオーレリアを睨む。
「『なっちゃって』って何だよ?」
「じゃあ、成り行きで?」
「そうじゃないだろ!」
二人のやりとりを眺めて、サン王子が微笑む。
「お二人は仲が良いんですね? ぜひ二人の婚約パーティーには私も出席させてください」
「へ?」
固まるオーレリア。
「サン王子、気が早いですわ」
エイラがサン王子を見て微笑む。
「サン王子、エイラ姫、太陽の国の使者が到着されたようです」
従者が二人を呼ぶ。
「わかった。それじゃあ、私たちは挨拶へ行ってくる。楽しんでくれたまえ」
「オーレリア、また学校でね!」
二人は連れ立って歩いていく。これから挨拶まわりだろう。
パーティーは滞りなく進む。
嗜みとしてダンスは踊れるオーレリア。レックスと一緒にたどたどしくも踊ることができた。
「レックス様、私とも踊っていただけませんか?」
「私も!」
「オーレリア様、良ければ次は私と」
次々と申し込みされ、二人はヘトヘトになった。
「あの、私、少しお手洗いに……」
会場の外に出るオーレリア。
レックスはどこだろう?
おそらく、他の誰かと踊っているんだろう。王子である。モテるのも頷ける。
まぁ、カッコいいもんね。
大きな窓から外を眺める。魔法の光はとても綺麗だ。ここがもう少し暖かくなったら、外に散歩に出れるのに。
会場は熱気で溢れている。もう少しここで休憩しよう。
「オーレリア!」
レックスが走ってくる。
「レックス、ダンスはいいの?」
「うん、抜けてきた。オーレリアの姿見えないから、多分外かと思って」
探しに来てくれたんだ。
「……オーレリア、その、俺達の婚約の件だけど」
レックスが小さい声で話し出す。
「もう知ってると思うけど、太陽の国と縁がある俺と、魔力が強いオーレリアで婚約って話が出てて……」
知っているも何も、自分の召喚獣が国王に伝えてたからね。
「知ってる」
「そう? でもまだ、正式にそうなってるわけじゃないんだ。だから、その……」
こんなに歯切れの悪いレックスは珍しい。
「レックスは私と婚約するのは迷惑でしょ? 妖精の国には、まだ王女が五人もいるし、私より魔力の多い姫もいるかもしれない。きっと今それを調査している最中で、だからレックスの好きな姫に声をかけたらいいと思うよ」
レックスは衝撃を受けた顔をしている。
「私は一番下の姫だから、こんな大国の王女になるなんて器じゃない……」
「オーレリアがいい」
レックスの声で言葉が遮られる。
今なんて?
「俺は、オーレリアとがいい」
はっきりと、レックスが口にした。
レックスがオーレリアの手を取り、跪く。
「妖精の国のプリンセス、オーレリア・セイブル。あなたに正式に婚約を申し込みます」
オーレリアは衝撃で思考が停止した。
レックスが私に跪いている。そしてこれは婚約のお願い……!
言葉が出ないオーレリア。
レックスが優しく囁く。
「返事は?」
「はい!」
思わず返事をしていた。自分の返事に驚いていると、
「ふっ」
レックスが吹き出している。彼はいつもの笑顔で微笑むと、オーレリアの手のひらにキスをした。
信じられないが、私は婚約してしまったらしい。
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