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婚約パーティーは、学園の生徒も参加する者が多い。皆、浮き足だっていた。
「どんなドレスにした?」
「誰と行くの?」
「俺、あの子誘ってみようかな!」
ノエルはレックスに会いに寮へ向かった。
「ノエル様、どうしたんですか?」
面倒くさそうな顔でレックスが現れる。
「婚約パーティーのペアは決まった?」
「まだです。ノエル様はリリア様と一緒でしたよね?」
「ああ。でもリリアが別の人と行くのも楽しいかもと言い出してね、オーレリアを誘ってみようか迷ってるんだ」
レックスはまた機嫌が悪くなる。
「なぜ俺にそれを言う?」
思わず素が出てしまう。
昨夜の事を思い出すレックス。泣かせてしまった事を後悔して、また自分にイライラする。
「レックスがはっきりさせないと、僕が彼女を国へ帰さないようにどうにかするからね?」
ノエルの目が光る。
「どういうことだ?」
「妖精の国へは帰さない。この国にいてもらうように、僕のものにするよ」
レックスは血の気が引く。
「リリア様はどうするんだ?」
「彼女はわかってくれるさ。レックスが心配することじゃない。じゃあ、せいぜい誰かに盗られないようにね」
レックスは立ち尽くしたまま、兄を見送った。
ーーーー
放課後、席で荷物をまとめていると、声をかけられた。
「あの! オーレリア様」
座ったまま、声の方を振り向くと、同じクラスの男子生徒が二人、隣に立っていた。
一人が前に出る。
「私はリム・ライアンと申します。婚約パーティーに招待されているのですが、よかったらご一緒に……行っていただけませんでしょうか?」
彼はオーレリアに礼をして、答えを待っている。
「えっと……」
突然の誘いである。オーレリアは戸惑った。
そもそも誰かと行くという選択肢が無かった。ペアで行った方が失礼にならないのだろうか? でも、この方はあまり知らない方だし……
オーレリアとリムの間に入り込む人影。
「失礼、彼女は僕と一緒に行く事になっていてね。ごめんよ」
「そっそうだったんですか! それは失礼致しました。知らずに申し訳ありません」
恐縮して彼は友人と去って行った。
「……レックス?」
オーレリアが名前を呼ぶ。振り向いた顔は微笑んでいる。
「なんだい? オーレリア姫?」
机に寄りかかってオーレリアを見つめている。
「いやいや、なんだいってなんだい?」
「ふふ。なんだその質問!」
いつもの顔で笑うレックス。
「オーレリアは、俺と婚約パーティー行くんだよ。いい?」
優しい笑顔で微笑む。さながら、物語に出てくる王子様である。
「え、あ、本当にそうなの?」
「そっ!」
何だか最近、レックスに振り回されている気がする……
よく分からないうちに、ペアで行く事が決まったのであった。
ーーーー
エイラ、サン王子の婚約パーティー当日。
学園の外には馬車が待機している。生徒達が馬車に乗り込む。
オーレリアは緊張していた。お城でのパーティーなんて、物心ついてから初めての経験である。
妖精の国の姫として出席するオーレリアは、バスに一人である。今までずっと一人だった彼女、でも今日は少し心細い。
お城へ到着する。お城の従者がドアを開けてくれる。
門をくぐる。降り立ったそこは、キラキラした空間であった。
夜の庭は、魔法で光が空中で点滅している。まるで星が落ちてきたかのように、頭上で瞬く光の中、お城の中へと進む。
ロビーにはドレス姿と、タキシード姿の人々が集まっていた。
皆、とても華やかである。
オーレリアがロビーへ足を踏み入れる。一瞬周りがざわつき、息を呑むのが分かった。
彼女は薄い紫のドレスに身を包み、髪の毛は結い上げられ、その頭上には王族しか被れない王冠が乗っている。妖精の国から持参したそれは、王女の証として国の刻印と宝石が付いている。
この王冠を被ったのは、戴冠式をしたであろう三歳の時だけだ。
「あれが妖精の国の姫」「美しい、まるで妖精のようだな」「彼女をエスコートするのは誰だ?」「でも第六王女よ!」
色々な声が聞こえてくるが、オーレリアは萎縮しない。
自国ではパーティーに出席することさえ叶わなかったのだ。まあ、そこまで興味もなかったが。友人の婚約パーティーにくる日が来ようとは、夢にも思わなかった。
「オーレリア」
自分を呼ぶ声に振り返ると、そこには王冠を被っているレックスが立っていた。
「いつものオーレリアと違って、一瞬分からなかったよ」
銀の衣装で正装したレックスを見て、周りの女達がため息をこぼしている。
「レックスはそんなに変わらないね?」
オーレリアの手を取るレックス。
「そう? じゃあ、いつもカッコイイって事だね?」
「ふふふ、何言ってるの?」
「行こうか」
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