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妖精の国の姫、氷の国へ留学する  作者: 紙絵
第一部

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22/23

22

 会場に入ると、リリアとノエルが見えた。

「レックス! オーレリアも!」

 ノエルが気付いて声をかけてきた。

「その節はお世話になりました」

 オーレリアがリリアに挨拶する。

「素敵なドレスですね! 間に合ってよかった」

「ドレス? 間に合う?」

 隣でポカンとするレックス。

「リリア様にドレスの仕立てについて相談していたの。私こんなパーティーあまり経験がなくて……本当にありがとうございました」

 オーレリアとリリアは互いに微笑みあっている。


「……兄さん、俺のこと騙した?」

 レックスの声は小さいが、有無を言わさない迫力がある。

「何のこと?」

 ノエルはニコニコしているだけで何も言わない。

「俺のことけしかけるような事して、どういうつもり?」

 怒りで素になっていることに、本人は気付いていない。

「レックス様、ノエルはあなたをからかっていたわけではないの」

 リリアが横から声をかける。

「あ! 父上達だ。行こうかリリア。じゃあね二人とも」

 ノエルはリリアを伴って行ってしまった。

「レックス大丈夫?」

 オーレリアが心配している。

「大丈夫、ありがとう」

 レックスは安心した。ノエルの意図はよく分からないが、とりあえずオーレリアは無事らしい。


 エイラとサン王子が登場すると、会場は拍手で包まれた。

 エイラはサン王子の瞳と同じ、赤のドレス姿。サン王子はエイラの瞳の紫のタキシード。二人の頭上にはそれぞれ王冠が乗っている。

「本日は私達の婚約パーティーにご列席くださり、ありがとうございます」

 サン王子が挨拶する。二人は時々、顔を見合わせて微笑んでいる。とても幸せそうだ。

「エイラ、幸せそうで良かった。サン王子に会う前はあんまり乗り気じゃなかったけど、好きな人が婚約者になるなんて良かったよね!」

 オーレリアがレックスへ話しかける。

「そうだな。普通、俺たちは結婚に夢なんか持てないからな」

 さらりと言った言葉になぜか胸が痛くなるオーレリア。


「オーレリア!」

 エイラの呼ぶ声がした。

 主役の二人がこちらへ駆け寄ってくる。

「エイラ、サン王子。婚約おめでとうございます」

 オーレリアとレックスは形式的な挨拶をする。

「ありがとう」サン王子とエイラが答える。

「それより、ドレス! 私の瞳の色にしたのね! 嬉しい!」

 大はしゃぎのエイラである。

「まさか、レックス様とペアで来るなんて! 大広間に入った瞬間、上からこっそり見てたけど、すごく素敵だったわ!」

 エイラがうっとりしている。

「あはは、そう? なぜだか、レックスと来る事になっちゃって」

レックスがオーレリアを睨む。

「『なっちゃって』って何だよ?」

「じゃあ、成り行きで?」

「そうじゃないだろ!」

 二人のやりとりを眺めて、サン王子が微笑む。

「お二人は仲が良いんですね? ぜひ二人の婚約パーティーには私も出席させてください」

「へ?」

 固まるオーレリア。

「サン王子、気が早いですわ」

 エイラがサン王子を見て微笑む。

「サン王子、エイラ姫、太陽の国の使者が到着されたようです」

 従者が二人を呼ぶ。

「わかった。それじゃあ、私たちは挨拶へ行ってくる。楽しんでくれたまえ」

「オーレリア、また学校でね!」

 二人は連れ立って歩いていく。これから挨拶まわりだろう。


 パーティーは滞りなく進む。

 嗜みとしてダンスは踊れるオーレリア。レックスと一緒にたどたどしくも踊ることができた。

「レックス様、私とも踊っていただけませんか?」

「私も!」

「オーレリア様、良ければ次は私と」

 次々と申し込みされ、二人はヘトヘトになった。


「あの、私、少しお手洗いに……」

 会場の外に出るオーレリア。


 レックスはどこだろう?


 おそらく、他の誰かと踊っているんだろう。王子である。モテるのも頷ける。


 まぁ、カッコいいもんね。


 大きな窓から外を眺める。魔法の光はとても綺麗だ。ここがもう少し暖かくなったら、外に散歩に出れるのに。

 会場は熱気で溢れている。もう少しここで休憩しよう。

「オーレリア!」

 レックスが走ってくる。

「レックス、ダンスはいいの?」

「うん、抜けてきた。オーレリアの姿見えないから、多分外かと思って」


 探しに来てくれたんだ。


「……オーレリア、その、俺達の婚約の件だけど」

 レックスが小さい声で話し出す。

「もう知ってると思うけど、太陽の国と縁がある俺と、魔力が強いオーレリアで婚約って話が出てて……」


 知っているも何も、自分の召喚獣が国王に伝えてたからね。


「知ってる」

「そう? でもまだ、正式にそうなってるわけじゃないんだ。だから、その……」


 こんなに歯切れの悪いレックスは珍しい。


「レックスは私と婚約するのは迷惑でしょ? 妖精の国には、まだ王女が五人もいるし、私より魔力の多い姫もいるかもしれない。きっと今それを調査している最中で、だからレックスの好きな姫に声をかけたらいいと思うよ」

 レックスは衝撃を受けた顔をしている。

「私は一番下の姫だから、こんな大国の王女になるなんて器じゃない……」

「オーレリアがいい」

 レックスの声で言葉が遮られる。


 今なんて?


「俺は、オーレリアとがいい」

 はっきりと、レックスが口にした。


 レックスがオーレリアの手を取り、跪く。

「妖精の国のプリンセス、オーレリア・セイブル。あなたに正式に婚約を申し込みます」


 オーレリアは衝撃で思考が停止した。


 レックスが私に跪いている。そしてこれは婚約のお願い……!


 言葉が出ないオーレリア。

 レックスが優しく囁く。

「返事は?」

「はい!」

 思わず返事をしていた。自分の返事に驚いていると、

「ふっ」

 レックスが吹き出している。彼はいつもの笑顔で微笑むと、オーレリアの手のひらにキスをした。


 信じられないが、私は婚約してしまったらしい。

読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。

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