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妖精の国の姫、氷の国へ留学する  作者: 紙絵
第一部

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21

 婚約パーティーは、学園の生徒も参加する者が多い。皆、浮き足だっていた。

「どんなドレスにした?」

「誰と行くの?」

「俺、あの子誘ってみようかな!」


 ノエルはレックスに会いに寮へ向かった。

「ノエル様、どうしたんですか?」

 面倒くさそうな顔でレックスが現れる。

「婚約パーティーのペアは決まった?」

「まだです。ノエル様はリリア様と一緒でしたよね?」

「ああ。でもリリアが別の人と行くのも楽しいかもと言い出してね、オーレリアを誘ってみようか迷ってるんだ」

 レックスはまた機嫌が悪くなる。

「なぜ俺にそれを言う?」

 思わず素が出てしまう。

 昨夜の事を思い出すレックス。泣かせてしまった事を後悔して、また自分にイライラする。

「レックスがはっきりさせないと、僕が彼女を国へ帰さないようにどうにかするからね?」

 ノエルの目が光る。

「どういうことだ?」

「妖精の国へは帰さない。この国にいてもらうように、僕のものにするよ」

 レックスは血の気が引く。

「リリア様はどうするんだ?」

「彼女はわかってくれるさ。レックスが心配することじゃない。じゃあ、せいぜい誰かに盗られないようにね」

 レックスは立ち尽くしたまま、兄を見送った。


ーーーー


 放課後、席で荷物をまとめていると、声をかけられた。

「あの! オーレリア様」

 座ったまま、声の方を振り向くと、同じクラスの男子生徒が二人、隣に立っていた。

 一人が前に出る。


「私はリム・ライアンと申します。婚約パーティーに招待されているのですが、よかったらご一緒に……行っていただけませんでしょうか?」

 彼はオーレリアに礼をして、答えを待っている。

「えっと……」

 突然の誘いである。オーレリアは戸惑った。

 そもそも誰かと行くという選択肢が無かった。ペアで行った方が失礼にならないのだろうか? でも、この方はあまり知らない方だし……


 オーレリアとリムの間に入り込む人影。

「失礼、彼女は僕と一緒に行く事になっていてね。ごめんよ」

「そっそうだったんですか! それは失礼致しました。知らずに申し訳ありません」

 恐縮して彼は友人と去って行った。


「……レックス?」

 オーレリアが名前を呼ぶ。振り向いた顔は微笑んでいる。

「なんだい? オーレリア姫?」

 机に寄りかかってオーレリアを見つめている。

「いやいや、なんだいってなんだい?」

「ふふ。なんだその質問!」

 いつもの顔で笑うレックス。


「オーレリアは、俺と婚約パーティー行くんだよ。いい?」

 優しい笑顔で微笑む。さながら、物語に出てくる王子様である。

「え、あ、本当にそうなの?」

「そっ!」


 何だか最近、レックスに振り回されている気がする……


 よく分からないうちに、ペアで行く事が決まったのであった。


ーーーー


 エイラ、サン王子の婚約パーティー当日。


 学園の外には馬車が待機している。生徒達が馬車に乗り込む。

 オーレリアは緊張していた。お城でのパーティーなんて、物心ついてから初めての経験である。

 妖精の国の姫として出席するオーレリアは、バスに一人である。今までずっと一人だった彼女、でも今日は少し心細い。

 お城へ到着する。お城の従者がドアを開けてくれる。


 門をくぐる。降り立ったそこは、キラキラした空間であった。

 夜の庭は、魔法で光が空中で点滅している。まるで星が落ちてきたかのように、頭上で瞬く光の中、お城の中へと進む。

 ロビーにはドレス姿と、タキシード姿の人々が集まっていた。

 皆、とても華やかである。

 オーレリアがロビーへ足を踏み入れる。一瞬周りがざわつき、息を呑むのが分かった。

 彼女は薄い紫のドレスに身を包み、髪の毛は結い上げられ、その頭上には王族しか被れない王冠が乗っている。妖精の国から持参したそれは、王女の証として国の刻印と宝石が付いている。

 この王冠を被ったのは、戴冠式をしたであろう三歳の時だけだ。

「あれが妖精の国の姫」「美しい、まるで妖精のようだな」「彼女をエスコートするのは誰だ?」「でも第六王女よ!」

 色々な声が聞こえてくるが、オーレリアは萎縮しない。

 自国ではパーティーに出席することさえ叶わなかったのだ。まあ、そこまで興味もなかったが。友人の婚約パーティーにくる日が来ようとは、夢にも思わなかった。


「オーレリア」

 自分を呼ぶ声に振り返ると、そこには王冠を被っているレックスが立っていた。

「いつものオーレリアと違って、一瞬分からなかったよ」

 銀の衣装で正装したレックスを見て、周りの女達がため息をこぼしている。

「レックスはそんなに変わらないね?」

 オーレリアの手を取るレックス。

「そう? じゃあ、いつもカッコイイって事だね?」

「ふふふ、何言ってるの?」

「行こうか」



読んでいただき、ありがとうございます。

感想、反応いただけると大変嬉しいです。

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